151.兄が見ている世界 —引越し準備②—
まり姉を自動車学校へ送って行く途中、
ありさが、
『こっちの道、近道だから通ってみない?』
と兄へ提案した。
兄は、
『ありちゃん、いいね!』
と笑顔になり、細くてガタガタした道へ入っていった。
まり姉は、
『ちょっと! あっくん! ありちゃん!』
と声を上げる。
ありさは兄の隣で『すごーい!』とはしゃいでいる。
速度は全然出していないが、まり姉のお尻は限界だった。
まり姉が、
『あっくん!!』
と大きな声を出す。
すると兄は、
『任せとけ、この車は四駆だぞ!』
と自信満々に返事をした。
まり姉は諦めたように、
『ばか!四駆だから何なの!?』
と呆れた。
自動車学校へ到着すると、ありさと兄は満足そうな顔をしていた。
まり姉は優しい声で、
『あっくん、ありちゃん。こっち向いて!』
と呼びかける。
ありさと兄が素直に振り向くと、
まり姉は二人の頬を同時に引っ張った。
わたしには、若干、兄に対しての方が力が入っているように見える。
右側に兄がいて、利き手だからというだけではない気がした。
まり姉は、
『もうしないように!』
と注意した。
ありさと兄は、
『ごめんなさい。』
と素直に謝る。
まり姉は、
『もう!』
とこぼした後、笑顔になった。
そして、
『明日のお昼、迎えに来てくれるの待ってるね!』
と笑顔を見せると、まり姉はお尻を押さえながら車を降りた。
兄は、
『明日はありちゃんが後部座席ね!』
と当然のように告げた。
ありさは、
『ええ!!……』
と不満そうな声を出したが、
『はい。』
と小声で返事をした。
家への帰り道。
兄がありさへ、
『明日は部屋の寸法が分かったから、それぞれの家電の総額を調べようか。
家具や食器も、どのくらい必要で、いくらになるのか計算してみよう。』
と切り出した。
ありさは、
『うん!』
と元気に返事をした。
兄は続けて、
『礼金は不要みたいだけど、敷金の振り込みもしなくちゃだから、そろそろお金の準備をしないとね。』
と説明する。
すると、ありさは悲しそうな声で、
『はーい。』
と返事をした。
その日は、ありさを自宅まで送り届け、兄も帰宅した。
次の日のお昼。
兄はありさを迎えに行った後、まり姉を迎えに行った。
ありさは何も言わず、助手席をまり姉へ譲る。
まり姉は、
『もう気にしてないから。』
と苦笑した。
しかし、ありさと兄は、
『ごめんなさい。』
と言って深く頭を下げた。
まり姉は、
『よくできました。』
と満足そうに微笑む。
そして気持ちを切り替えるように、
『いくら必要かしっかり確認しに行こうか!』
と元気よく号令をかけた。
ありさと兄は笑顔になり、
『おー!』
と元気よく返事をした。
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