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128.兄が見ている世界 —自動車学校27—

陽子は真面目な表情になり、注文したメニューへ伸ばしかけていた手を止めた。

『一言で言うと、今までのことを謝ってもらった……感じかな?』

そう答えると、再び食べ始める。


兄は、

『他には?』

と尋ねた。


陽子は少し考え込みながら、兄が一口だけ食べたアサイーボウルを食べ終えていた。

そして、

『メインは本当にそれだけかな。


あとは、あっくんとありありと一緒にいるようになって印象が変わったって言われた。


前はキツいイメージとか、冷たい印象が強かったけど、今は親しみやすくなったって。


落ち着きが出てきて、大人っぽくなったとも言われたかな?』

と話した。


ありさも注文したメニューを美味しそうに食べていたが、陽子の話を聞いて一度だけ首を傾げる。


何か考え込むような表情を浮かべた後、再び食事へ戻った。


兄は少し安心したように、

『全部うまくいったってことかな。

陽子は、もう今回のトラブルには巻き込まれなくなったと考えて大丈夫?』

と確認する。


ありさは、一通り注文したものを食べ終わったことを確認すると、自分の腕を触り始める。


まるで何かを確かめるような仕草だった。


陽子は最後のカヌレを頬張り、幸せそうな顔になる。

『うん。

あっくんとありありのおかげで、仲間はずれにされることもないし、待ち伏せされて道を塞がれることもなくなった。

全部うまくいったよ。

本当にありがとう。』

そう言って笑った。


その時だった。


ありさの顔色が少しずつ青くなっていく。


わたしは、

「どうしたんだろう?」

と思った。


兄は気付かず、

『安心したよ。本当に良かった。』

と笑顔を向ける。


すると突然、ありさが立ち上がった。

『良くないよ。

安心なんてできない。

もしかしたら、全然うまくいってないかもしれない。』

そう言いながら体を震わせる。


兄も陽子も慌てて声を掛ける。


しかし、ありさには届いていないようだった。


ありさは急に陽子の手を掴み、

『私たちの学校、ここから近いんだけど、陽子も一緒に来て!』

と言って歩き始める。


そのまま陽子を連れて店を飛び出してしまった。


わたしは、

「金は男が払えってことなんだろうか」

と少しだけ兄に同情した。


アサイーボウルを一口とコーヒーしか飲んでいない兄に、会計が丸投げされている。


兄は何事もなかったかのように会計を済ませると、急いで二人の後を追いかけた。


ありさは学校へ到着すると、一目散に保健室へ向かう。


陽子も状況が分からないまま付いていく。


兄も遅れないように追いかけた。


兄が保健室へ入ろうとした、その瞬間。


ありさと陽子の悲鳴が聞こえてきた。


兄は慌てて保健室の扉をノックする。

『入るよ!』

そう言うと、返事を待たずに扉を開けた。


そこには、涙を流しながらパーカーを脱ごうとしているありさと、涙目になっている陽子の姿があった。


ありさは兄を見ると、

『あっくん……やっぱりだよ……』

と震える声で言った。

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