集結編Ⅰ カルシウム足りてない男と水分以外足りてない女
編は変わりますが育成編と同じ日です
「えっ?!ポケセン無いの?!」
と、何も考えずに言ってみたが、よくよく考えたら普通に当たり前だわ。
蜘蛛狩りから帰った後、プルファをどうにかしないとと副隊長に相談したのだが、異界種まで扱っている動物病院は県内には無いらしい。
副隊長の知り合いにはいるらしいが、その人も現在和歌山にいるとの事。
どうしよう。
「あ、回復術は…」
「県内に使い手は何人かいると思いますが、人間以外も回復できる聖職者は限られると思います」
そう。
聖職者はその力量次第で成功率、守備範囲、効果が大分変わる。
基本的に人間の治癒をする聖職者が、動物ならまだしも異界種を治すってのはなかなか難しいだろう。
それこそ、100人に1人くら…
「うちの隊の回復役の吉夜隊員なら治せると思いますが、あいにく今は出払っていまして…」
…いだろ……いやいんのかよ。
てかまた新キャラか。
「え?いるんですか?」
「あ、そういえば麻義隊員はまだ対大型種班の人達には会ったことがありませんでしたね。まぁ麻義隊員は対異界門班なのであまり共闘することもないのですが…」
対大型?対異界門?
俺そんな話聞いたことないのですが。
「えっと、なんの話ですか?」
「え?最初に説明したと思うのですが」
「あー…」
すみませんその時シフト問題に直面してて全く聞いてませんでした。
そんでその後も面倒で録音聞いてません。
「すみません。忘れてしまって、もう一回説明いいですか?」
「ええ。構いませんよ」
さすが副隊長様。
他の奴らとは違って寛容でいらっしゃる。
〜A few minutes later〜
副隊長の話を改めて聞いた感じ、班とはこんな感じらしい。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
【対異界門班】
異界門への対応や未確認な異界種への対応、対象が多数の際などを担当する班。
〈班員〉
麻義、萌樹、真凜、咲楽、刻、毘彩
【対大型種班】
個人では討伐が困難な大型種や強敵に対し、隊の管轄の外部まで遠征に出向き、いわゆるパーティのように協力して討伐をする班。
〈班員〉
千歳、メイズ、吉夜、虎鉄
【開発・情報班】
アイテム開発や討伐、捕獲した異界種の研究、情報収集、バックアップを担当する班。
〈班員〉
白、黒、ノワール、弘零
【統括・補佐班】
他分隊や本部との交渉、予算管理、報告書確認、物資申請、シフト管理、計画管理、任務受理報告などを担当する班。(その全部副隊長がやってる気がする。)
〈班員〉
副隊長、己杏隊長、式神さん
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
とまぁざっくりとはこんなもんで、つっても状況に応じて他の班の仕事をすることもあるっぽい。
なるほど。
隊員16人って聞いていたのに組む相手真凜達ばっかだなーと思っていたが、そういうことだったのか。
てかあのバカ16人って言ってたのに17人じゃん。
誰か数えそびれたな可哀想に。
「にしても結構人多いっすね。まぁ守備範囲もそれなりの広さですし、むしろ少ないくらいなのかもしれませんが。名前覚えられるかなー…」
こう見えても学生時代、ほぼ全ての時間をスキルの勉強に費やしてほぼぼっちみたいな生活を送っていた俺だ。
クラスメイトの男子の名前すらほとんど覚えてなかった俺に、どうして十数名の名前なんて覚えられようか。
「そうですか?この程度の人数ならあまり覚えるのに苦もないと思うのですが」
「残念ながら苦手分野なもんで」
「副隊長がすごいだけだと思うわよ?私なんて、全員覚えるまで一年かかったんだし」
事務椅子に逆さまに座っていた真凛が言った。
こいつと同レベルは嫌だな。
ちょっと本気で名前覚えるか。
「ねぇ、なんか失礼なこと考えてない?」
おっと、顔に出てたか。
「ソンナコトナイヨー。…ところで、俺が会ったことない人ってどんな人達なんですか?名前覚えるためにも特徴は知っておきたいんですよね」
「ちょっと、棒読みじゃなくてちゃんと私の目を見て言っ」
「お前はちょっと黙ってろ」
都合の悪い話題はさっさとそらすに限る。
悪いが無視させてもらおう。
「そうですね。じゃあまずさっき話に出た吉夜隊員なのですが…」
「おっと副隊長、それを言っちゃあおしまいよ」
説明を始めた副隊長の肩に真凜が手を乗せた。
「なんでだよ。紹介聞かせろよ。」
