133.兄が見ている世界 —自動車学校32—
バスに乗ると、まり姉とありさが兄を挟む形で座った。
まり姉がありさへ、
『私がいない間に何があったの?
いつもと様子が違うんだけど……』
と聞くと、
ありさは、
『べっつにー』
と不貞腐れる。
まり姉は軽くため息をつき、
『今は12月中旬で、卒業まであと少しでしょ?
3月になったら卒業式もあるし、その後は引っ越し準備でバタバタするから、気持ちに余裕がなくなってるのね。』
と言った。
ありさは、
『そうだけど、まりちゃんがそれ言うと何かムカつくんだけどなー』
と言い、まり姉にうつ伏せ膝枕してもらっている兄を見てため息をついた。
まり姉が、
『匂いを嗅ぐなー』
と言って兄を引き離そうとするが、
兄は、
『まりちゃん成分を補充してるの!』
と言っている。
わたしは思う。
ありさ、もう目を覚ませよ!
コイツのどこが良いんだ?
朝からまり姉に抱きついて、髪や首筋の匂いを嗅いで、今は膝枕でご満悦なんだぞ!
ありさは兄へ、
『私だったらどれだけでもいいよー』
と言う。
兄は、そのままありさの肩へ頭を預けた。
ありさは大満足しているが、まり姉はやれやれという顔をしている。
まり姉も大変だなーと、わたしは思った。
途中、陽子が友達とバスに乗り込んでくる。
『やっほー! あっくん、ありあり!』
と言い、そのまま少し離れた席へ友達と座った。
ありさと兄は顔を見合わせる。
そして、にっこり笑って、
『良かったね』
と言い合い、クスッと笑った。
まり姉だけは首を傾げてポカンとしている。
わたしは、
「お前ら説明してやれよ!」
と思ったが、それでいいのかなとも思った。
自動車学校へ到着すると、まり姉は手続きをするため、ありさと兄と別れる。
ありさと兄は今日の教習枠を確認した。
二人とも三枠ずつ入っている。
兄が、
『一時間交代だし、お互い後部座席に乗ろうか』
と提案すると、
ありさは笑顔で、
『うん!』
と頷いた。
そして、
兄 → ありさ → 兄
の順番で運転し、昼休憩となる。
しばらくして、手続きを終えたまり姉が戻ってきた。
『学校と違った意味で疲れたーーー。』
兄はすぐにまり姉へ抱きつき、
『お疲れ様!』
と言う。
ありさは兄の反応に少し不満そうな顔をしたが、
『まりちゃん、お疲れ様!』
と言った。
まり姉は、
『二人ともありがとー。
さっき教官に挨拶したんだけど、担当はありちゃんとあっくんと同じだよ。
二人は明後日卒検だから、私は明後日から教習に入れるって。
それまでは学科に集中するように言われたよ。』
と言った。
二人は自分のスタンプカードを見る。
ありさは残り四個。
兄は残り三個。
兄はありさへ、
『あっという間だったね。』
と言う。
ありさは、
『本当だよ!』
と少し寂しそうに笑った。
兄は、
『次は本免の筆記試験を受けるために試験場へ行かないとだね。
バスで片道二時間半から三時間。
俺の尻が割れちゃうよ。』
と言う。
まり姉は即座に、
『もう割れてるだろ!』
とツッコんだ。
兄は真顔で、
『え? 見たの!?』
と言う。
ありさも、
『きゃー! まりちゃんのえっちー!』
と便乗した。
まり姉は深いため息をついた。
兄は笑いながら、
『真面目な話、学科のスタンプは余裕で集められるから、今日の残りが学科だけなら、ありちゃんと俺が運転する車の後部座席に乗ってみたら?』
と提案する。
ありさは時間割を確認しながら、
『十三時の枠が私で、十四時の枠があっくん、十五時の枠も私だよ。
十六時からバスが来る時間まで自学で、本免試験の勉強かな。』
と言った。
そして時計を見る。
『そろそろ時間だから、あっくん、まりちゃん、行こうか!』
ありさの声に、まり姉と兄は頷いた。
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