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144.兄が見ている世界 —自動車学校43—

ありさと兄は、まり姉と自動車学校近くのバス停で合流した。


まり姉が、

『何このぬいぐるみ? 抱き枕?』

と尋ねると、


ありさは得意げな顔で、

『この子はモンローちゃん! ニ〇リであっくんが買ってくれたんだー。』

と紹介した。


まり姉は、

「私には?」

と言いたげな視線を兄へ向ける。


兄は苦笑しながら、

『まりちゃんへは、今度買い物へ行った時に買うから……。普段あんまり財布にお金入れてなくて……』

と言い、空っぽの財布を見せた。


まり姉はやれやれという表情でため息をつき、

『今度たくさん買ってもらうからね。』

とニヤリと笑う。


兄は、

『事前に教えてもらえたら、可能な範囲で準備するよ。』

と応じた。

まり姉は満足そうに頷いた。


やがてバスが到着し、三人は乗り込む。


兄は、

『まりちゃん、不動産屋さんと連絡が取れて、明後日アパートを見せてもらえることになったんだ。だから明後日は路上教習を入れないよう、明日教官へ伝えておいてね。』

と話した。


まり姉は、

『りょーかい! そろそろ新居探しかー。』

と、新しい生活への期待と不安が入り混じったようなため息を漏らした。


その後、兄はありさへ向き直る。

『ありちゃん、もし俺が寝過ごしてたらちゃんと起こしてね!』


ありさは固まり、

『わたしも明日早起きなんだけど……。』

と呟く。


兄は笑いながら、

『お互い頑張ろうね。』

と言った。


バスが到着し、三人は降車する。


ありさはモンローちゃんを抱きしめていたため、手を繋げない。


その代わり、まり姉と兄が手を繋いで歩いていた。


途中でありさと別れ、まり姉と二人で歩いていると、まり姉の家の塀の前に差し掛かった。


その瞬間。

まり姉が兄を壁へ押し付けた。

『私一人放置して、ありちゃんと出掛けてたの寂しかったんだけど!』


兄が、

『ごめ――』

と言い終わる前に、


まり姉の唇が兄の言葉を塞いだ。

兄はまり姉の身体へ手を回し、自分の方へ引き寄せようとする。


その時、

『お姉ちゃん!?』

ゆりの声が響いた。


わたしは思った。

ゆり、いい所で邪魔すんなよ。


まり姉は顔を真っ赤にして兄から離れる。

『あっくん、明日頑張ってね。』

そう言って、今度は軽く唇へキスをした。


兄も笑顔で、

『頑張ってくるね。』

と返し、自宅へ向かった。


後ろの方からは、

『ゆーりー! どこからどこまで見てたの!?』

という声が聞こえていた。


次の日の朝。

兄の目はほとんど開いていなかった。


朝五時のバス。

冬の寒さ。

兄はありさの太ももへ頭を乗せて寝ていた。


ありさは震えながら、

『あっくん、寝るなー。寝たら〇ぬぞー。』

と呼び掛ける。


そして、

『あっ、バス来たよ!』

と兄を起こした。


二人はバスへ乗り込む。


二人掛けの席へ座った瞬間。


兄は再びありさにもたれ掛かって眠り始めた。

『この後、駅で降りて、汽車で移動して、その後バスに乗り換えて……』


ありさもウトウトし始める。


スマホのバイブ音で二人は目を覚ました。


兄が時刻アラームを設定していたようだ。

わたしは思った。

まり姉と一緒の時は兄はアラームを設定していない。

やっぱりこういう面でも、まり姉に依存してるんだな……。


駅へ到着し、

兄が、

『そろそろ降りようか。』

と声を掛ける。


ありさも眠そうに頷いた。

切符を購入し、汽車へ乗り込む。

発車すると、ありさと兄は再び爆睡した。


ありさは窓際にもたれ掛かり、


兄はありさに膝枕された状態だ。


始発駅から終着駅までなので、乗り過ごす心配はない。


だが到着後、すぐバスへ乗れれば歩く距離をかなり短縮できる。


少しでももたつけば、一キロほど歩かなければならない。


兄は再度アラームを設定した。

『ポケットだと気付かないかもしれないし、落としたら面倒だからね。』

そう呟きながら、スマホを落ちないよう二人の間へ挟む。


そして再び眠りについた。

終着駅が近付いた頃。

スマホのバイブが鳴った。

股の近くで突然振動したスマホに、


ありさは、

『ひゃっ!?』

と身体を震わせながら飛び起きた。


兄もゆっくりと目を開く。


ありさは顔を真っ赤にして、

『あっくん!』

と抗議する。


兄は眠そうな顔のまま、

『近くに置いておかないと気付かないから……。』

と返した。


そのおかげで予定していたバスへ乗ることが出来た。


しかし安心した二人は、またしても爆睡している。


わたしは思った。

この二人、そっくりじゃねーか!

そりゃまり姉も苦労するわけだわ……。


兄がセットしたアラームより先に、ありさのスマホが鳴った。

ありさが目を覚まし周囲を見回した直後、

兄のスマホも鳴り始める。


ようやく運転免許試験場へ到着した。


ありさと兄は顔を見合わせ、

『思ったよりあっという間だったね。』

と声を揃える。

そして二人は笑った。


わたしは思った。

三時間近く爆睡してたお前らが言うな!

凄いぞ、本当に。

ご意見 ご感想 よろしくお願いします。

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