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117.兄が見ている世界 —自動車学校16—

じいちゃんと話した後、兄は夕方のお務めへ向かい、戻ってから三人で晩ご飯を食べた。


今日の献立は、ご飯、味噌汁、鯖の味噌煮、温野菜サラダ。


ありさと陽子は今日も仲良く、ご飯を三杯ずつおかわりした。


食後は、二人で仲良く入浴する。


兄はその間に母屋へ向かい、仏壇へ手を合わせた。


二人の入浴が終わった後、兄も風呂へ入り、その後、ありさと陽子がいる客間へ入る。


陽子は満足そうな顔で胸を張った。

『いっぱい、ありありを堪能させていただきました!

私、大満足です。』


一方のありさは胸元を押さえ、ぐったりしている。


兄は、そんな普段通りの二人を見て安心すると、

『じゃあ、明日のことについて話そうか。』

と切り出した。


ありさと陽子が頷いたのを確認し、兄は続ける。

『まず、朝それぞれの家に荷物を置きに行く。

その後、陽子ちゃんの家の近くのバス停からバスに乗って、自動車学校へ向かう。

こんな感じで大丈夫かな?』


二人は顔を見合わせると、

『問題ないよ。』

と声を揃えた。


兄は安心したように頷く。

『明日は昨日より三十分早く出る予定だから、二人とも今日は早めに休んでね。』


すると陽子が小声で、

『六時半出発ってこと……?』

と呟いていた。


兄は思わず苦笑する。

『おやすみなさい。』

そう声を掛けると、ありさと陽子を残して自室へ戻り、そのまま眠りについた。


しばらくして。


兄は再び体を揺さぶられ、目を覚ます。


目の前には、ありさがいた。

『昨日は陽子ちゃんと二人だったでしょ!

今日は私と話してよ。』


そう言うと、

『寒いから布団入るね。』

と当然のように布団へ潜り込んでくる。


ありさは兄の隣へ寝転がると、

『ねぇ、あっくん。

付き合ってる人はいないって言ってたけど、私のことどう思ってる?』

と尋ねた。


兄は眠そうな目をしながらも、ありさへ視線を向ける。

『周りのことによく気が付くし、誰とでも仲良くなれる。

出来ないことがあったら、出来るようになるまで頑張る頑固なところもある。

俺の大切で、かわいい幼馴染だよ。』


ありさの表情がぱっと明るくなる。

『嬉しいこと言ってくれるねー。』

そう笑った後、少し真面目な顔になった。

『でも私、知ってるんだ。

あっくんもまりちゃんも、実は両想いなんでしょ?

どっちかが告白したら、すぐ付き合うと思う。』


そして、いたずらっぽく笑う。


『じゃあさ。

ここで私との間に既成事実が出来たら、あっくんは私と付き合ってくれるのかな?』


兄は小さくため息をついた。

『それは、お互いのためによくないと思うな。』


そして静かに続ける。


『まだ二人とも社会人になる前だし。

ありちゃんのご両親も、そこまで許してくれたわけじゃないでしょ?

せっかく外泊を許してもらえたのに、その信頼を裏切るようなことはしたくないよ。』


ありさは、

『むー!』

と不満そうに頬を膨らませた。


だが、その怒りは長続きしなかった。


兄は話している途中で、そのまま寝落ちしてしまったからだ。


ありさは眠っている兄の顔を見つめる。


そして小さく笑うと、自分も静かに目を閉じた。

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