150.兄が見ている世界 —引越し準備①—
無事にありさも兄も契約が終わった。
月々の支払いは、共益費や駐車場代込みで、
ありさは約8万円、
兄は約10万円。
家賃補助があるにしても凄いな……。
他の地域は分からないけど、この辺りではかなり高い方なんじゃないの?
と、わたしは思った。
ありさのお母さんは他に用事があるようで、そのまま帰宅した。
ありさは、ぷしゅーーーっと力が抜けたように兄へ倒れ込む。
そして、
『良かった……三人でいられる。これからも……』
と、ぽろぽろ涙を流した。
兄は、
『俺も嬉しいよ。ありちゃんと一緒にいられて。』
と言いながら、ありさを抱きしめた。
まり姉はそんな二人を見て、ため息をついている。
兄はまり姉を見ると、
『明日の自動車学校の実技、何時からだっけ?』
と聞いた。
まり姉は、
『今日、急にキャンセルが出たみたいで、次の時間から来ないかって言われてる。
明日、明後日、明々後日って、仮免を取るまでは午前中だけ。』
と答えた。
兄はそれを聞くと、
『じゃあ、じいちゃんから車を借りてるし、今から送っていくよ!』
と笑顔で言った。
さらに、
『明日から仮免を取るまでは、午後に迎えに来るねー。』
と続ける。
まり姉は、
『ありがとね……』
と顔を引きつらせながら答えた。
一方、ありさは、
『これからも三人♪』
とニコニコしている。
ありさと兄に付き合わされるまり姉って、本当に大変そう……。
でも、まり姉も何だかんだ楽しんでるんだよなー。
よく分からん。
と、わたしは思った。
『で、あっくんの車は?』
と、まり姉が尋ねる。
兄は、
『これだよ。』
と、じいちゃんから借りた軽バンを指差した。
そして鍵を差し込み、ドアを開ける。
『この車だけど?』
と平然と答えた。
まり姉は、
『私は特に何とも思わないけどねー。』
と言いながら助手席へ向かう。
しかし、その助手席には既にありさが向かっていた。
『助手席は私でしょ!』
と、まり姉。
すると、ありさが、
『まりちゃん、先に降りるんだから後ろの席でいいじゃん!
特に気にしないって言ってたし!』
と言い返した。
二人は睨み合う。
そして――
まり姉が折れた。
『このタイプの車の後部座席って、ペラペラでお尻痛くなるのに……。』
と文句を言いながら、手動のスライドドアを開けて乗り込み、自分で閉める。
ありさはルンルン気分で助手席へ。
兄は運転席だ。
後部座席から、まり姉が言う。
『次からは、ありちゃんが後ろね!』
ありさは即答した。
『まりちゃんを自動車学校へ迎えに行く時、最初から助手席に乗ってるんだから、もう私の指定席でしょ?』
まり姉は、
『ありちゃんのお尻なら、この座席でも耐えられるでしょ!
私のお尻じゃ長時間は痛いの!!』
とキレた。
わたしは思わず頷く。
分かる!
運転席と助手席はしっかりした作りだけど、後部座席は荷物を積むために折りたためる構造だから、座り心地が全然違うんだよ!
ありさは顔を膨らませて言い返そうとした。
その時、
兄が笑いながら、
『都度じゃんけんね。』
と一言。
まり姉とありさは顔を見合わせ
『はーい。』
と返事をした。
兄が運転する車内。
まり姉が、
『こうやって三人だけでドライブする日が来たって思うと、みんな成長したなーって思うよね!』
と、ありさと兄へ話しかけた。
しかし――
兄は楽しそうにギアを操作しながら運転している。
ありさは、
『おぉーーー!』
と言いながら、兄の運転操作に見入っていた。
まり姉は二人を見て、
『やっぱり何も変わってなかったか……』
と、ため息をついた。
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