集結編Ⅲ ほうきの試運転と安全保障なしのジェットコースター
黒に言われて拠点のグラウンドにきました。
そのうち拠点の間取りも投稿したいなーとか思ってます。
「じゃあメンテナンスなんかがあるので、少し待っていてください」
公園サイズの拠点グラウンドにて。
何か大きめのものを研究室から持ってきた黒と白はそれを地面に置き、たかるようにいじっていた。
「ねぇそれ何?ほうきの新しいやつ?」
真凛が興味津々といった様子でそちらを覗いた。
「そうですよ。隊の備品として購入した最新型で、それに僕らが魔改ぞ…改良を施したものです」
「この前まで作っててね、すっごくはやくできたんだよ」
早く?
予想より改良に時間がかからなかったということか。
「へー。じゃあ今度さ、私のシミウスフラブス号も改造してよ」
「シミ…?あぁ、真凛さんのスケボーのことですね。分かりました。色々試してみたいこともあるので、今度やってみましょうか」
あいつ、ちゃっかり自分のスケボーの改造まで頼みやがった。
てかあのハイテクスケボーそんな名前ついてたのか。
黄色い猿って、速そーな名前だな。
「お前ちゃっかり自分のの改造依頼してんじゃねぇよ。…それで、メンテはそろそろ終わりそうか?」
「えっと、少し手直ししたいところがあったので、そこだけ直せば終わりです。あと3分くらい待ってください。…ところで麻義さん、飛行術式は使えますか?」
黒がほうきをいじる手を止めずに尋ねた。
「唐突だな。…まぁ普通に使えるぞ。てか俺はスキルの種類で生計立ててるから大概の基本スキルは使える」
「そうですか。…って、え?それって結構すごくないですか?浮遊術式は異能力代理演算装置でも使用できないですし、そのレベルのスキルをいくつもって相当大変なことだと思うんですけど」
まぁ、それらのほとんどは俺の暗黒時代に覚えたやつだからな。
そりゃあ相当大変でしたとも。
「いやー、それほどでもあるけどな」
もう二度とあんな苦労したく無いのも事実だが、俺の能力を認めて驚くなんていうレアキャラだ。
多少ドヤらせてもらおう。
「ねぇ白、あいつここぞとばかりにドヤってるわよ。普段は自分は普通だって言い張ってるくせに、やっぱり褒められたら嬉しいのねー」
「あさぎ嬉しいの?ハクも褒められたら嬉しいよ!ねぇねぇ、あさぎは他にどんなスキルが使えるの?」
…ドヤるんじゃなかった。
ここぞとばかりに煽りやがって、もうやだこいつ。
「えーっと、基本属性の魔法から甘いブドウを酸っぱいブドウに帰る魔法まで、大体何でもかな。あーでも、俺が使えるのは魔術系と呪術系だけで、超能力とか妖術とか操気術とかは使えないし、出力もあんま出ないんだけどねー」
「へー、びみょーだねー」
ひどい。
白のことだから多分悪意はないんだろうけど、ひどい。
自分で言っといて何だけど悲しくなってきたんですけど。
「…えっと、今メンテナンス終わりましたよ。麻義さん。こちらが今、隊にあるものの中で最新型のほうき、ルミナス20XXです」
黒が俺に渡したのは、やたらとシェイプで速そうなほうきだった。
それ白系で統一された高級感のあるデザインで、シンプルだが高性能なことはよく分かる感じだ。
「この前改造したはいいものの僕らはほうき免許持っていないので、試すタイミングがなくて困っていたんですよ。使えそうならそのまま使ってもいいので、ぜひ試してみてください」
「ハクとコクの自信作だよ!」
白がキラキラした目でこちらをみている。
そういや俺免許の教習とさっき壊れたほうき以外乗ったことないな。
まぁ改造されてても所詮ほうきだし、普通に乗れるか。
「それでこのほうきなのですが…」
黒の説明を聞きつつ、俺はほうきにまたがり…
「#@(*)¥;¥)€\(「%(『^(<#*)#*#)=;¥*『⁈⁈⁈⁇⁇‼︎‼︎‼︎」
ハンドルを捻ると、ぶっ壊れた速度でほうきは飛び出し、一瞬で視界には雲しか映らなくなった。
いや待て待て待てどういうことだよ!
