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Chaos〈カオス〉 〜こんなバグった世界だが、俺は意地でも平穏に暮らしたい〜  作者: 身勝手な鶏
2章:井の外の海は広く、個性は遥か地平線まで渋滞する
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育成編Ⅱ ワゴン車大の蜘蛛と優位性による快楽

気乗りしなくて投稿遅れました。

育成編Ⅰの続きです。

プルファを俺の指示に合わせてソロで戦わせ始めてから約10分。


やはりこいつには天候系能力に高いポテンシャルがあった。

まぁ天候系といっても天気そのものを変えるわけではなく、対象の周りにミニ雲を発生させるような感じだが。


今のところ確認できたのは

雨、風、雲、霧、雪、(ひょう)、竜巻、雷の8つ。


中でも竜巻は自然のものと遜色(そんしょく)ない威力だった。


また、他の能力とのコンボで炎の竜巻やブリザードなんかもできていた。


うん、改めてこいつ多分相当なバケモンになるわ。


「キュイ?」

クモの死体の山の上に悠然と立つプルファが俺の視線に気づいたのか、こちらを向いて疑問詞を浮かべた。


こいつあれか。「あれ?俺またなんかやっちゃいました?」系の天然無自覚無双キャラか。



『ジリリリリリリン!ジリリリリリリン!』

無垢な目で俺を見つめるプルファを呆然と眺めていると、突然俺のスマホが鳴った。


「ん?非通知……もしもし?」

電話の相手は非通知だったが、国内の電番ではあったのでとりあえず応答した。


『…あっもしもし、小鳥遊麻義さん…ですか?天雨弘零…です』

「なんだ弘零か…待てなんでお前俺の番号…いや、そっか知ってんのか」

『…はい。あっすみません、嫌でしたか?…嫌でしたよね、すみません腹切って詫びます』

弘零が急に饒舌になって言った。

こいつ、たまに過剰にネガティブになるんだよな。


「いやそこまでしなくていいから。んで、本題は?」

『あっはい、さっき送られてきたデータ、なんですけど…恐らく、これは大蜘蛛という危険度 崩橙級オレンジランクの、妖怪の一種…だと思います。…見た目や性質…から判断すると間違いないと思う…のですが、データより少し小さめ…です。それと、群れで生息する、というデータは無い…ので、もしかしたらそれらは子供で、親の大蜘蛛…がどこかにいる…のかも、しれません。あっいなかったらすみません』


なるほど。つまりこいつらは取り巻きで、ボスがどっかにいる、と。


「で、見つけたらそいつらも狩ってこいと?はぁぁ面倒くせぇなぁ」

『あっすみません。でも…もしいたら、お願い、します』

「了解。多分真凛が先行ってるから合流するわ」

『へ?別れたんですか?…いや、知っているわけでは無い…ですけど、なんとなく何があったか…分かりました。夏目さんは、恐らく叫びながら、訳もわからず暴れてると思う…ので、早く行ってあげて、ください。じゃあ切ります…けど、ぜひ気をつけてください』


