バイオハザード編Ⅱ 絶望的な情報説明ととあるバカによる自称超すごいアイデア
ゾンビパンデミック編Ⅰの続きです。1個前の埋め草編の時間軸はあまり気にしないでください。
「もう大丈夫、何故って?!私が来た!!」
「こんちわー」
「キューイ!」
自宅からほうきを飛ばすこと数分。俺たちは休日だというのに隊の拠点に足を運んでいた。
隊の連中は一応全員無事なようで、拠点にはこの前もいた隊員が集結し、いつになく真面目そうな雰囲気を…
「ちょっと咲楽、あんた食べ過ぎ。虎鉄たちのお土産のうなパイ28本入りなのに、あんた一人でいくつ食べてんのさ」
「この世は弱肉強食。刻たちが遅いのが悪いのだ」
「ちょっと、私が出かけてる間に何食べてるのよ。私それ1本も食べてないんですけど」
…いや、割といつも通りだった。
「来ましたか夏目隊員、小鳥遊隊員。事態は急を要します。状況説明をするので、着席してください」
隊員連中の危機感の無さに呆れていると、こんな空気の中でも副隊長がいつも以上に真面目な様子で言った。
「では皆さん揃いましたので、現状の説明をします。まずは弘零隊員に調査してもらった、現在町中に徘徊している特殊感染症患者、通称ゾンビの特徴についての情報を共有します」
そう言って、副隊長は各種説明を始めた。
説明によると現状分かっているゾンビの特性は以下の通り。
・異界門から流出した未知のウイルスによって発症する。
・ゾンビ化した人に噛まれることで感染する。
・ゾンビはまだ生きているが意識はなく、本能的に歩き回って人に噛み付く。
・死ぬと活動を停止する。
・生命力、筋力が強化されるが、知性は非常に低く、素早さもほとんどの個体は低い。
・スキルを使用する個体はまだ確認されていない。
・現状特効薬は無いが、上位の聖職者なら解毒が可能。
・まだ生きている以上倫理、法的にゾンビを殺害することはできない。
と、ここまでは大体予想通りなのだが、最後に言われたやつが問題だった。
・異界種を含む人外にも感染する。
・人間以外に感染した場合、理性を失って凶暴にはなるが技や能力にはあまり変化がなく、素早さもあまり変わらない。しかし筋力の強化はされる。
これがまずい、非常にまずい。
人類は知性が売りみたいな生物だから知性がなくなったゾンビなら雑魚も同然だが、元々本能で動いているような奴らの知性がなくなったところでその能力はあまり変わらない。
要は、人間以外に感染すると筋力が上がり噛まれるだけで終わりという強化がされた上位モンスターが完成するということだ。
「へー、そいつはなかなか手応えがありそうな奴らだな。そんで今はどんな奴らがいるんだ?」
強敵に興味が出たのか、ゾンビの説明が一通り終わった後に毘彩が尋ねた。
『あっはい。えっと、現在確認されたいるのは…現世の動物、だと、犬猫などのペット類。…鳥類、鹿、熊、猪、たぬきなどの野生動物。…象、ライオン、虎、馬、ヤギなど、動物園から脱走した、と、思われる動物など…です。…異界種ではラバーフロッグ、スライム、レッドブル、タッツェルブルム、魍魎、モンゴリアンデスワーム、ピッグマン、ゾンビなどが確認…されていま、す』
なるほど。動物から魔物に妖怪、果てはアンデッドか。幅広いな。
象や鳥類はまぁ大丈夫だろうが、猫とかが厄介だな。
何せ小さい上に素早いし、色々やりづらそうだ。
……アンデッドってなんだよ。
「は?何、ゾンビ?人間に感染したやつってこと?」
『い、いえ。…アンデッドモンスターであるゾンビ…にゾンビ化ウイルスが感染した個体…です』
なんだそりゃ。
ゾンビ化したゾンビってなんだよ。
「アンデッドのゾンビは既に死体となっていますし、噛まれてもゾンビ化はしないので厳密には現在見られるゾンビとは全くの別物です。ゾンビ化したゾンビは筋力が強化され、物理攻撃によるダメージがほとんどなく、噛まれたらゾンビ化する腐った死体だと思ってください」
普通にヤバいやつだった。
なんでこんなネタみたいなやつなのに攻防共にクソ強いんだよ。
「続いて現在の戦力などです。現在分かっている限り、ゾンビの数は約7万。その数は今なお増加中です。ですが、うち5千は既に保護されています」
…7万?
いや県内全体であの量いるならそんなもんになるんだろうが、正直多すぎてイメージできない。
「対して、こちらの戦力は県内の討伐者、警察、消防、自衛隊、県外からの援軍などをあわせて約8千。ただしその中でもゾンビ化している人も多いため、数は減少しています」
…8千?
少なくね?
