203.兄が見ている世界 —ペアリング購入③—
まり姉は目を大きく見開き、目をキラキラと輝かせながら兄を見つめている。
店員さんがお金を数え終え、
『確かに承りました。早ければ一週間、遅くとも二週間ほどで商品が到着いたします。到着次第ご連絡いたしますので、こちらの引き換え券をお持ちください。』
と言って、引き換え券を渡してくれた。
まり姉と兄は店員さんに見送られ、お店を後にする。
商業施設の中を歩いていると、まり姉が
『お腹空いたから何か食べて帰ろうよ!』
と兄へ言う。
兄は、
『いいよ。何が食べたい?』
と尋ね、店内マップで飲食店を確認し始めた。
すると、まり姉が
『今日はお肉の気分! ステーキとかハンバーグが食べられるお店に行こ!』
と言いながら、兄の腕を掴んでグイグイ引っ張っていく。
おー。
今日もアホ姉が見られるのか?
そう思いながら、わたしはワクワクしていた。
目的のお店へ入り席に案内されると、まり姉はステーキとハンバーグのセットに、ご飯とスープを注文した。
ステーキとハンバーグを合わせて総重量七百五十グラム。
……よし。
アホ姉確定。
兄はステーキと、ご飯・スープのセットを注文した。
その時のお前、ご飯ほとんど食べられないだろ!
と、わたしは心の中で突っ込んだ。
まり姉は紙エプロンを付け、
『早く来ないかな〜。』
とルンルン気分だ。
そして、
『何年か前に有名になったお店なんだけど、結局私たちの地元まで進出する前に失速しちゃって、一度も食べたことなかったんだよね。だから楽しみー。』
と、ニコニコしながら兄へ話す。
兄はそんなまり姉の笑顔を見て、幸せそうに微笑んでいた。
しばらくすると、料理が運ばれてくるようだ。
兄はスマホを取り出し、まり姉へ向けて動画を撮り始める。
まり姉は料理しか見えていないようで、撮影されていることにも気付いていない。
二人の前へ、それぞれ注文した料理が運ばれてきた。
兄はステーキの中心がまだ赤い部分を見ると少し顔をしかめ、そのまま鉄板で焼き始めた。
まり姉も、
『お肉の中、真っ赤じゃん!』
と言って、兄と同じように焼き始める。
しばらく焼いたものの、鉄板の温度が下がり、それ以上火が通らなくなってしまった。
まり姉は、
「まあ、いいか。」
という表情で食べようとしたが、兄は手で制して店員さんを呼ぶ。
『すみません。鉄板を温め直していただけますか? 二人分お願いします。』
とお願いした。
まり姉は、
『あっくん! 他のお客さん見てよ! 結構赤いままでも食べてる人いるから、大丈夫なんじゃない?』
と言う。
すると兄は、
『ごめんね。少しでも不安があるなら、不安は取り除いて安心して食べたいんだよね。』
と穏やかに答えた。
まり姉は、
『私は、どっちでも大丈夫だけどねー。』
と言いながら、スープやハンバーグ、ご飯を食べ始める。
しばらくして温め直されたステーキが戻ってくると、まり姉は再び目をキラキラさせながらステーキを頬張った。
兄はスープは飲み干したものの、ご飯は半分ほど残し、ステーキも一口食べたところで満腹になったようだ。
まり姉は、
『あっくん、もう食べないなら残りもらうねー。』
と言って、兄の残したご飯とステーキをモリモリ食べ始めた。
まり姉……
ほぼ一キロ近く食べてるよね?
なのに、どうしてその体型を維持できるの?
わたしは本気で不思議だった。
あっという間に食事は終わる。
するとアホ姉が、
『あっくん! ほら触って! お腹カッチカチ!』
と言って兄の手を取り、自分のお腹へ当てた。
兄は笑顔で、
『まりちゃん、お腹いっぱいになった?』
と尋ねる。
いやいや。
さっき自分で「お腹カッチカチ!」って言ってたじゃん!
と、わたしは再び突っ込む。
まり姉は満面の笑みで、
『イートインスペースに行ってシェイク飲みたい!』
と兄へ伝える。
兄は、
『じゃあ、お会計したら行こうか。』
と言って、まり姉の手を握り、支払いを済ませると二人でシェイクを買いに向かった。
まり姉は兄の腕に嬉しそうに抱きつき、
『あっくん、今日指輪買ってくれてありがとねー。
完成するの楽しみーー!
わたし、あっくんと出会えて、お互い好きになれて、本当に幸せなんだからね!』
と、人目も気にせず笑顔で伝えた。
兄は優しく微笑み、
『こちらこそ、ありがとう。』
と言って、まり姉の頭を優しく撫でた。
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