135.兄が見ている世界 —自動車学校34—
ありさと兄は、教官から注意された後、大人しく座り、まり姉は教習を終えた。
教習後、まり姉が、
『あーりーさー!』
と言いながら、ありさに近づく。
ありさは、
『つい気になっちゃって、ごめんね』
と可愛く謝った。
兄はコソッと逃げようとしていたが、
『あっくん!』
と、まり姉に呼び止められた。
兄も素直に、
『ごめんなさい。』
と謝った。
まり姉、怖いよー。
子供の頃に怒られた記憶が蘇る……
教官が、ありさと兄に向かい、
『荒木さんと大坂君は、教習は明日の二時間で終わりだからね。九時、十時、十一時、十三時。今日と同じ時間で入れてるから、気を引き締めてね。』
と言う。
続いて、まり姉へ、
『中野さんは、初めてにしてはとても丁寧に運転できていたから、このまま集中を切らさず運転できるように心掛けようね。』
と言うと、その場を離れていった。
残り一時間。
ありさと兄は自習へ向かい、まり姉は学科を受けに行った。
自習中、ありさが、
『往復六時間かけて免許を取りに行って落ちたら、親から何て言われるか想像しただけで震えてきた……』
と言った。
兄が、
『ありちゃんも俺も何十回も練習問題を解いてるけど、一回も合格点を下回ったことないから、普段通りやれば大丈夫だと俺は思うけど。』
と言うと、
ありさは頭を抱えながら、
『まだまだイベントは続くんだよ!
次は家を決めて、家具家電を買って、車も買って……って、お金が吹き飛んでいくイベントがたくさん控えてるんだけど……。
それにスーツも買わないといけないし、今までは制服で済ませてたことも多かったけど、私服も追加で買わないとだし。』
と続ける。
さらに、
『親とお金の話をしたら、
「そのために今まで貯金してたんでしょ。足りない分は出してあげるから、まずは貯金でどうにかしなさい」
だってー。』
そう言った後、
『私が小さい頃から貯めてきた、お小遣いやお年玉が消えていくよー。』
と寂しそうに呟いた。
兄は、
『確かに、お金も問題はあるよねー。』
と言った。
ありさは、ふと疑問を口にする。
『あっくんって、普通にタクシー使ったり、株主優待券持ってたりするけど、お小遣いどうなってるの?』
兄は、
『定期的に入ってきてるのは、じいちゃんからのお小遣いとお年玉くらいかな。』
と答えた。
ありさは、
『そんなにたくさん貰ってるの?』
と聞く。
わたしは、
ガツガツ行くなー。
人様の懐事情だぞ!
確かに、わたしの両親からお小遣いを貰っていたのは、わたしだけだもんね。
じいちゃんから貰ってたのかー。
わたしのと差額、気になってきた。
ありさ、頑張って聞き出して!
と、ありさを応援する。
兄は、にっこり笑って、
『ありちゃんのお小遣い、お年玉、貯金の金額を全部教えてくれたら、俺も教えるよ!』
と言った。
ありさは、
言いたくない。
でも、好きな人の懐事情は知りたい。
そんな葛藤に苛まれているうちにバスの時間になり、三人は片付けをして自習スペースを後にした。
バス停で、まり姉と合流する。
ありさは、これからの大量の出費について、まり姉へ語った。
まり姉は苦笑いしながら、
『私はあと四年間学生だから、その間は奨学金を借りることになりそうかな。
ありちゃんと比べると、生活水準を少し落とさないといけないかも。』
と言った。
そして、
『親と話した時も、
アパート代、生活費、学費を全部出すのは無理
って言われたからね。』
と続けた。
わたしは、
自分が夢見ていたキラキラ大学生ライフにも、お金の問題が隠れているんだ!
という事実に衝撃を受けた。
それと同時に、
わたしの貯金も一瞬で無くなるんだろうなー。
お父さん、お母さん、しっかり蓄えて、わたしに使って欲しいなー。
と、わたしは思った。
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