136.兄が見ている世界 —自動車学校35—
まり姉、ありさ、兄の3人はバスに乗り込んだ。
兄がまり姉へ、
『まりちゃん、大学の授業料ってどのくらいかかるの?』
と尋ねる。
まり姉は、
『私は4年間で260万円くらいだったと思う。
ただ、教科書とかパソコンを買ったりするから、50万円くらいは追加でかかるかもしれないかなーって思ってるよ』
と答えた。
兄は頷き、
『まりちゃん、ありがとう。参考になったよ。』
と返事をする。
ありさは、
『参考って何の参考なのー?
私は、みんないくら蓄えてて、いくらくらいの物で生活を整えようとしてるのかが気になるよー!』
と言った。
兄は笑いながら、
『もし自分が周りと差があった時のことを考えたら、自分だけ言うのはリスクが高いからね。』
と答える。
わたしは、
頑張れ、ありさ! さっさとお小遣いとお年玉、そして貯金の残高を晒して、まり姉と兄から聞き出してよ!
と思った。
兄は話題を変えるように、
『ありちゃん、明々後日は5時の始発のバスで自動車学校へ行くよ。』
と言う。
ありさは、
『はーい。』
とぐったりした声で返事をした。
まり姉は苦笑しながら、ありさの背中を撫でる。
わたしは、
ありさー、そういう所だぞー。
この辺の気遣いが兄の好みなんだって……
知らんけど。
と思った。
3人はバスを降りて帰宅する。
途中でありさと別れ、まり姉と兄の2人で歩いていると、
兄が、
『まりちゃん、昔の約束覚えてる?』
と聞いた。
まり姉は得意げな顔で、
『覚えてるよー。
あっくんとの約束は、昔の口約束でも忘れないようにしてるからね。』
と答える。
兄は安心したような顔になり、
『免許を取った後は、アパート探しをするつもりなんだ。
一緒に来てくれるかな?
その後、家具や家電、車も買ったり、引っ越しもしたいと思ってるんだ。』
と言った。
まり姉は少し意地悪そうな顔をして、
『一つ、何か大事なことを飛ばしてないかな?』
と兄へ言う。
兄は真面目な顔になり、
『まりちゃん、学校を卒業したら一緒に生活したい。
出来る限り長い時間をまりちゃんと一緒に過ごしたい。
だから……』
と話し始めたが、少し勢いが弱まる。
兄は軽く深呼吸をして、
『一緒に生活する家を探して、一緒に使う家具や家電、車とかを一緒に買いに行こう!』
と言い切った。
まり姉は目を見開き、口元に力を入れた後、小さく息を吐いて、
『もう少し、言葉が欲しいな。』
と返した。
兄は覚悟を決める。
『初めて会った時……はそうでも無かったけど。』
と聞こえるか聞こえないかくらいの声で呟く。
そして、
『ずっと、ずっと好きでした。
これからも世界一愛しています。
ずっと俺の側にいて下さい。』
と真っ直ぐに言った。
まり姉は兄へ近付きながら、
『ちゃんと言ってくれた……
やっと言ってくれた。』
と涙を流して嬉しそうに言う。
そして、
『はい! 喜んで!!』
と兄へ抱きついた。
しばらく抱き合った後、
まり姉はいつもの調子に戻り、
『あっくんがこれだけ引っ張ったから、時間無いよー。
ちゃんと私の親にも、あっくんのおじちゃんやおばあちゃんにも説明しないとねー。』
と言った。
兄は、
『俺の家は今日、今からでもいいよ。
まりちゃんの家は、明々後日免許を取り終わった後に挨拶へ行きたい。
いいかな?』
と尋ねる。
まり姉は、
『いいよ。
その日の夜になるだろうけど。』
と答えた。
兄は、
『よろしくお願いします。』
と頭を下げる。
まり姉は笑顔で、
『出来る限り根回ししておくよ!』
と言った後、
『それで自動車の免許落ちたら、私笑っちゃうかもなー。』
とニヤリと笑う。
兄は、
『俺を誰だと思ってるの?』
と聞き返した。
まり姉は、
『今まで全部一発合格してる資格部の元部長って言って欲しいのかな?
やっぱり野球部とかサッカー部とか、運動部の部長の方がカッコいいんだけどー。』
と言って笑う。
そして、
『期待して待ってるね!』
と言って兄にキスをした。
その後のまり姉の、
『5時のバスで試験を受けに行って、お昼頃に戻って来たとしても、こっちに到着するのは夕方過ぎるけど、寝落ちないでね。』
という言葉に、兄は硬直した。
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