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178.兄が見ている世界 —デート⑪—

まり姉とお土産を探していると、


まり姉が、

『あっくん、見て見て! このお菓子初めて見たよ。地元のお菓子でテレビのCMでは何度も見たことあるけど、実在したんだねー。』

と目を輝かせた。


兄は苦笑しながら、

『俺も初めて見たけど、実在しないお菓子を宣伝しないと思うよ。』

と返す。


『これなら、ゆりもお母さんも喜ぶだろうから、これに決めた!』


まり姉は、本当にゆりのことが大好きなんだな。


……ゆりの本性を知ったらどうなるんだろう。

そんな想像をしてしまい、わたしは思わず身震いした。


兄がありさへのお土産を選んでいると、

『ありちゃんへのお土産? キーホルダーにする?』

とまり姉が尋ねる。


『そのつもりだよ。

これからアパートの鍵や車の鍵とか持つだろうから、一つくらいいいかなって思って。』


すると、まり姉は笑顔になり、

『じゃあ、三人お揃いにしようか。』

そう言って、同じデザインの色違いのキーホルダーを選んだ。


会計を済ませ、車へ戻る途中。


兄が思い出したように口を開く。

『そうだ。まりちゃんがトイレに行ってた時、ゆりちゃんから何回も電話が来てたよ。

体調が悪くなってトイレに行ってるって伝えてある。』


まり姉は小さく頷き、

『わかった。車に戻ったらかけ直すね。』

と言った。


二人は車へ乗り込み、自宅へ向けて走り出す。


しばらくすると、まり姉がゆりへ電話を掛けた。


『ゆり、たくさん電話してたけど何かあったの?』


するとゆりは、

『おねーちゃんが食べ過ぎて変なことしてないか心配になって電話しちゃった。』

と答える。


まり姉は少しだけ視線を泳がせながら、

『あはは……気を付けるようにはしてるよー。』

と、どこか平坦な声で返した。


『なら安心したー。

私、おねーちゃんのこと信じてるからね。

もし約束破ってたら何するかわかんないからねー。』


『あ……うん。』

まり姉の返事は少しぎこちない。


『夕方くらいには帰ってくるのかな?

土産話、楽しみに待ってるねー。』


『うん。また後でねー。』

電話を切ると、まり姉は兄へ向き直った。


『ねぇ、あっくん。

今日のこと誰にも言わないで。

特に、ゆりとお母さんには!』


本気でお願いしているのが伝わってくる。


兄は運転中だったため前を向いたまま、

『絶対に誰にも言わない。約束する。』

と静かに答えた。


その返事に、まり姉は少し違和感を覚えたようだった。

『あっくん?

本当に誰にも言わないんだよね?』


信号待ちになり、兄はようやく一度だけまり姉へ目を向ける。

『うん。

絶対に誰にも言わない。

約束する。』


まり姉は少し考えたあと、

『うーん……わかった。

お願いね。』

と可愛くウインクした。


まり姉!

コイツ、誰にも言ってないけど、動画はもうゆりに送ってるからな!

しかも、ゆりから大量の写真や動画まで受け取ってるし!


問い詰め方が甘いぞ!!


わたしは心の中で全力でツッコんだ。


しばらく車で走っていると、

『あのコンビニ寄って、少し休憩しよ!』

とまり姉が提案する。


二人はコンビニへ立ち寄り、トイレを済ませ、飲み物を買い、再び自宅へ向かった。


やがて見慣れた景色が広がる。


まり姉は窓の外を眺めながら、

『やっと見覚えのある場所に帰ってきたーって感じだね。

楽しいお出かけが終わって、日常が戻ってきたって感じ。』

と少し寂しそうに笑った。


そして、まり姉の家へ到着する。


車を降りると、

まり姉のお父さん、お母さん、ゆりが出迎えてくれた。


兄は姿勢を正し、

『この度は、まりさんとの外泊を許可していただき、ありがとうございました。

こちら、お土産です。

よろしければ皆さんで召し上がってください。』

と、お土産を手渡した。


まり姉のお父さんは頷き、

『以前約束したと思うが、高校卒業と大学入学前に問題になるようなことはしてないか?』

と確認する。


兄は迷うことなく、

『はい。

結婚を前提にお付き合いさせていただいていますが、高校を卒業するまでは、そのようなことはしないと約束していますので。』

とはっきり答えた。


『約束を守ってくれているようで安心した。』

そう言ったあと、お父さんは兄にだけ聞こえる声で、

『……まりに魅力がなくて手を出さなかった、とかじゃないよな?』

と冗談交じりに尋ねた。


兄は首を傾げながら、

『まりさんは、幼い頃からずっと魅力的です。

尊敬できて、優しくて、かわいい人だとずっと思っています。』

と真顔で答える。


『あっくん、何を聞かれて何を答えてるの?』

まり姉が不思議そうに尋ねる。


兄はいつもの調子で、

『まりちゃんについて思ってること。』

と答えた。


その様子を少し離れた場所から見ていたゆりは、

ニィッと意味深に笑い、

まり姉のお母さんへスマホの画面を見せている。

……何を見せているのかは、ここからでは分からない。


でも、わたしには何となく想像がついた。


挨拶を終えた兄は、そのまま自宅へ戻り、ゆっくり体を休めた。

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