そう言って弘零は電話を切った。

あいつ、常識人というレア枠ではあるんだけど喋り方がだんだんじれったくなってくるんだよな。


「てことでプルファ、こっからちょっと行ったとこにボス蜘蛛がいるっぽいんだけど、行けるか?」

「キュイ!」

プルファは「うん!」とでも言うように返事した。


相変わらずこいつはやる気に満ちてんな。

流石に飼い始めて数日じゃあペットは飼い主に似ないのか。


「んじゃ、さっさと行って片付けて帰るか。真凛が行った方向に向かうぞ。多分ボス蜘蛛はそこにいる。道中は、俺は前と上のやつ殺るから、プルファは後ろのやつ頼んだ」

「キュゥイ!」


〜A few minutes later〜


「びゃぁぁぁぁぁぁぁ‼︎‼︎‼︎%あk#(¥gf「£(]@gd¥*¥m€%+=^;’g’’€¥^:/_;…-

‼︎‼︎‼︎‼︎」


クモを狩りながら森を走っていると、前から聞いたことのある声の、聞いたこともない悲鳴が聞こえてきた。

さらに走るとそこにではやはり真凛と、ワゴン車サイズのクモが戦闘していた。


虫に対して真凛なら有利相性だし、本来遅れをとることはないはずなのだが、半狂乱状態で暴れるように乱射している真凛の電撃はボス蜘蛛に全く当たっていない。

一方、近づいただけで感電する暴走スタンガンにはボス蜘蛛も安易に近づけないようで攻めあぐねていて、結果両者共にジリ貧になっている。


地味に面白いからもうちょい見ていたいな。


「キュウイ!」

肩のプルファが急かすように鳴いた。


「はいはい分かりましたよ。おーい暴走車ー、真打登場だぞー」

「や、やっと来た麻義プルちゃぁんんん!!!!助げでぇ、私もうここやだぁクモ多いデカいィ!!」

真凜は涙目で騒ぎながらこっちへ全力疾走してきた。


こいつ、能力は俺以上のはずなのにどうしてこう…。


「だからすぐ縋り付くな!お前は一旦落ち着け!そんで落ち着いた後に手伝え!」

「こんなとこでどう落ぢ着げっで言うのぉ!!私は無理だがら麻義とプルちゃんでやっでぇ」

「お前俺に仕事を押し付けるとはいい度胸だな!腐っても一応は第一級なんだろ!だったら少しは活躍したらどうだ階級詐称者!」

「もうなんとでも言って!!今の私が第一級レベルで戦える訳ないじゃない!!さっさと片付けてくれればなんでもいいからそいつはお願い!!」


こいつ意地でも働かねぇ気か。

仮にもプロなら不利相性の敵にももっと精力的に立ち向かおうとしたらどうか。


俺は目を回しながら泣き喚く真凛を見ながら、俺は格納術式(アイテムボックス)からほうきを取り出した。

束縛(バインド)、よし。これでほうきを上昇させて、と。じゃあ真凛、さっさと落ち着いて参戦しろよー」

「はっ⁈待って何急に高い怖い落ちるぅぅぅ!!!!」

俺は真凛をほうきにくくりつけ、そのまま上空に飛ばして静止させた。

これなら真凛も多少は落ち着くだろうし、そのまま冷静になったらいつもの極電磁大砲(フレミングカノン)でもぶち込んでくれればこの程度のクモにとどめを刺すくらいの火力は出るだろう。


「よし大蜘蛛とやら。急だが早速本戦と行こうか。プルファ、俺のスタイルを教えてやるからよく聞いとけ?」

「キュイ!」

プルファは俺に返事するように鳴いた。



「まず、俺はあんま戦闘のセンスが無い。まともな経験もないし、焦るとだいぶ演算性能が下がる。だから平常時はガチバトルになったら多分瞬殺されるんだよ。ここまで分かるか?」

「キュイ!」

自分で言ってて悲しくなってきたのだが、その説明に対しプルファは全く変わらない声のトーンで返事した。


しかしそうこうしてる間にも、ヘイトをこちらに向けた大蜘蛛はすごい速さでこっちに向かってきている。


「…えっと、つまり俺に許される戦闘スタイルは弱点をついた一方的かつ速攻の討伐だ。相手が格上でも戦い方しだいではそこまで強くないんだよ」

俺は、まだ距離がある大蜘蛛はとりあえず無視して説明を続けた。


「例えばこういうタイプの虫系のやつは、体の表面が硬い外骨格に覆われてるから物理攻撃、特に打撃系や圧殺系は通りづらい。あとは力が強いから拘束系も効き目はイマイチだし、落とし穴とかはなんの効果もないだろうな。だから多分効果が高いのは火、電気、毒、光線、関節への刺突や斬撃なんかだろうな。そう、例えばこういう感じでっ!」