何が所詮ほうきだ!
何がハクとコクの自信作だあァァァァァァァァ‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎
〜A few minutes later〜
「…どういうことだよ」
ボロボロで拠点まで飛行術式で飛んで帰ってきた後、きまずそうに視線を落としている黒に言った。
あの後、俺は200mくらい爆速で飛んだ後、多少我に帰ったところで急ブレーキを切った。
しかしそのブレーキの危機はバカみたいに良く、ほうきはその場に静止。当然俺の握力は耐えられずに、慣性に従って吹っ飛ばされた。
着地寸前で水流魔法で衝撃を緩和してギリギリ耐えることができたが、拠点の周りは森。
結果、俺は草まみれ土まみれのボロボロ状態で拠点まで戻ってきたわけだが…
「…えっと、このルミナス20XXは元々圧倒的な速さ、特に初速が評判のものなんですけど、購入して解体した時にあまり変わらない重量でより速い速度の実現が可能だなと思いまして…」
なるほど、予想以上の速度特化のやつに、さらに速度強化がされたってことね。
はやくできたってのはそういうことか。
「続けて?」
「それでねそれでね?改造し出したら楽しくなっちゃって、すっごく速くできたんだよ!なんと最高速度は350km/hまで出せるんだよ!さっきは多分90km/hは出てたんじゃないかな?」
白が無邪気に、そしてきゃっきゃと飛び跳ねた。
出たんじゃないかな?じゃねぇんだよ。
なんだよ最高速度スポーツカー級って。
「…うん、分かった。とりあえず俺はこれもう二度と使わないから。あとほうきが無い時は他でどうにかするからなる早で俺のほうきの修理頼む」
「…わ、分かりました。このほうきはひとまず封印しておきますね」
黒は俺からほうきを受け取り、格納術式にしまおうと…
「ねぇねぇ、それ私にも使わせてよ」
しまおうとしたところ、真凛がその手を止めた。
「はぁ?お前何言ってんだよ。さっきのやつ見てなかったのか?あのじゃじゃ馬なんてもんじゃないやつ乗りこなせるとでも思ってんのかよ」
「ハッ。あなたと一緒にしないでちょうだい。ぽっと出ニートとは経験の差が違うのよ。大丈夫、多分乗りこなせるから。ねぇだからそれ貸してってば黒!」
「えっ、いや、でも…」
真凛が半分格納術式に入っているほうきを引きずり出そうとしているが、黒がそれに戸惑うように抵抗している。
こいつあれか。人の静止も聞かず、人の失敗から学ばず、己の身の程も知らず、何も考えずにとりあえずやって、自分で痛い目見ないと何も学習しないタイプのバカか。
「お前そのへんにしとけよ。10歳かそこらの奴よりガキって大人として恥ずかしくねぇのかよ」
「恥ずかしくないわよ?」
こいつ、何のためらいもなく言い切りやがった。
「麻義さん、お取り込み中失礼します。中で草薙副隊長がお呼びです。対大型種班の人たちが帰ってきたのでプルファさんの治療ができるとのことです」
流石に黒が可哀想なので真凛を止めていると、いつからそこにいたのか雑務の式神さんが横から話しかけてきた。
この人めちゃくちゃ気が効くんだけど、徹底して裏方というか、気配消してるみたいでたまにビビるんだよなぁ。
「分かりました、今行きます。…ってことで俺は行くけど、お前もそのへんにしとけよ?」
「えぇー。私も乗りたいんですけど。あのすごい速さをこの身で感じてみたいんですけど」
こいつどこまで往生際が悪いんだ。
「あの、僕も虎鉄さんの武器の調子を見たいので行きたいんですけど…」
「えっ?コガネもいるの⁈じゃあハクも行くー!」
「お嬢様が行かれるのでしたら私もご同行いたします」
黒は真凛が手を離した隙にほうきをしまいきって駆け足で拠点の裏口の方に逃げるように向かい、白とノワールもそれについて行った。
「あれ?お前らも行くのか。じゃあ俺らは行くから、真凛は庭でも駆け回って存分に風を感じてくれたまえ」
「私は雪の日の犬じゃないのよ!みんな行くなら私も行くからちょっと待ってよぉ!」
真凛が駆け寄る足音を聞きつつ、俺は拠点の裏口のドアを開いた。




