表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
123/232

121.兄が見ている世界 —自動車学校20—

ありさは、

「あっくんのばか」

と不機嫌そうにそっぽを向き、陽子もどこか冷ややかな視線を兄へ向けていた。


さすがの兄も気まずいようで、なかなか声を掛けられない。

それでも意を決したように、

「そろそろバスの時間だから行こうか」

と二人を促した。


3人はバスへ乗り込む。


車内でも、ありさはぷいっと横を向いたまま。

兄と目を合わせようとしない。


この状態では話しかけづらいのか、兄は陽子へ視線を向けた。

「陽子ちゃん、今朝はいろいろあったけど、自動車学校に着いてからは何事もなく過ごせたかな?」


陽子はにこりと笑う。

「うん」


「良かった」

兄も安心したように微笑み、

「陽子ちゃんの友達が、俺が一人でカラオケに行ったのを見てたんだよね? あのお店って、よく利用するの?」

と続けた。


陽子は一瞬きょとんとした後、

「カラオケというか、その近くのカフェによく行ってたよー」


と教えてくれる。

「あのお店、オシャレだもんね。陽子ちゃんのおすすめはある?」


そう尋ねられた陽子は少し考え、

「季節の果物を使ったメニューが多いから時期によるけど、今ならキャラメルとナッツのラテに、いちごタルトかな?」

と紹介した。


「美味しそうだね」

兄は素直に感心し、


「お互い時間が空いてる時に、一緒に行かない? 気にはなってたんだけど、男一人だと入りづらくて……」

と誘う。


陽子は思わず吹き出した。

「いいよ。確かに男の人一人だと入りにくそうだもんね」


「じゃあ、明日お互い空き時間があったら行こうか。教習の合間に一息つくにはちょうど良さそうだし」


「うん、いいね!」

陽子は楽しそうに頷いた。


その時、兄は妙な視線を感じた。

振り向くと、先ほどまで横を向いていたありさが、じーっとこちらを見ている。


いや、見ているというより睨んでいる。


兄は慌ててフォローを入れた。

「もし良かったら、ありちゃんも一緒に行こうよ。ありちゃんがいてくれたから、安心してリラックスできたわけだし」


ありさは腕を組みながら、

「仕方ないなー。でも、まだ許してないから」

と唇を尖らせる。


兄は素直に頭を下げた。

「ごめんね」


すると、ありさは少しだけ機嫌を直したようで、

「罰として、次から私も誘ってね。あっくんがどんな歌を歌うのか興味あるし」

と、いたずらっぽく笑った。


しかし兄は、

「え?」

と首を傾げる。


ありさは嫌な予感がした。

「……カラオケ行ったんだよね?」


「うん」

兄は何の迷いもなく頷く。


「何しに行ったの?」

ありさの問いに、兄は実に平然と答えた。


「大画面で映画のDVDを観るため」


ありさは固まった。


「……一曲も歌ってないの?」

念のため確認する。


「うん」

兄はあっさり肯定し、

「映画二本目の途中で寝落ちしてたし」

と付け加えた。


その答えに衝撃を受けた陽子は、自分が降りるはずのバス停を通り過ぎてしまう。


ありさは深いため息をつき、

「やっぱり次からも一人で行っていいよ」

と、呆れ半分で呟いた。

ご意見 ご感想 よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