表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
145/234

143.兄が見ている世界 —自動車学校42—

家電を一通り見終えたありさと兄は、ニ〇リへ向かった。


食器や包丁などの台所用品から始まり、バス用品、寝具、カーテン、テーブルなどの家具を見て回る。


ありさは、家電売り場にいた時よりも目をキラキラさせていた。

『デザインもシンプルだし、ここで揃えるのもアリかもー。』


兄は周囲を見回しながら、

『どこで買うにしても、何がどのくらい必要なのか見当がつかないなー。食器にしても、タオルにしても、どのくらいあれば足りるんだろう。』

と呟いた。


その間にも、ありさは買い物カゴへ気になる商品を次々と入れている。


兄は慌てて、

『ありちゃん、待って。まだアパートも決まってないから。このカーテンだって、下手したらサイズが合わないかもしれないでしょ?』

『収納スペースがどのくらいあるか確認してから買おうね!』

と声を掛けた。


ありさは頬を膨らませながら、カゴへ入れた商品を戻しに行く。


しばらくして戻ってきたありさの腕には、大きな猫の抱き枕が抱えられていた。

『この子は今日、私と家に帰るから!』


兄は思わず笑い、

『お利口さんに商品を返してこられたから、それはいいよ。』


そう言いながら優しく頭を撫でて購入した。


ありさは、

『え?』

と兄の反応に少し驚いたようだった。


会計を済ませた二人は、自動車学校近くのバス停へ戻る途中、

『カフェでも行こうか!』

と兄が提案する。


ありさは首を傾げ、

『詠唱できないけど?』

と返した。


兄は苦笑しながら、

『そういう所じゃない。』

とツッコミを入れる。


案内された先にあったのは、少し年季の入った鯛焼き屋だった。


メニューはたい焼きのみで、飲み物は店先の自動販売機。


兄は、

『たい焼き二つください。』

と注文した。


商品を準備してもらっている間に、

『ありちゃん、飲み物どうする?』

と尋ねる。


『午〇ティー。』

ありさが即答すると、兄は二人分の飲み物を購入した。


たい焼きを受け取り、近くのベンチへ腰掛ける。


ありさは笑いながら、

『随分と味のあるカフェですこと。』

と周囲を見渡した。


兄は満足そうに、

『でも落ち着けるんだよ。』

『ほら、ありちゃんの好きな猫もいるよー。』

と指差す。


ありさは、

『野良猫じゃん。』

と笑った。


兄はたい焼きを頭から食べ始める。

『ほら、尻尾まで餡が入ってない…って、あちっ!』

熱さに驚いてたい焼きの尻尾を落としてしまった。


ありさは声を上げて笑い、

『ふざけてると火傷するよ。』

と呆れている。


兄が落としたたい焼きを拾おうとした瞬間。


野良猫の一匹が素早く駆け寄り、たい焼きを咥えて逃げていった。


兄は固まり、

『猫って魚のイメージだったんだけど……しかも猫舌じゃないの!?』

と本気で驚く。


その姿を見たありさは、ついに吹き出した。


兄は、そんなありさを見ながら少し嬉しそうに微笑む。

『ありちゃんが笑ってくれた。』


ありさは不思議そうに、

『え?』

と首を傾げた。


兄は少しだけ遠くを見るような目をして、

『陽子とカフェに行った時は、三人で六千円くらい使ったのに、結局笑顔は見られなかったんだ。』

『でも今日は、二人で五百円も使ってないのに笑ってくれた。』


そう言ってから、

『ありちゃんが笑ってくれると、俺も嬉しい。』

と穏やかに続けた。


ありさは抱き枕を抱えたまま、たい焼きを食べようとしていた。


兄は、

『俺が持ってるから。』

と抱き枕を受け取る。


兄は、たい焼きを食べるありさをしばらく眺めた後、抱き枕の顔を見つめ、

『似てる……。』

と呟いた。


ありさはニヤリと笑う。

『誰にでしょー?』


兄は少し考え、

『ありちゃんと俺を注意した後に、“もう!”って言う時のまりちゃん!』

と答えた。


ありさは満足そうに笑い、

『せーかい!』

と声を弾ませた。


たい焼きを食べ終えたありさは、兄から抱き枕を受け取る。

『モンローちゃん、おかえりー。』

そう言いながら、ぎゅっと抱きしめた。


そして時計を確認すると、

『そろそろ時間だし、バス停へ向かおうか!』

と兄へ声を掛けた。

ご意見 ご感想 よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