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Chaos〈カオス〉 〜こんなバグった世界だが、俺は意地でも平穏に暮らしたい〜  作者: 身勝手な鶏
2章:井の外の海は広く、個性は遥か地平線まで渋滞する
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マスコット編Ⅳ 種名に対するクソ雑なネーミングセンスと個体名に対する個性爆発のネーミングセンス

マスコット編Ⅲの続きです。キリが悪くて結構長くなりました。

「ただいま帰りましたー」

「ただまー」

異界門ゲート対処から数分後、刻を呪符で帰してしまったので俺たちはほうきで拠点まで帰ってきていた。


「ん゛ー!!ん゛ん゛ーーー!!」

口にガムテを貼られ、椅子に縛り付けられている刻が聞き取れない叫びをあげた。


拠点に戻ったら確実にしばかれるだろうと思い、あらかじめ千歳に刻を止めておくよう言っていたからだ。


「お疲れ様でした。言われた通り刻さんは縛り付けておきましたよ。…ところで、その頭の上に乗っているのはなんですか?」

俺の上の方をに視線を向けながら千歳が言った。

ちなみに、異界門ゲート対処に行く前にいなかったのは別室にいたからだ。


「実は(かくかくしかじか)あってさ」

「なるほど、それで刻さんは狂犬みたいになっているんですね」

「ん゛ん゛ーーー!!!!」

その狂犬はまだ騒いでいる。

いい加減うるさいのだが。


「それで、それはなんという生き物なんですか?」

「あー、そういえば調べてなかったわ」

そう言って俺はスマホを取り出し、お馴染みGoggleレンズでもどきを検索した。

「えーっと……オコジョ?」

「違うと思います」

ですよねー。


検索結果を見ると、そのほとんどがオコジョで、他のやつも似てはいるがなんか違う感じのやつだった。

「あれ?検索で出て来なかったの?でもそれなら弘零(ぐれい)に聞けばわかるんじゃない?」

真凛は俺の頭からもどきを抱き下ろし、木彫りの熊の前に持っていった。

「え?それで見えてんのか?」

「その熊は一見ただの置物ですが、スピーカーにカメラ、マイク、プロジェクター、AIスピーカー、Wi-Fiルーターなど、とても便利な機能が沢山ついているんですよ」

何それすごい。うちにも欲しいなこれ。


『…あっすみません、検索結果該当ありません…でした。おそらく…新種か、未確認の幼体とか…だと、思います』

俺がネットで似たようなスピーカーがないか探していると、木彫り熊を通して弘零が言った。

ワンチャン新種かなとは思っていたが、やっぱりか。


異界門(ゲート)によってさまざまな生き物が流入して来るこの世界では、当然次々と未確認の生き物が出てくる。

そして、その全てを一々新種申請するほど皆暇ではない。

なので新種の生物というのは、まぁザラではないが珍しくもないような存在になっていた。


「やっぱり新種か。じゃあ種名はとりあえずオコジョもどきでいいんじゃねぇか?」

「あなた何寝ぼけたこと言ってんの?そんな雑な名前私が許さないから」

真凛が呆れたように言った。


「別に寝ぼけてねぇよ。それに、生物名なんて雑な名前のやつめちゃめちゃあるんだぞ?たとえば、トベアリトゲナシトゲトゲとか、ニセクロホシテントウゴミムシダマシとか、東京にいない上にネズミでもないトウキョウトガリネズミとかだな」

「…この星の人達のネーミングセンスは一体どうなってんの?」

うん。それは激しく同意するわ。


「だから種名なんて適当でいいんだよ。個体名だけ良いやつつけてやれば十分だろ」

「キュゥイ!」

肯定するようにもどきが鳴いた。


「そういえば、その子の名前は決めたんですか」

千歳が俺に尋ねた。

「いやまだ決めてねぇよ?でもとりあえずもどきって呼んでるから俺的にはそのままでいいんだけど…」


「「いいわけないでしょう!」」


真凛と、いつの間にか口のガムテを剥がしていた刻がハモった。


「あなたさっき自分が言った言葉一瞬で無視すんじゃないわよ!『もどき』のどこがいい名前な訳⁈」

「もう私の使い魔にするのは諦めてあげるから名前だけはつけさせてくれない?ていうか、あんたが名付けするのだけは絶対にやめてあげて」

「えぇ〜、名付け私がしたいんですけど」

「何、またやろうっての?」

「貴女方もう少し落ち着きを持って生活したらどうですか。あとここで戦うのは拠点が壊れるのでやめてください」


落ち着きを持ったほうがいいというのは俺も同意見だが、こいつらにそれは無理なんじゃあなかろうか。

ところで、俺のネーミングセンスそんな悪い?


