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18.兄が見ている世界 —反省会—

ありさが保健室を出て行った後、まり姉は再び上機嫌になり、

『わたしの進路、どう決まったでしょーか♪』

と、楽しそうに言った。


兄は少し悲しそうな顔をしていたが、まり姉の明るい雰囲気につられるように笑顔になり、

『うーん……。

まりちゃんは、昔からちゃんと勉強してたし、これからも努力を続けられる人だって知ってるから……国立大学の学校推薦型選抜かな?』

と答えた。


まり姉は、一瞬ぽっと顔を赤くしたかと思うと、

『せーかい!

あーもう、つまんないなぁ〜』

と頬を膨らませた。


まり姉、わたしの前だとしっかり者のお姉さんなのに、あっくんの前だと少し雰囲気違うなぁ……と、わたしは思った。


すると、まり姉は負けじと続ける。

『じゃあ次!

どこの大学を受けるでしょうか?』


“今度こそ分からないでしょ?”と言いたげな顔だ。


兄は少し考えてから、

『うーん……難しいな。

まりちゃんって、俺と違ってちゃんとお姉ちゃんしてるし、なんやかんやで妹や家族のことをすごく大事にしてるから……』


そこで一度言葉を区切り、

『地元の国立大学。〇〇大学でしょ』

と答えた。


『まりちゃんって、本当にすごいよ。昔からずっと』

兄は静かな声で続ける。

『周りから気味悪がられてた俺の側にいてくれて、

今でもこうして隣にいてくれる』


そう言いながら、兄は自然な動作でまり姉の隣に座り、少しだけ頭を預けた。


『これからも、ずっと側にいてほしいな』

今日のあっくん、なんかいつもより素直だなぁ。


小学生の頃から一緒にいたの、結局まり姉くらいだったもんね。

まり姉の顔は、徐々に赤くなっていく。

『せ、正解!

べ、別にあっくんのこと放っとけなかっただけだから!

変な勘違いしないでね!』


『うん。分かってるよ。ほんと、いつもありがとう』

兄は姿勢を正し、まり姉の顔をしっかり見ながら、満面の笑みで感謝を伝えた。


まり姉は、一瞬ぽーっとした顔になったあと、慌てたように咳払いをした。

『で!何かあったの?』


『何って?』

兄が聞き返すと、まり姉は呆れたように言う。


『ありちゃんと、何があったの?』


『あー……』


兄は気まずそうに目を逸らし、そのまま少し落ち込んだ表情になった。

『ありちゃんに避けられてるの、気づかなくて。

嫌な思いさせた』


まり姉は「やれやれ」と言いたげな顔をすると、

『もう少し詳しく説明してみ?』

と促した。


兄は少し考えてから、

『三者面談の後、ありちゃんの体調が良くなったように見えたから近づいて話しかけたんだけど……また具合悪そうになって。

それで保健室の先生に、“原因は俺だ”って言われた』

と答えた。


まり姉は眉をひそめる。

『本当にそれだけ?

それでそんな言い方されたの?』


『うん』

兄が頷くと、まり姉は今度は保健室の先生の方を見た。

『本当にそれだけですか?

それで、あっくんが悪いみたいな言い方したんですか?』


まり姉は、兄の言葉をそのまま鵜呑みにせず、ちゃんと確認を取った。


保健室の先生は深くため息をつき、

『違うわよ。

大坂君が、ありささんの手を握ったり、頬や首筋を触ったり、熱を確認する為に おでこ同士くっつけたりしてたから……緊張したんじゃないか、って意味で言ったの』

と説明した。

『他にも色々言ってたしね……』


まり姉は、驚いた顔で兄を見る。

『やったの?』


『うん』

兄はあっさり頷いた。


『昔、まりちゃんが俺にしてくれたこと覚えてる?

あの時、嬉しくて元気出たから』

そう言った後、兄は少し寂しそうに笑った。


『でも、あれって。

俺がまりちゃんのこと好きだったから、嬉しかったってことなんだよね』

『嫌いな相手にされたら、そりゃ警戒するし緊張するよね』

そう言って兄は、小さく息を吐いた。

『ちゃんと反省して謝ったから安心して。

もうしないよ』


まり姉は、反応に困ったように口を開く。

『お、おう……』

おいおい、まり姉困ってるじゃねーか。


でもなんか……

まり姉って、あっくんのお母さんみたいだな。


しばらくして、まり姉は面倒事を片付けるような口調で、

『まあ、ちゃんと謝って、ありちゃんも受け入れてくれたなら……とりあえずいいんじゃない?』

と言った。

あー。

“もう解決してるなら深く考えるの面倒だし、この話終わり!”

って顔してる。


すると、まり姉は立ち上がり、

『それじゃ、今から私と部活行こうか』

と兄の手を取った。


兄も素直に立ち上がり、そのまま二人で部室へ向かっていった。

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