154.兄が見ている世界 —引越し準備⑤—
家具売り場に到着し、まり姉が周囲を見渡す。
『デザイン的にシンプルだし、ここの商品で揃えればかなり統一感があって良さそうだね!』
と感心したように呟いた。
ありさも頷きながら、
『そうなの! 私もここで揃えようかなって思ってる。』
と笑顔を見せる。
兄は、
『まず、どこにどんな家具を置くか決めようか。』
と切り出した。
すると、ありさがニィッと笑い、
『まりちゃんとあっくんは、ダブルベッドを買うの?』
とからかう。
まり姉は顔を真っ赤にし、
『ありちゃん! 何言ってるの!?』
と慌てた。
その後、兄をチラチラ見ながら、
『お互い学校や仕事もあるから、睡眠のタイミングがずれることもあるし……』
と小さな声で続ける。
兄は納得したように頷き、
『まりちゃんが次の日朝早いのに、俺が遅く帰ってきて起こしたら、睡眠取れなくて困るもんね。』
と答えた。
そして、ありさを見ながら笑う。
『無理に起こして、威嚇されたら大変だし。』
ありさは顔を真っ赤にして、
『あっくん! もうその話はしちゃダメ!!』
と抗議した。
まり姉は、
『威嚇?』
と首を傾げる。
兄はさらっと、
『ありちゃんの寝顔がかわいいって話。』
と誤魔化した。
まり姉は、
『ありちゃんがかわいいのは知ってるけど、まあいいや。』
と深く追及するのをやめた。
その後、シングルベッド、マットレス、シーツなど寝具の値段をメモする。
さらに、テーブルや椅子、棚、服を入れるタンスなどの家具も確認していった。
兄が、
『ありちゃんが泊まりに来た時用に、ワンセット寝具を準備しておかない?』
と提案する。
ありさは嬉しそうな顔をした。
しかし、まり姉は、
『もうこれ以上、大きな家具を置ける場所無いよ。』
と現実的な意見を口にする。
兄は少し考え、
『まりちゃんの部屋に折り畳みベッドを置く?』
と提案した。
まり姉は即座に、
『あれって結局、折り畳むのが面倒になって、そのまま開きっぱなしで場所を取るオチでしょ!』
と却下する。
兄は、
『じゃあ、寝袋で!』
と方向転換した。
まり姉は納得したように頷く。
ありさはガックリと肩を落とした。
だが、それはそれで面白いかもと思ったのか、すぐに元気を取り戻した。
次はカーテン選びだ。
まり姉の部屋、兄の部屋、リビングのカーテンを確認していく。
兄が購入を検討していたのは、遮光性能が高いものだった。
ありさは兄が選んだカーテンを見て、
『あっくん、このカーテン可愛くないよ!』
と不満そうな声を上げる。
兄は、
『配属先次第では夜勤もあるからね。念の為。』
と軽く返した。
その後は調理器具、食器、カトラリー、バス用品、タオルなど、
何がいくつ必要なのかも含めて確認を進める。
まり姉が食器やカトラリーを見ながら、
『一旦、二セットずつでいいんじゃない?』
と提案した。
兄はありさを見て、
『まとめて洗ったりすることもあるだろうし、四セット……いや、五セット買っておこうか!』
と提案する。
まり姉は、
『多すぎるような気もするけど……』
と呟いた。
しかし、その後ありさを見て納得したように頷く。
一通り確認が終わり、
その日は、まり姉、ありさ、兄の三人が兄の部屋に集まった。
そして、アパートの敷金も含め、必要な費用の総額を確認する。
まり姉・兄ペア 約100万円
ありさ 約65万円
わたしは、少しは覚悟していたが、そんなにかかるとは思っておらず驚いた。
今のわたしでは一人暮らしは出来ない……。
てか、わたしの貯金じゃ、ありさの条件でも無理だ。
きっと、わたしが夢見ている都市部での生活ならもっとかかる……。
そう思い、現実に打ちのめされた。
そして、ありさの目も点になっている。
まり姉も心配になったのか、
『半分ずつ出すようにする?』
と兄へ尋ねた。
しかし兄は、
『大丈夫だよ!』
と平然としている。
わたしは兄を見ながら、
『こいつ、いくら蓄えてるんだ?』
と、兄の貯金事情に興味が湧いてきた。
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