「いや、これはもうこの子に決めてもらいましょうよ。みんなで名前を紙に書いて出し合って、この子が最初に触れたやつがこの子の名前になるってルールでどう⁈」

「…まぁいいよそれで。負けても文句言わないでよ?」


勝手にひとのペットの名前決めるゲーム開催しないでくれるかな。

まぁ絶対にやめてあげてとまで言われて名付けるほど俺も強情じゃないからいいけどさ。


「え?それ俺たちもやんの?」

「あんたは不参加決定だけど、他の今いるメンバーは強制参加ね」

あ、そうですか。

俺には参加権限すら与えてもらえませんか。


「なんだ?なんか面白そうなことやってるな。私も混ぜるのだ!」

「また今日も賑やかだな。真凛、今回はどんなアホなことやろうってんだ?」

一体どんな地獄耳なのか、急に咲楽と毘彩が部屋に入ってきた。


「よしよし今いる人は皆来たわね。あ、副隊長。なんか自分は関係ないみたいな顔してますけど、副隊長も強制参加ですからね」

「へ?私もやるんですか?」

今まで黙々と仕事を進めていた副隊長が戸惑うように言った。


「当然ですとも。さぁ…闇のゲームの始まりだぜ!」


こうして、ひとのペットの名前を決めるゲームが勝手に始まった。


もどきは約2名の異常な気迫を感じ取ったのか、少し腰が引けた状態でその様子を俺の頭の上で眺めていた。



〜A few minutes later 〜



「それじゃあ…ゴホン。見せてもらおうか、隊員たちのネーミングセンスの有無とやらを」

10分ほどのシンキングタイムの後、真凛少佐が終了の合図を言った。


「ふふん、これはもう私の勝ちだわ」

「へぇ、いい自信じゃない。私だって、そりゃあもうすごいの考えたわよ」

「貴女方真面目に考えたんでしょうね。不安しかないのですが。」

「無難なのですが、こんなので良いのでしょうか」

「いいんじゃねぇか?俺なんか開始10秒で思いついたやつそのまま書いただけだぜ?」

『…あの、それもどうかと思う…のですが』

「zzz…」


終了後、各々が自分のものの出来について話し出した。

まぁ咲楽は速攻で書いてまだ寝ているが。


「じゃあせーのでパネル見せてね。せーの!」


真凛の掛け声と同時に各々が自分の書いたパネルを見せた。

ちなみに、このパネルは何故か真凛が1ダースセットで持っていたものだ。


そして、それぞれがつけた名前はこんな感じだった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


真凛  悟

刻   小鳥遊・プルファシュネ=フラウミッヒ三世

千歳  ファーコート

副隊長 小太郎

弘零  ケセランパサラ

毘彩  毛玉

咲楽  てんぷら


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


…なんという個性の大渋滞


もうどっから突っ込めばいいんだよ。



「…じゃあ、刻から見ていこうか」

「ちょっと、なんで私をとばす訳?至って普通のジャパニーズネームなんだし問題ないでしょう⁈」

真凛が不満そうに言った。

だってなんか、こいつのやつはあんま深掘りしちゃいけない気がするんだが。


「問題ない、か。じゃあお前、こいつの毛の色を言ってみろ」

俺はもどきを掴み上げて真凛に向けた。

「白でしょ?」

「じゃあ、目の色は?」

「…碧眼ね」

「お前が考えた名前は?」

「………悟」

「もういいな?チキンレースはやめてもらおうか」

「……………はい……」


真凛はだらだら冷や汗をかきながら顔を伏せた。


「よし次、刻の…えっと…」

「小鳥遊・プルファシュネ=フラウミッヒ三世」

刻がすらすらと言った。

「…なるほどな?うん。…まず情報量多くないか?」

なんだこの大層な名前。このちっさいやつが背負う名前じゃねぇだろ。

「そう?こんなもんじゃない?これでも響きがいいやつをチョイスしたつもりなんだけど」

「いやそういう問題じゃなくて。てか大体、なんで三世なんだよ」

「萌樹さんに聞いたんだけど、あんたん家うさぎと猫飼ってたんでしょ?だから小鳥遊家の三代目で三世」

「…そうか」

もう何言ってもなんともならない気がしたので、とりあえずこいつはスルーすることにした。


「じゃあ千歳は後でまとめて突っ込むとして、副隊長の小太郎…はちょっと古風過ぎやしないっすかね」

「そうですか?とてもピッタリないい名前だと思ったのですが」

「「おじさんは黙ってて!」」

刻と急に起き上がった真凛が口を揃えて言った。

「はっ、はい。すみません…」

狂犬2人衆の気迫に押され、副隊長も顔をふせて黙ってしまった。

…お気の毒に。


「はい次、弘零か。…これって日本のふわふわした妖怪の名前だったか?」

『あっはい。大体はそんな感じ…ですね。でもケセランパサランだと、あまり名前っぽくないので、こうすればいいかな…と、思いまして』

流石は比較的常人枠。割とまともなネーミングだ。

こういうのでいいんだよこういうので。


「じゃああとは…クソ雑ネーム三人衆だな」

ファーコートに毛玉にてんぷらとか、絶対俺の方がまだマシだろう。


「雑ですかねぇ。自分では満足しているんですけど。」

「俺のはまぁ10秒で考えたやつだからな。雑っちゃ雑だろうよ」

「私はからあげよりもとり天の方が好きなのだ」


「駄目だこいつら…早く何とかしないと…」

真凛が呆れたようにフリップを見て言った。

マジでお前が言うな。


〜A few minutes later 〜


「全員出たわね。じゃあこれを床に丸く並べて…」

それぞれがそれぞれを批判したりなんなりした後、すっかり復活した真凛が再びしきった。

それに応じて、皆床にフリップを置いていった。


え、マジでこん中から決まんの?

