163.兄が見ている世界 —引越し準備14—
3人は会計の際、この商品も家電や家具と同様に配送してほしいと依頼し、会計を済ませた。
兄は、
『ありちゃんが気にしていたより、お金を使わずに済んで良かったね。』
と言いながら頭を撫でた。
ありさは、
『あっくんのお陰だよー。モンローちゃんが独りぼっちにならなくて済んだし。』
と満足そうに言った。
篤志は、
『後は車の購入をしておきたいね。』
と言う。
すると、ありさは肩を落としながら、
『元々そんな余力ありませーん。
親と新古車か中古車を見に行くつもりー。
それでもローン必須だろうなー。』
と答えた。
兄は、
『俺は明日見に行くつもりだけど、まりちゃんとありちゃんはどうかな?』
と尋ねる。
まり姉は、
『今日みたいに自動車学校の後なら問題ないよ。』
と答え、
ありさも、
『問題ないよー。』
と頷いた。
『じゃあ、また今日と同じ時間に迎えに行くね。』
そう言いながら兄は車へ乗り込んだ。
車に積んである掃除機を見たまり姉が、
『あっくんが色々買い揃えてくれたから、掃除道具やシャンプー、リンス、ボディソープ、洗剤関係は私が揃えておくね。』
と言った。
わたしは、まり姉の使いやすい物や好きな香りの物を選びたいんだろうなぁと思った。
絶対に素直に好意を受け取れなくなったのは、この兄のせいだからな!
とも思う。
車内での話題は、ありさの部屋のカーテンやラグ、小物についてだった。
兄がありさへ、
『ほんと、ありちゃんらしい部屋になったね!』
と声を掛ける。
ありさは胸を張り、
『かわいいでしょー。』
と自慢げに答えた。
まり姉は、
『あの色で落ち着くのかなー。』
と少し心配そうだ。
兄は笑いながら、
『でも、それがありちゃんの安心できる色なんだろうからねー。』
と言う。
ありさは嬉しそうに、
『うん!』
と頷いた。
兄は少し考え込みながら、
『車なんだけど、結局どうしようかなー。
ラ〇〇ル一択だったのになぁ……。』
と呟く。
かなり悩んでいるようだ。
ありさが、
『あっくんの手元と普通預金に残ってるお金って、あと400万円くらいだよねー。』
と言う。
まり姉は、
『SUVが好きなら、ヤ〇〇クロスとかカロ〇〇クロスとか良いと思うけど?』
と提案した。
ありさも、
『カロ〇〇クロスだと予算ギリギリオーバーしない?
私と同じで中古車狙う?
免許取って初めての車なんだし、ぶつけた時の精神的ダメージは少し軽くなるかもだよー。』
と続ける。
兄は首を横に振った。
『SUVだから良かったって訳じゃないんだよね。
ラ〇〇ルだから良かったと言うべきかな。』
『それ以外は、特にこだわりが無いというか……。』
まり姉は、
『あー、あれかー。
子どもの頃から憧れてたラ〇〇ルだからってことかー。』
と納得した顔になる。
ありさも苦笑した。
『あっくん、今年のパリダカの時もかなり荒れてたもんねー。』
まり姉が笑う。
『ラ〇〇ルが負けたーって騒いでたね。』
兄は首を横に振った。
『いや、負けたこと自体は別にいいんだよ。』
『十年以上勝ち続けてたんだから、いつかは負ける。』
『でも、今回気になったのはそこじゃない。』
兄の表情が少し真面目になる。
『昔はモデルチェンジした直後でも勝ってたんだよね。』
『多少トラブルが起きても、それを想定した余力があった。』
『でも今回は不具合が目立った。』
『もちろん300系になったばかりだから経験不足ってのもあると思う。』
『だけど、それ以上に他メーカーの技術力向上が凄いんじゃないかって思ったんだよね。』
車内が少し静かになる。
兄は続けた。
『今までは多少ミスしても追いつけるだけの差があった。』
『でも今は、その差が小さくなってきてるのかもしれない。』
『不具合を予想してリカバリーできるだけの余力が昔ほど無いなら、それは結構怖いことだと思う。』
ありさは苦笑する。
『普通そこまで考える?』
兄は即答した。
『気になるでしょ。』
『勝った負けたより、何でそうなったのかの方が。』
まり姉とありさは顔を見合わせた。
『あっくんらしいね。』
『あっくんらしいねー。』
わたしは何のことか分からない。
兄が子どもの頃からラ〇〇ル好きだったことも知らないし、今年の初めに何があったのかも知らない。
ラ〇〇ルって何なんだ?
そんなことを思ったが、よく分からないけど兄が子どもの頃から好きだった車らしい。
この3人の中で話が完結しているなら、それでいいか。
わたしはそう思うことにした。
ご意見 ご感想 よろしくお願いします。




