153.兄が見ている世界 —引越し準備④—
兄はありさの頭を撫で、
『まりちゃんと洗濯機を見ておいで。』
と伝えた。
その後、兄は照明器具売り場を見て回り、まり姉とありさに合流する。
兄が、
『まりちゃんとありちゃん、決まったかな?』
と声を掛けると、
まり姉は、
『仕事や勉強のことを考えるとドラム式なんだよねー。
スペースを考えるとこれ一択だし、値段は圧倒的に縦型なんだけど……。』
と悩ましそうに答えた。
兄は、
『まりちゃん、確認ありがと。
そうであれば、ドラム式を買う前提でお金を引き出しておくねー。』
と返す。
まり姉は驚いたように、
『え? いいの?
下手すれば一番安いやつと倍近く違うよ。』
と聞き返した。
兄は、
『お金が当日買いに来て足りないより、少し多めに準備してた方がいいから。
最終的に買うのは明後日だし。』
と説明する。
そして、
『まりちゃん。
照明は特に種類が無かったから広さに応じたのを買うとして、電子レンジ、炊飯器、掃除機を見てきてよ。』
と頼んだ。
まり姉は頷き、その場を離れる。
兄はありさへ視線を向け、
『ありちゃんは決めたの?』
と尋ねた。
ありさは少し悩んだ後、
『私の場合、休みの日にまとめて洗って、まとめて乾かすことになると思うんだよね。
あの部屋なら部屋干しするスペースも確保出来そうだし。
だから……乾燥機能は省いて、縦型のこれか、これかなって思ってる。』
と答えた。
兄はまり姉とありさが選んだ洗濯機をメモし、ありさの頭を撫でる。
そして、
『やれば出来るじゃん。』
と褒めた。
ありさは頬を膨らませ、
『当たり前でしょ!』
と言い返した。
兄は軽く笑うと、両手で優しくありさの膨らんだ頬に触れ、プシュッと空気を抜く。
ありさは兄に触れられた瞬間、
『え?』
という顔をした。
しかし、
『ありちゃん、まりちゃんの所へ行くよ!』
と声を掛けられ、慌てて兄の後を追った。
まり姉が選んだ電子レンジは、オーブンとしても使える三万円くらいのもの。
炊飯器はスチームレスの二万五千円くらいのもので、他の商品と大きな差は無かった。
だが、掃除機だけはコンセント式の紙パックタイプという比較的安価な物を選んでいた。
ありさが、
『まりちゃん、コードレスとか、ゴミをまとめて捨てられるのがあるのに、何でこれがいいの?』
と尋ねる。
まり姉は少し苦笑いを浮かべ、
『個人的に苦手だから……。』
と答えた。
兄が、
『まりちゃん、何かあったの?』
と首を傾げる。
まり姉は遠い目をしながら、
『前にありちゃんや、あっくんが遊びに来るからって張り切って掃除しようとしたら、お母さんが使った後だったんだよ。
あっという間に充電が無くなった挙句、中のホコリが固まってて洗わされたりして散々だったの。
結果、このタイプが一番楽だっただけ。』
とこぼした。
ありさは自分に置き換えて想像したのか、明らかに嫌そうな顔をする。
兄は笑いながら、
『まりちゃんが、それでいいなら俺はいいよ。』
と頷いた。
家電を見終えた後、
まり姉とありさと兄の三人は、家具売り場へ向かった。
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