俺は無詠唱で大蜘蛛へ向けて過熱光線ヒーターレーザーを放った。


…しかし、大蜘蛛は意外な瞬発力を見せてクモ特有の立体機動力で回避。

即座に毒を飛ばして攻撃してきた。


「なっ?!ちょっ待っ危なっ!靴の先ちょっと溶けてんだけど?!」

俺は持ち前の反射神経でギリギリかわしたが、地面にはねた毒が靴の先に当たり、その部分に少し穴が空いた。


「アハハハハ!恐ろしく早いフラグ回収、私でなきゃ見逃しちゃうね。先輩面でプルちゃんに戦い方教えといてあっさり反撃されてんじゃない!プルちゃんも教えるのがそんな反面教師で可哀想ねー」

もうある程度落ち着いたのか、上で真凜が笑った。

あのクズはどんだけ変わり身早ぇんだ。


「お前ふざけんな?!なんもやってねぇ奴が人の事笑うなクズが!落ち着いたなら降りて戦え!!」

「いやいや何言ってんの?落ち着いたって降りて戦り合うのは無理だから。今は安全圏だから落ち着けてるだけであって、降りたらまた私泣かされるわよ?じゃあ私は上から取り巻き処理でもやってるから、まぁ、うん。ガンバ!」

「ガンバじゃねぇよクソニート!この俺がこうして働こうとしてんだぞ!お前この前ボス討伐ボーナスのためにじゃんけんしてまでボス倒そうとしてただろ!とりあえず降りてこいやコラァ!てか、自発的に降りねぇなら無理矢理にでも降ろすぞ!束ば(バイン)…」

「キシャア!」


…あ。


俺が真凜諸共ほうきを落とそうとスキルを詠唱していると、大蜘蛛がほうきに向けて糸を放った。

糸は寸分たがわぬエイムでほうきにくっつき、真凜諸共地面に引きずり落とした。


『バキッ』

「キシャァァァ!!!!」

「ギャァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!」

大蜘蛛は鈍い音共に落ちた真凛に向き直り、威嚇するように鳴いた。

それなのに何故か無傷そうな真凛は再びけたたましい悲鳴を上げ、全速力で逃げ出した。


「アハハハハハ!!いい気味だなクズが!安地から逃げ惑う哀れなやつを見るのは気分かいいなぁ!」

「嫌ぁぁぁ!なんでよ!この蜘蛛は私に恨みでもあるの?!待ってこっち来ないでぇぇ!!!!助けてぇ!!麻義いぃぃぃ助けてぇ!!」

「それが人に物を頼む態度かクソ女。助けてくださいくらい言ったらどうだ」

「こんのクソ鬼畜この状況で何言ってんの!!仲間危機回避は最優先事項でしょう!!あんた一回週刊少年誌読んできなさいよ!!ギャァァァ!!へールプミィィ!!!!」

機動強化(スピードブースト)!」

俺は、面白そうだったので大蜘蛛に素早さ強化のバフをかけてみた。


「何やってんだお前ェっ!!!!ギャアァ来てるぅ‼︎蜘蛛来てるってぇ!!麻義様ァァ!!!!お願いなので助けてくださいぃィィィィ!!!!」


あぁ哀れ。

なんか今なら権能効果120%くらいいけそうだわ。


「アハハ良い様だなぁ!天床スカイフロア連射・昇天階段スカイステアズ!ほらそこ登れ!」

俺は魔術の階段を生成し、真凜が上空に逃げられるように誘導した。

「…っあなた覚えときなさいよ?!!!ギャアァ!!来るっ、蜘蛛っ、待って待って来ないでぇぇ!!!!」

真凜は全速力で階段を駆け上がるが、当然大蜘蛛はそれを追っていく。

よし、完全に計画通りだ。


「部分解除!」

俺は大蜘蛛の下の階段を消し、大蜘蛛を地面に落とした。


「よし、気を取り直して、プルファ!今度こそ俺の戦い方を教えてやろう!」

「キュウイ!」


「目標討伐時間は10分!それじゃ、さっさと終幕といこうか!」



数時間後、このパッと思いついた決め台詞をドヤ顔で言ったことを真凛によって他の隊員に広められ、刻たちにいじり倒されて死ぬほど後悔することになることを、この時の俺はまだ知らない。


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