201.兄が見ている世界 —ペアリング購入①—
わたしは兄の中へ入り、
『ねー、あっくん。まり姉とペアリングを買いに行った時の記憶、見せてよ。』
とお願いした。
兄は、
『はいはい。』
と苦笑しながら答え、その時の記憶を見せてくれた。
時期は恐らく、まり姉とのデート旅行を終えて間もない頃だろう。
兄は朝からじいちゃんの車を走らせ、まり姉を迎えに行く。
まり姉の家へ到着すると、まり姉が助手席へ乗り込み、
『あっくん、おはよー!今日はペアリングを買いに行くんだよね。私、このお店へ行ってみたいんだ。』
そう言ってスマホの画面を見せた。
兄は画面を確認すると、
『まりちゃんが、このお店の指輪が欲しいなら行こうか。告白の時に渡した指輪は俺が選んだから、今日買うペアリングは、まりちゃんに選んでほしいな。』
と言う。
まり姉は嬉しそうに笑い、
『うん!』
と頷くと、兄の頬へ軽くキスをした。
兄も笑顔になり、
『じゃあ、まりちゃん。早速行こうか。』
と言ってエンジンをかける。
まり姉は、
『おー!』
と元気よく返事をした。
しばらく走ると、
兄が
『ここで少し休憩しようか。』
と言って車を停めた。
まり姉は、
『ちょうど寒かったから良かったー。』
と言って車を降りる。
昼食には少し早い時間だったが、途中休憩として兄が選んだ店は……
雑煮屋さん。
……え?
わたしは思わず固まった。
最近は、
「○○にスープ専門店オープン!」
なんてニュースを見ることも多い。
近くにそういうお店が無いからって……
雑煮屋さんかよ!!
と、一人で盛大にツッコんでしまう。
二人が注文したのは、もちろん雑煮。
都市部の若者たちがおしゃれなスープを楽しんでいる中、
このカップルは雑煮。
まり姉は、
『里芋ホクホクで美味しー。』
なんて嬉しそうに食べているけど……
いやいや!
まり姉みたいな綺麗で可愛い女の子には、
雑煮じゃなくて、おしゃれなスープを飲ませてあげなよ!
と、わたしは本気で思った。
さらに兄が人参をすくって、
『はい、あーん。』
まり姉も照れながら、
『あーん。』
と食べている。
えっ……
カップルで「あーん」って、
パフェとかクレープとかじゃないの?
雑煮の人参でも成立するの!?
わたしの中では、
雑煮で、「あーん」って育児か介護のイメージだったんだけど!?
わたしの恋愛観がガラガラと音を立てて崩れていく。
そんな衝撃を受けている間に二人は食事を終え、再び車へ乗り込み、ペアリングを買いに出発した。
しばらく車を走らせると、
まり姉が窓の外を見ながら、
『ここが四月から私が通う大学だよ!この道を使うと、思ったより早く着くね。』
と嬉しそうに話している。
大学を通り過ぎ、さらに十分ほど走ると、大型商業施設へ到着した。
兄は駐車場に車を停め、
『まりちゃん、お店は何階なの?』
と尋ねる。
まり姉は、
『三階だよ。エスカレーターで行こう!』
と笑顔で答えた。
二人は並んで歩き、エスカレーターへ向かう。
そして、目的の宝飾店へ到着した。
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