195.わたしの新生活④
わたしは兄と二人で、自分の部屋へ入った。
部屋へ入るなり兄は周囲を見回し、
『どうして、たった二日もしないうちに、こんなに散らかるの?』
と呆れたように言った。
確かに、勉強机の周りには教科書や参考書、問題集が積み重なり、手の届く範囲に散乱している。
朝は慌てて着替えたから、脱いだパジャマは床に置きっぱなし。
急いで服を探したせいで、タンスの前まで散らかっていた。
わたしは顔を赤くしながら、
『女の子の部屋なんて、こんなものだよ! 変な幻想を持たないでよね!』
と胸を張る。
兄はため息をつき、
『そんなに自信満々に言われても困るし、みんながみんなそうとは思わないけど。』
と言ったあと、部屋を見渡す。
『それより、この家で一番広い部屋が一番ひどい部屋になったせいで、座る場所すらないんだけど、どこで話すの?』
そう言われ、
『あーもう! うるさいなー!』
と叫びながら、床に散らばっていた服を適当に押し入れへ押し込む。
『はい! これで座れるでしょ!』
兄は苦笑しながら腰を下ろした。
『この部屋は分家の人たちは入ってこないから、自分で掃除しないと駄目だよ。』
『えっ!?』
わたしは目を丸くする。
『今まで散らかしてても片付いてたのって……分家の人たちが掃除してくれてたの?』
兄は当然のように頷く。
『そういうこと。』
そして話題を戻すように続けた。
『黒い服の長い髪の女性だけど、分家の人たちを連れていれば問題ない。ちなみに、この家の中には入って来られないから、家にいる間は安心していい。』
少し間を置いて、
『でも亜衣ちゃんは、お付きの人がいないから、外へ出る時は十分気を付けた方がいい。かなり気に入られてるみたいだし。』
そう言われ、わたしは不安になる。
『つまり今のわたしって、お付きの人がいない限り、一人では外にも出られないってこと?』
兄は肩をすくめる。
『出てもいいんじゃない?』
『俺は「気を付けた方がいい」ってアドバイスしてるだけだから。』
(やっぱり、この人は……。)
そう思いながらも、今はそれより気になることがある。
『じゃあ、どうしたらお付きの人を持てるの?』
兄は小さくため息をついた。
『じいちゃんが言ってた通りでしょ。』
『まずは、お互いを知って、信頼関係を築くこと。』
『この部屋に引きこもってるだけじゃ、何も始まらないと思うよ。』
そう言って立ち上がる。
慌ててわたしは呼び止めた。
『待って! 分家の人たちと話したいから紹介してよ!』
兄はこちらを振り返る。
『俺に何のメリットがあるの?』
その一言に、わたしは何も言い返せなかった。
兄は満足そうに頷く。
『じゃあ、眠いから寝るね。』
そう言って、自分の部屋へ戻っていった。
わたしはため息をつく。
その瞬間、お腹が
『ぐぅ〜』
と盛大に鳴った。
『……まずは、ご飯か。』
わたしは居間へ向かい、朝ご飯を食べ始めた。
食べながら考える。
(よし。食べ終わったら、分家の人たち一人ひとりに挨拶へ行こう。)
そう決意した。
食後、歯を磨いていると、急激な眠気に襲われる。
(そういえば昨日、一時間しか寝てなかった……。)
『少しだけ……。』
そう思って布団へ潜り込んだ。
……そして。
『亜衣ちゃん! 夕方のお務めの時間よ!』
お母さんの声で飛び起きる。
『えっ!?』
時計を見る。
『もう十六時! 一日寝てた!?』
わたしは慌てて着替え、じいちゃんのもとへ急いだ。
(また寝ちゃった……。分家の人たちへの挨拶は明日、絶対に行こう。)
そう、わたしは決心した。
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