表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
128/232

126.兄が見ている世界 —自動車学校25—

ありさの叫びを陽子と兄は軽くスルーし、お互いのスマホを見せ合った。


兄が、

「じゃあ、削除するよ」

と言うと、


陽子は、

「りょーかーい」

とスマホの画面を見せる。


ありさもスマホを取り出し、三人は互いに確認しながら動画を削除した。

念のため「完全削除」まで選択する。


それぞれが相手のスマホを確認し合う。


兄のスマホを確認していたありさが、まきの寝起き動画を見つけた。

「再生していい?」

と兄に尋ねる。


兄は、

「まきちゃん本人の了承をもらえたらね。

さっき削除した動画と交換条件だったら、お互いにとっても悪くない取引だったと思うけど」

と答えた。


ありさは露骨に嫌そうな顔をして、

「じゃあ見なくていい。

あっくんのケチ!」

とそっぽを向いた。


三人とも朝食を食べ終えていたため、それぞれ準備を済ませて家を出発した。


バスに乗り、自動車学校へ向かう。


到着すると、陽子は同じ学校の女子達に明るく迎えられ、楽しそうに笑っていた。


その様子を見て安心した兄へ、ありさが尋ねる。


「やっと、一安心ってところかな?」


兄は頷いた。

「そうだね。

いつまでも一緒に居られるわけじゃないからね」

そう答えた後、少し寂しそうな表情を浮かべる。

「三人でカフェに行って、ちゃんと大丈夫そうだと確信できたら、俺は陽子から少しずつフェードアウトしようと思う」


ありさは不思議そうな顔をした。


兄は続ける。

「俺みたいなのが、ずっと一緒にいたら陽子が可哀想だし」

そう言って小さくため息をついた。


ありさは首を傾げる。

「私はそんなことないと思うけどなー。

それなら子どもの頃から一緒に遊んでた私やまりちゃんはどうなるの?」


兄は少し考えた後、笑いながら答えた。

「オナラで威嚇するようになるとか?」


ありさは即座に反応する。

「コラ!

また怒るよ!!」


兄は笑いながら続けた。

「俺にとって、まりちゃんもありちゃんも特別だからね。

許されるなら、ずっと一緒に居たいよ」


ありさは少しだけ真面目な顔になる。

「じゃあ私と結婚してよ。

まりちゃんとの浮気には目をつぶってあげるから」


兄は苦笑した。

「こんな可愛い女の子と結婚して浮気なんてしたら、ありちゃんパパに物理的に消されちゃうから無理でーす」


そして立ち上がる。

「さあ、今日も路上教習をサクッと終わらせてくるねー」


兄とありさがすれ違う。


その瞬間――


「私は本気だよ」

ありさが小さな声で呟いた気がした。


兄は振り返る。

「え?」


しかし、ありさは何事もなかったような顔をしている。

「何?」


兄は少し首を傾げた後、

「行ってきます」

と声を掛け、路上教習へ向かった。


しばらくして――


その日のノルマを終えた兄とありさは、陽子を待っていた。


兄が、

「ありちゃん、陽子遅くない?」

と尋ねる。


ありさも頷く。

「うん。遅いよねー」


すると、


「ごめーん! 待った?」

と陽子が小走りで駆け寄ってきた。


兄は笑顔で答える。

「うん。三十分くらい」


直後、ありさに肩を叩かれた。


陽子は苦笑しながら、

「ごめんね」

と謝る。


そして少し真面目な顔になった。

「あおい達に呼び出されてたんだ」


ありさと兄は顔を見合わせる。

気になる話だ。

だが、人目もある。


兄は笑顔を浮かべ、陽子へ手を差し出した。

「陽子、一緒にカフェ行こう」


そう言って、三人は自動車学校を後にした。

ご意見 ご感想 よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