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200.わたしの新生活⑨

わたしが兄を見ると、兄は笑顔で

『戻ろうか。』と言い、

わたしは『うん!』と頷く。


わたしと兄は、分家の人たちの方へ向き直る。


兄が一歩前に出て、よく通る声で言った。

『無事、亜衣様と私との血の契は成立した。皆、立ち会いご苦労であった。これにて、この場はお開きとする。夜も遅い時間だ。しっかり休み、これからもこの家に仕えていただけたら嬉しく思う。』


そう言って兄は深く頭を下げた。

わたしも慌てて頭を下げる。


しばらくすると、分家の人たちが次々と母屋を出ていく足音や話し声が聞こえてきた。


わたしが顔を上げる頃には、ほとんどの分家の人たちは母屋を後にしていた。


兄はわたしへ手を差し伸べ、

『離れに戻ろうか。』

と言う。


わたしはその手を握り、

『うん!』

と笑顔で頷いた。


じいちゃんと玻璃さんへ軽く会釈をし、兄と一緒に離れへ向かう。


兄と共に部屋へ戻ると、兄は穏やかな笑顔で、

『俺は約束を果たしたよ。後は亜衣ちゃんが約束を果たしてね。』

と言った。


わたしは頬を膨らませ、

『なんか設定まで盛られてたし、全部わたしが悪いみたいな言い方だったんだけど。』

と兄を睨む。


兄はため息をつき、

『そんな言い方をしていたら、本当は反省してないの?って思われても知らないよ。』

と言った後、少し笑って続けた。


『誰もあの場で異論を唱えなかった時点で、皆は”亜衣ちゃんは自分の非を認め、反省した”と思ってるはずだから。その認識を後から覆した時、皆がどんな反応をするのか、俺は興味があるよ。』

その言葉に、わたしは思わず背筋がゾクッとした。


『わたしはちゃんとお務めをして、信頼を勝ち取るから大丈夫!』


そう言い切ったものの、心の中では、

(また振り出しに戻ったとしても、もう次の交渉に使えるカードなんて無いんだよな……。)

と思い、大きくため息をついた。


わたしは、ふと思い出したように兄へ尋ねる。

『ところで最近、何かあったりした? まり姉との間に進展はなかったの?』


そう言いながら、じいちゃんに見せた時と同じように目をぱっちりと見開いて兄を見つめる。

(じいちゃんには不評だったけど、可愛くて保護欲をくすぐる顔のはずなんだけどな……。)


そう思っていたのに、兄も一言。

『目を見開いてるだけで怖いんだけど。』


……嘘でしょ!?

可愛いおねだり顔になってないの!?

ショックを受けたわたしは、兄を放置して鏡の前へ向かい、自分の顔を確認する。

(可愛いけどな〜。)

首を傾げながら鏡を見ていると、


兄は軽くため息をつき、

『まりちゃんが同じ顔をしてくれたら、何でも買ってあげそうだけど、亜衣ちゃんじゃ何の感情も揺さぶられないんだよな〜。』

と言った。


わたしは涙目になり、

『そんなこと言わないでよ〜。』

と抗議する。


すると兄は困ったように笑い、

『だから、その顔はやめて。嫌がらせしたくなるから。』

と言った。


その一言で涙は一気に引っ込み、わたしはジト目になって兄を見る。

『ここ数日で、わたし心も体もズタボロなんだから。あっくんの記憶、見せてよ!』

とお願いすると、


兄は小さくため息をつき、

『わかったから、布団に入って横になって。座ったままだと体勢崩して頭でも打ちそうだから。』

と言う。


わたしは元気よく、

『はーい!』

と返事をし、布団へ潜り込んで目を閉じた。

そして、ゆっくりと意識は兄の中へと入っていった。

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