んで減ってるって、だいぶ絶望的じゃん。
「幸い山梨は盆地なので、県外へのゾンビの流出は抑えられていますが、このままではそれも時間の問題でしょう。予想されるタイムリミットはあと3日。それまでに県内のゾンビをほぼ全て保護しないと、ゾンビウイルスは周辺の都県。果ては全国にまで拡大する可能性があると予測されています」
………。
「すみません。ちょっとビザ作りに行きたいので早退していいですか?」
「奇遇ね。私も作りたいから早退するわ」
俺に便乗して真凜もそんなことを言い出した。
さすが、やはりこいつは引きどころを分かっている。
「あんたたち何国外逃亡しようとしてんの?!多少絶望的な状況でもどうにかして乗り越えようっていう気概は無いわけ?!」
「「無い」」
刻の言葉に対し、俺と真凜は迷わず即答した。
いやこれは無理だから。
こんなところにいられるか、俺は逃げるぜ。
「申し訳ありませんが、県内の全討伐者は全員参戦が義務付けられています。絶望的な状況ですが、どうかご協力をお願いします」
俺と真凜が刻と言い合っていると、割って入るように副隊長が深々と頭を下げた。
…この人はどうしてこう、自己中な態度を申し訳なくさせるのが上手いのだろう。
「…分かりまし」
「全くしょうがないわね。そんなにちゃんと頼まれたら断れないじゃない。今は私がこの隊でいちばん強いんだし、一肌脱いでやるわよ!」
俺が副隊長の頼みに応える的な感じで返事しようとしたのに、真凜がそれを遮って同じことをしやがった。
このクズは本当、どうしてこう…
「ありがとうございます!」
副隊長が再び頭を下げた。
SuRe本部の重役ってわけでもないのに、こんなに精力的にできるのは本当にすごいと思う。
「しかし、作戦はあるんですか?この戦力差で10人程増えてもあまり状況は変わらないと思うのですが」
「そうやな。それに俺は縛り上げるスキルなんか持ってへんし、大した戦力にはなれへんと思うで」
話がまとまったところで千歳と虎鉄が言った。
確かに、いくら隊の連中が強くても人間ゾンビへの対抗手段は気絶か束縛くらいだし、それらが使えない人もいるだろう。
「そういやそうだな。ってことは俺も大して動けねぇか。うちの隊でその辺のスキル使えるのっつったら、千歳と麻義…あとはメイズくらいか?」
「私も電撃で気絶させれるから戦力にはなれるわよ」
「さっき試したら俺も神聖術で解毒できたから、戦力にはなれるだろうな」
毘彩の言葉に対して真凜と吉夜が返事した。
「いえ、それに関しては本部の方で対策が取られています。皆さん、一般異能力代理演算装置端末はお持ちですね?それに束縛スキルのデータを送りましたので、それを使ってゾンビを無力化してください」
副隊長にそう言われて隊のグループLAINを見ると、そこにはスキルのデータが送られてきていた。
なるほど、それなら呪術師や魔法使いじゃなくても参戦できるってわけか。
…いや、でもそれは…
「副隊長、束縛スキルは射程も短いですし、一般異能力代理演算装置だとフル充電でも50発撃てないくらいだと思うのですが…」
一般異能力代理演算装置、通称グリモアは、ネット機器経由でデータをダウンロードしたスキルを、自身が覚えてなくても使えるという便利アイテムだ。
充電式なので魔力を消費しないというのは利点なのだが、その充電の減りが、使うスキルによってはバカみたいに早い。
束縛スキルは魔素で縄を作って、それを相手の体型にあわせて縛り付けるというそれなりに高度なスキルだ。
だからそんなに数撃てないと思うのだが…
「それもそうなのですが、現状これ以外に対抗手段が無く…。気絶スキルやスタンガンの使用もあるのですが、護送中に起きてしまう可能性があるのであまり適さないんですよ」
「そうですか。じゃあしょうがないっすね」
充電しながらの戦いになると効率も悪いのだが、ここまで特殊な状況だとそれも仕方がないだろう。
これは素で対抗できるスキルを持ってる俺たちが頑張んないといけないパターンかなぁ…
「フ、フハ、フハハハハハハ!! It's a parfect idea!!」
どうにかして最小限の労力に抑えられないかの考えていると、急に真凜が叫んだ。
「うわびっくりした!どうしたの急に、頭おかしくなったの?」
「何言ってんだよ刻。このアホは前からこんなもんだろ」
「そうだな。前からこんなもんなのだ」
「あんたたち揃いも揃って酷い言いようね!せっかく私が超すごいアイデア思いついたんだから、今の言葉撤回しなさいよ!」
真凜が勢いよくデスクに手をついて立ち上がった。
こいつが超すごいアイデアとか、絶対ろくな事じゃない気がするんだが…
「夏目隊員、何か策があるんですか?それは一体…」
その後、以外にも真凜のアイデアは採用され、布陣などの作戦を立てた後、俺たちは各自ゾンビ狩りへと赴いた。