「私はね、結構後悔してたのよ。そこまで大々的にでもないんだけど、なんで副隊長が麻義に出勤状況の紙見せるの止めなかったんだろうって。ネタバレはオタクの風上にも置けないわ。まぁ私は割とそういう動画とか見る派なんだけどね。あと、あんなに面白い人達なんだから、麻義が初めてあった時の反応見たいじゃない」
「見たいじゃないじゃねぇ。それ俺に何の得もねぇじゃねぇか。俺はネタバレ拒否派だけどこれは必要事項だ。邪魔はしないでもらおう」
「いいえここは譲れないわ。えぇ譲れませんとも。今月は追ってる漫画とラノベの新刊が出ないから刺激不足なの。あんたの反応でせいぜい楽しませなさいよ」
「こいつ、反応見て楽しむ為だけに紹介妨害しようってのか?!お前ふざけんなよ?!何が悲しくて俺がお前の欲求不満を対処しないといけねぇんだよ!」
「何よ、それくらい良いじゃない!そんなピリピリしちゃって、カルシウム足りてないんじゃないの?!」
「飲み物水道水だけで賄ってる無一文に言われたかないわ!」
「まぁまぁ二人ともそのへんで…」
『あ、あのー…』
この真凜との言い合いを副隊長が止めていると、急に木彫りの熊こと弘零が喋った。
「「何!?」」
『ヒッ、…あっ、えっと、長野南部のキュクロープス討伐、に出ていた対大型種班の人達…なんですけど、想定してたよりもかなり早く、片付いた…らしくて、あと30分くらいで帰って、来ると思い…ます』
「そうでしたか。キュクロープスは大きいだけに能力値も高いですし、それなりに手こずるかと思っていたのですが杞憂でしたね。では麻義隊員、紹介は彼らの口から直接ということで」
なんというバッドタイミングだろう。
横でニヤついている真凜は…後で吊るそう。
「じゃあプルファの治療も大丈夫そうですね。だとすると、先にほうきの修理した方がいいか」
俺は格納術式から壊れたほうきを取り出した。
「これは…なかなか派手に壊れてますね。修理費は経費で落ちますので、写真付きで報告書に記載しておいて下さい」
「分かりました。それで、この隊の中で修理できるってそこのバカから聞いたんですが、どこに持ってけばいいんですか?」
「ちょっと、バカって誰」
「あぁ、それならこの建物の地下に研究室があるので、そこに持っていって頂ければ直せますよ」
「副隊長もナチュラルに続」
「分かりました。…でも、そういえば地下行きの階段とか見た覚えないっすね。2階行きの階段の近くにもなかったような…」
「ねぇ無視しないでくれな」
「研究室は特性上、階段だと不便なことも多いのでエレベーターなんですよ。拠点の端の方にレトロなスロットマシンがあるので、そのレバーを引くとそこの床が動いて地下に行けますよ」
「俺の、俺の、俺の話を聞けぇ!」
「レトロなスロットマシンって、なんでそんな面白い入り方なんですか?」
「元々は萌樹隊員が言い出したのですが、それを白隊員がえらく気に入りまして。それはもうすごい気合いで作っていましたよ」
「聞こえますか…今、あなたの耳に…普通に呼びかけています…」
「またあいつですか。ほんと勝手勝手だなあの暴君。じゃ、ちょっと研究室に行ってほうきの修理頼んできます」
俺は再び壊れたほうきをしまい、部屋を出ようとドアの方へ…
「ちょっと待てぇい!!」
「なんだようっさいな!」
さっきからごちゃごちゃ言っていた真凜だったが、いい加減我慢できなくなったのか叫び出した。
「さっきから私ずーっと話しかけてたんですけど。どうして無視するの?!人としてどうよ!」
「副隊長がなんか真凜の言葉遮って答えたから、まぁノリで」
「すみません、ここで無理やりにでも続けないとまた話が進まなくなると思いまして…」
正直だな副隊長。
「まぁそれはもういいわ。それより、私も研究室ついて行くわ」
「は?なんで」
こいつのスケボーみたいなやつは別に壊れてなかったはずだし、特に用はない気がする。
「あなた、まだ研究室の人達とは会ったことないんでしょう?だから、コミュ力終わってるあなたの為について行ってあげようっていう真凜様の粋な計らいよ」
真凜は勢いよく椅子から立ち上がり、前髪を払った。
まぁ確かにそれはありがたいが、こいつがそんな善意で行動しないことを俺は知っている。
「本当は?」
「報告書が面倒で。現実逃避?」
「そんなこったろうと思ったよ」
俺は真凜を無視して、部屋のドアを開いた。
「あっ、ちょっと待ってよ!」
真凜はこっちに駆け寄り、俺が閉めようとしたドアの縁を掴んだ。




