175.兄が見ている世界 —デート⑧—
まり姉と兄は、ハンバーガー屋さんへ到着した。
駐車場を見渡したまり姉が、少し感心したように笑う。
『ここ、一度来てみたかったんだよねー。
この前注文した車だと、駐車するの結構大変そう。』
兄も周囲を見回しながら頷いた。
『軽自動車だから余裕で停められた感じだね。』
『お店入ろうか!』
そう言って、まり姉は兄の手を握る。
店内へ入ると、カウンター席と二人掛けのテーブル、四人掛けのテーブルがそれぞれ二つずつ並んでいた。
カウンター席では、体格のいい外国人四人組が楽しそうに談笑している。
優しそうな女性店員が笑顔で迎えてくれた。
『いらっしゃいませ。空いている席へどうぞ。』
二人は二人掛けのテーブルへ座る。
しばらくして店員が注文を取りに来た。
まり姉はメニューを指差す。
『一番ボリュームがあるハンバーガーセットください。
飲み物はコーラでお願いします。』
兄も続ける。
『ホットドッグとウーロン茶でお願いします。』
わたしは、
このお店、雰囲気いいなー。
一回来てみたい。
と思った。
まり姉は注文を終えた途端、そわそわし始める。
兄が笑う。
『挑戦料払って早食いチャレンジしなくて良かったの?』
まり姉は胸を張った。
『今の私は、そんな無謀なチャレンジしません!』
兄はクスッと笑う。
『口の周りにソース付けながら、美味しそうに食べるまりちゃんも可愛いと思うんだけどなー。』
まり姉は少し照れたように目を逸らした。
『帰りに一つ買って、車の中でひっそりチャレンジするくらいなら……。』
わたしは衝撃を受ける。
いやいや!
1つ800gくらいって言ってたよね?
2つ食べたら1.6kgだから!
朝ご飯食べて、まだ3時間も経ってないよね?
兄はそんなことなど気にせず、
『帰りに買って帰ろうね。』
と優しく笑った。
しばらくして、料理が運ばれてくる。
まり姉は思わず声を上げた。
『おーっ!』
皿の上には大きなハンバーガーと山盛りのポテト。
ナイフとフォークも添えられている。
まり姉は丁寧に切り分けながら食べ始めた。
兄はホットドッグを少しずつ味わっている。
『このハンバーガー、めっちゃ美味しい!
バンズもパティもすごく美味しいね!
口コミではソースが特に美味しいって書いてあったけど、このハンバーガーには使われてないみたい。
ちょっと残念。』
そう話しながらも食べ進めるうちに、まり姉は少しずつレアまり姉へ変化していく。
『このハンバーガー、おいしー。
どれだけでも食べられるよー。
この太めのポテトもホクホクでおいしー。』
兄のホットドッグへ視線が向く。
『あっくん、そのホットドッグ残すなら私が食べるねー。』
そう言って美味しそうに平らげてしまった。
『もう無くなっちゃった……。』
まり姉は寂しそうな顔で兄を見つめる。
兄は苦笑しながら答えた。
『帰りにもう一つ買って、車で食べようか?』
『うん! やったー! 楽しみ!』
その時、カウンターでは店員さんが外国人のお客さんと英語で話していた。
まり姉は目を丸くする。
『あのおばちゃんスゲー!
私、何言ってるのか全然わかんなーい。』
そう言って兄の腕へしがみ付く。
兄は笑いながら頭を優しく撫でた。
まり姉は嬉しそうに目を細める。
『あっくん、私のこと好きでしょー!』
勢い余って爆弾発言まで飛び出す。
『おっぱい触ってみる?』
兄は軽くため息をつき、まり姉のほっぺを優しく引っ張った。
『ごべんなざい。』
頬を引っ張られたまま謝るまり姉。
わたしは思った。
もう、このまり姉やだー!
会計を済ませると、テイクアウトの大きなハンバーガーを受け取り、二人は車へ戻った。
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