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Chaos〈カオス〉 〜こんなバグった世界だが、俺は意地でも平穏に暮らしたい〜  作者: 身勝手な鶏
2章:井の外の海は広く、個性は遥か地平線まで渋滞する
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集結編Ⅱ 白いロリッ娘と黒いショタっ子

集結編1の数分後、地下研究室までやってきました。

『ガシャーン』

蛇腹式のエレベーターが地下に到着し、鉄臭いような薬品臭いような、色々混ざった匂いが漂ってきた。

目の前にはよくわからない機械が所狭しと並び、中には培養器みたいなものやでっかい顕微鏡みたいなもの、果てはアーケードゲーム機みたいなものもある。


「っはー、いつ見てもロマンのある部屋ねー。あ、久しぶりノワール」

真凛が正面の人物に向けて右手を挙げた。

周りを見ていて気づかなかったがそこには女性が立っていた。

ノワールと呼ばれたその人は20代程の女性で、黒髪黒目、ロングヘアにメイド服という、なんともこの部屋にミスマッチな格好をしていた。

「お久しぶりです真凛。また暇つぶしに来られたのですか?勤務時間中だというのに良いご身分ですね」

ノワールはお茶を運ぶ足を止め、呆れたような目で真凛を見た。

綺麗な顔してめっちゃ口悪いなこいつ。

「あいっかわらず口が悪いわね。もう少しオブラートに包むってことを覚えたらどうなのよ!」

「すみません。あなたのためにそれをする必要性が感じられなかったもので。…ところで、その小僧はどちら様でしょうか」

ノワールがこちらに目を向けた。

いや小僧て。


「あー。こいつは麻義。この前からうちで働いてる萌樹さんの弟よ」

「えっと、麻義です」

「そうですか。それで、本日はどのようなご用件で?冷やかしに来ただけなら可及的速やかにお帰りください」

ノワールは再び足を動かし、俺から視線を外した。

来て数秒で帰宅勧告されたんだが。

俺が何したよ。

「いや、あのー…ほうきの修理お願いしたいんですけど…」

「…そうですか。ではこちらへどうぞ」

ノワールは不服そうにお盆を片手に持ち替え、奥の方に右手を向けた。


ノワールに案内された奥の方に来てみると、そこはさらによくわからない機械が所狭しと並び、その近くでは2人、少年と少女が何やら作業をしていた。

「あ、まりんだ!まりん!今日はどうしたの?」

(はく)〜!久しぶりー!今日は私じゃなくて、麻義が壊したほうき直しに来たのよ」

2人がこちらに気づいたようで、謎の薬品もをいじっていた少女の方が真凜に抱きついた。

その(はく)と呼ばれた少女、いや、幼女(・・)は、まだ10歳にもなってない様子で、白髪で膝あたりまでの長さのあるロング、赤目、白衣の立派なロリッ娘だった。

(はく)、いきなり飛びつくのははしたないよ。すみません真凜さん」

2人のもう片方、(はく)と同年代くらいの黒髪黒目に白衣の少年がはくの首根っこを掴んで引き剥がした。

「えー良いじゃん別に!」

(はく)が少年の方を振り向き、リスのように頬を膨らませた。

うん、どこに出しても恥ずかしくない、堂々たるロリッ娘だ。


「それで、今日はどうしたんですか?…というかあなたは…」

「あぁ、俺は…」

「この人は小鳥遊麻義、萌樹さんの弟よ。ちょっと前からうちの班で働いているんだけど、それなりに便利なのよ」

真凛が俺の自己紹介を遮り、勝手に全部もっていった。

俺はあと何言えばいいんだよ。

「そうですか。話には聞いていましたよ。僕はこの隊で研究開発を担当している、西園寺黒さいおんじこくです。よろしくお願いします。で、こっちは同じく僕の双子の妹のはくとメイドのノワールです」

「ハクだよ!」

「ノワールです」

ハクは笑顔で右手を挙げたが、ノワールは無表情のままこちらを向いただけだ。

同じ自己紹介だというのにこの態度の差よ。


「…まいいや。ご紹介預かりましたちょっと前からここで働かされてるそれなりに便利な麻義さんです。よろしくな。…っと、じゃあ早速本題なんけど…」

「えぇっ⁈ちょ、ちょっと待ちなさいよ!」

真凛が驚いたように言葉を遮った。

「なんだよ、こう見えても俺は忙しいんだぞ?いちいちお前のバカに付き合ってる暇はねぇんだよ」

「ねぇ、それだと私はいつも忙しくなくて、いっつもバカなことばっかり言ってるみたいじゃない。って違くて、あなたこの3人見てみなさいよ。ロリッ娘にショタっ子にメイドよ⁈それで研究開発担当はこの人たちだけよ⁈このラインナップで何かおかしいのは思わないの⁈」

