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Chaos〈カオス〉 〜こんなバグった世界だが、俺は意地でも平穏に暮らしたい〜  作者: 身勝手な鶏
3章:堅牢なる次元の境界は薄れ、混乱は尚も加速する
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駄弁編Ⅱ みなさん詐欺には気をつけましょう

時間とか場所とか色々無視した番外編みたいなものです。

投稿頻度上げるために始めました。

今後はちょくちょくこういう蛇足を挟んでいくつもりです。

「そういやさ、前にうち来たことあるって言ってたけど、そん時はなんで来たんだ?」


拠点まで行くべく家を出て数分。今更になってふと気になったので真凜に尋ねた。

というのも、あのクソ姉貴はコミュ症ではないが、決して陽キャというわけではない。

それなりの用がなければただの同僚を家に招くことなんてないと思うんだが…

「あーそれね。あれは大体2年くらい前の事なんだけど…」

そう言って真凛は、懐かしさを感じるような目で昔話を始めた。


〜Three years ago〜


「萌樹さーん、今日泊めてくださいっ!」

仕事も終わって帰る時間。私は萌樹さんの前に土下座していた。

「え、何何どうしたの?」

「ここ数日パンの耳しか食べてないんです。タンパク質を恵んでくださいっ!」

今日は月末。

今月は追ってる本の新刊の販売が立て続いたりして、絶望的にお金がなく、そろそろ限界を迎えていた。

パンの耳でも耐えられないことはないけど、本当にそろそろ死にそう。

「あーなるほどね。そうだね…うん。僕の家で良ければ来ればいいさ。大したもてなしはできないけど、ご飯は期待してもいいよ?」

「いや虫がいいとは思うんですけど、そこをなんとかお慈悲を…え?今なんて?いいの?」

「だからそう言っているじゃないか」

萌樹さんが呆れたようにしつつ帰り支度を始めた。

正直ダメ元で言ったのだけど、あっさり受け入れてくれたのはかなり意外だ。

「え?ほんと?いいの?…やったー‼︎‼︎‼︎感謝っ……圧倒的感謝っ………‼︎‼︎‼︎」


〜〜〜


「てな感じで、それから給料が入るまで萌樹さんの家…もといあんたん家に居候してたのよ」

「へぇ、あのクズ姉貴にそんな優しさが残ってたとはな。……ん?なぁ、俺そんな優しい姉貴を知らないんだけど、本当にそれで終わったのか?」

途中までは感心して聞いていたのだが、よくよく考えると違和感が出てきた。

奴はタチが悪いことに、完全に悪行を行うわけではなく、いわば身内に合法スレスレの詐欺を働くような女なのだ。

あの鬼畜が完全な善意で行動するとは思えない。

「さすがは弟。伊達に長い付き合いじゃないわね。それで続きなんだけど…」


〜〜〜


「ん〜〜〜んまい!何よこのハンバーグ、何で作ったの⁈」

居候3日目。

もう居候生活にも慣れてきて、普通にシェアハウスみたいなノリで最近は過ごしていた。

「昨日狩ったレッドブルって魔物の牛100%。自分で言うのも何だけど、よくできてるでしょう」

「できてるわよ。超よくできてるわよ!もうこれは神がかりを通り越して鬼がかってるわよ」

「それは良かった。じゃあ食べ終わったらシンク持ってって水漬けといてね」

「ん〜〜〜」

萌樹さんの言葉を聞きつつ、私は夢中になってハンバーグを喰らっていった。


〜A few minutes later〜


「っはー美味しかったー。いやー悪いわねー、文無しの私にこんな美味しいもの食べさせてもらって」

数分後、私は爆速でハンバーグを食べ終えてソファーにくつろいでいた。

「いいよいいよ。困った時はお互い様。その代わり、僕が困ってたら助けてね?」

「お安い御用よ。この真凛様にドーンと任せなさいな!」


〜〜〜


「てな感じで、私の幸せな日々は過ぎていったわ。でも、この時深く考えずに返事をしたことを、私は深ーく後悔することになったの」


〜〜〜


「ねぇ真凛、明日は給料日だね。それで、お礼と言ってはなんだけどちょっとやってほしいことがあるんだよ」

給料日前日の夕方。萌樹さんがキッチンに立ちながら言った。

確かにここ数日バカ美味しいご飯貰って、多少のお返しでもしないと女が廃るってもんだ。

「何?萌樹さんが頼み事なんて珍しいわね。いいわよ。なんでもドーンと言ってちょうだい!」

「(あーあ、なんでもって言っちゃった)」

萌樹さんが何か言った気がしたが、それは私の耳には届かなかった。


〜A few minutes later 〜


夕飯を食べた後、私たちは小鳥遊邸の2階に来ていた。

「…何これ…」

私はここに泊まっている間、一階のソファで寝ていたから知らなかった。

この、二階に広がる光景を。


「じゃあ真凛。君にはここのお片付けをお願いしたい」

呆然とする私に、萌樹さんが言った。

足元にはゴミ袋、そして廊下を埋め尽くすよく分からないものの山。

開けっぱなしのドアの向こうには、さらに酷いことになっているのが見える。


小鳥遊邸二階。そこには一面のゴミ屋敷が広がっていた。


「えっと、これ、私が片付け手伝えばいいんですか?」

「ううん。僕片付けって苦手なんだよ。それで僕は戦力になれないから、全部任せるよ」

ちょっと何言ってるのか分からない。

つまりこれを私一人でやれと?

「あの、萌樹さん。ご飯食べさせてもらった手前言いづらいんですけど、何か他のことは…」

「22000円」

「はい?」

萌樹さんがまた急に訳のわからないことを言い出した。

「君がこの5日間で使った金額の概算だよ。宿泊費はホテルってわけでもないから漫喫価格で、そこに食費、風呂、洗濯なんかもまとめて、だいたいそんくらい。でも、ここの掃除をしてくれればただでいいよ」

マジですか。

私ここの掃除しないとお金取られるんですか。

「え、いやいや、まぁ泊めてもらったのはありがたいんですけど、もう少し温情を…」

『何?萌樹さんが頼み事なんて珍しいわね。いいわよ。なんでもドーンと言ってちょうだい!』

私が抗議していると、萌樹さんがスマホで録音された音声を流した。

それは、さっき確かに私が言った言葉だった。

「あの、えっと、ちょっ、え⁈」

半泣きで萌樹さんに縋り付くが、萌樹さんは満面の笑みだ。

「あれぇ?真凛ちゃんは、自分で言ったこともできない子だったのかなぁ。それとも恩知らずだったのかなぁ」

まずいハメられた!

どこか、どこかに逃げないと…


しかし、萌樹さんとはそれなりの付き合いだ。

この人から逃げられないことくらい知っている。

「…やってやるわよぉぉぉぉ‼︎‼︎‼︎‼︎」

私は後悔で泣きながら、ヤケクソで叫んだ。


〜〜〜


「てな感じだったのよ」

「あいつ、ほんと鬼畜だな」

やっぱり俺の勘は正しかった。

あいつに人の情なんてものはなかったらしい。


「それで、結局そこを片付けるために一週間通うことになったのよねー」

そんな昔話を語り終わった時、真凛は遠い目で微笑んでいた。

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