こいつはまだ俺がキャラに驚く様を期待していたようで、この異様な人々にノータッチでいることが不服らしい。

「なんでも何も、見た目は子供の天才なんてザラにいるだろ。東の名探偵とかS級5位とか風呂を20log√10数えて上がる博士とか」

「アニメェ!それ全部アニメキャラでしょうが!ここ現実よ⁈分かる⁈」

「分かるわ。あと、それはお前にだけは言われたくない」


世界革新後、権能や超能力の効果などで、天才と呼ばれる子供が比較的多めに産まれるようになった。

スポンジとように物事を吸収し、小学生程度の年齢で卓越した知力を有した彼らは世間でも注目されるようになり、結果、年齢に関する法が改定され、飛び級やらなんやらがしやすくなった。

それで、俺の大学にもそんな可愛げのない小僧がいたので正直違和感がないのだが…


「もっと危機感持った方がいいわよ!年齢なんていうこんなわかりやすい違和感なのに、スルーとかどういう神経しているわけ⁈意味わかんない!」

たまに常識欠落してるこいつは俺の反応はどうしても認められないらしい。

法改正なんて何も知らなそうなこいつは…もうスルーでいいや。

「お前ちょょっと話進まねぇからだまってろ。で、本題なんだけど」

「うぇっ⁈あっはい!」

俺を感心したような目で見ていた(こく)が、ハッとしたように返事した。

(こく)…だっけ?お前までどうしたんだよその反応は」


改めて言うが、俺はもう一部を除いてこの隊の連中、増して年下に敬語を使う気が起こらないだけで、決して俺が馴れ馴れしい系男子な訳では無い。

誰に言い訳してんだ俺は。


「いえ別に!ただ、違和感を持てというわけではありませんが、僕らに対して何も反応しない人は珍しい…というか初めてなもので」

あー。こいつほどじゃないが、まぁ大概の人は多少反応はするか。

「まぁ賢い子供には慣れてるからな。それにこんなご時世なんだし、年齢なんてキャラでしかねぇだろ」

「…そういうものですか。でもそう割り切って考えができる人ってなかなかいないと思うんですけど」

そんなもんだろうか。

これでも自己評価はどこにでもいる一般ピーポーなんだが。


「ねぇねぇお話終わった?それであさぎは何しにきたの?面白いこと?」

ただ話しているのを聞いているだけはつまらないようで、(はく)が急かすように俺の裾を引っ張った。

「あーそうそう、やあっと本題に入れる。さっきほうきが壊れちゃってさ、これなんだけど。直せそうかな」

俺は格納術式アイテムボックスから例の残骸を取り出した。

「わぁあ。ボロボロだねー」

「これは…かなり盛大に折れていますね。まぁ直せはすると思いますが、新調した方が良いと思いますよ?」

こくがほうきの断面をまじまじと眺めた。

新調したほうがいいって言うのは俺でも分かる。

だが…

「…これは俺にとって大切なものなんだ。出来れば直してやりたい」

「そうですか…。分かりました。では3日程待ってください。それで完全に修復できると思います」

「そうか。じゃあ頼むわ」

このほうきは、俺のなけなしのスキルの開発の報酬から出した¥274,000のオーダーメイドだ。

俺の大事な大事な、約4、5ヶ月分の生活費はたいて作ったお気に入りだ。

これは何としても修理しなくてはならない。


「ところで、修理は了承したのですが、その間の移動はどうするんですか?」

(こく)がほうきの残骸をノワールに預け、ノワールが奥の方へ持っていくのを眺めていると、(こく)が俺に言った。

そう言えばそうだ。

普段から相当使っているくせに何にも考えていなかった。

「あー確かに。…まぁしょうがねえからこれは有給…」

「あ、それならいい物があるよ!」

はくが俺の希望を一瞬で潰えさせるように言葉を遮った。

「ねぇコク、この前改造したあれ試してみようよ!」

「この前…あ、あれね。たしかにいい機会だし、試してみようか。じゃあ麻義さん。とつぜんなのですが表に出て貰ってもいいですか?」

こくが俺に話しかける横で、はくが奥の方に何かを取りに行った。

どうやら代用できる何かがあるらしい。

「いや俺はもう有給でも…」

「黙れ小僧!じゃあ行こうか!グラウンドでいいわよね?」

「はい。そこで問題ないと思います」

「え、俺の意見は?」


俺の意見は完全に無視されて話は進み、俺たちはグラウンドへと向かった。


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