俺のペットの名前、下手したらファーコートとか毛玉とかになんの?


「よし、じゃあ麻義、そのもどき(仮)ちゃんを真ん中に置いてちょうだい?」

「…分かったよ」

俺はまだ頭の上の乗っていたもどきをフリップの円の真ん中に下ろした。

なんか、召喚魔法陣みたいだな。


「それじゃあ、選んでご覧?一番気に入った名前をね!」

真凛が両手を広げてドヤ顔した。

これはあれだ。勝ちを確信してる顔だ。


「キュイ?」

もどきは状況が分かっているのかいないのか、疑問詞っぽい声で鳴いた。

しかしその後、吟味でもするかのようにそれぞれのフリップを嗅ぎ回っている。


頼む、せめて小太郎かケセランパサラにしてくれ。

超長ネームとか版権ネームとか毛皮服ネームとか揚げ物ネームとかド直球ネームとか、獣医にでもいこうもんなら俺はどんな目で見られるんだ。

いやそれは「もどき」でも同じか


できればケセランパサラ。

じゃなかったら小太郎にしてくれ!

もう古風なのは目をつぶるから!


「キュイ!」


俺が目を瞑って信仰する某水の女神に駄目元で祈っていると、もどきが「これ!」とでも言うように鳴いた。


おそるおそる目を開いて見た先ではもどきは、左右の足で別のフリップを踏んでいた。


「あれ?これは…どっち?私の?それとも弘零の?」


もどきが指したのは、刻のやつと弘零のやつだった。


どうすんだこれ。


「よし、じゃあケセランパサラでいいか」

「良くないでしょ。ほら、私のやつの方がちょっと深く指してるよ?」

『あの、僕はどちらでも、いい、んですけど…』


弘零が弱気なのに対し、刻は絶対に譲る気がなさそうだ。

いや、そこで弱気になられると困るのだが。


「じゃあ、二つ合わせたらどう?ま、私としてはまだ悟が良いと思ってるんだけどね」

真凛がとんでもないこと言い出した。

「は?何言って…」

「そうすると、小鳥遊・プルファシュネ=フラウミッヒ=ケセランパサラ三世か。良いんじゃない?私はそれで文句ないけど。」

『あっ僕も、それで良い、です…』

マジか。

え、反対派俺だけ?


「じゃ、命名小鳥遊・プルファシュネ=フラウミッヒ=ケセランパサラ三世で決定ね。ハッピーネーミーング!」

真凛が謎に祝いの声をあげた。

「嘘ぉ。決定?そのクソ長い名前で決定?」

なんだこのトチ狂った名前。名前って呼ぶのをわかりやすくするためのもんじゃないのか?


「何、文句でもあるの?」

相変わらず喧嘩腰で刻が言った。


「いやあるよ。これ誰か知らん人に『わぁあ、この子名前なんて言うんですか?』とか聞かれたら、俺いちいち『小鳥遊・プルファシュネ=フラウミッヒ=ケセランパサラ三世です』って言うの?俺どんな目で見られんの?

…とか言うと、また怒られそうだから言わない」

「ねぇ、全部口に出てんだけど。そのくらい面倒くさがらずに言ってくれるかな⁈」

おっとまた口に出てたか。

「それなら、本名が小鳥遊・プルファシュネ=フラウミッヒ=ケセランパサラ三世で、略称プルファとかプルちゃんとかでいいんじゃないの?いちいちその名前呼ぶのとか多分だんだんうざったくなってくるわよ?」

いやプルちゃんて。

なんだそのスライムみたいな名前。


「いいんじゃねぇか?俺そのやたら長え名前呼びたくねえよ」

「そうですね。名前は公正なジャッジの元なので文句はありませんが、呼び名は別であった方がいいと思います。…私としては小太郎も良かったと思うのですけどね」

副隊長結構自分のネーミング自信あったのか。

この人、ほんとにどっか残念だな。


しかし、マジでこのクソ長ネームに決まっちゃったよ。

…ま、略称もできたし別に良いか。


「…じゃ、お前の名前は今日から小鳥遊・プルファシュネ=フラウミッヒ=ケセランパサラ三世。略称プルファだな。頑張って強くなって俺の手伝いしてくれよな。お前、一応妖怪か魔物だしな」

「あ!あなたペット飼うなんて手間なことするなんてらしくないと思ってたら、やっぱりそんなこと考えてたのね!あなたバカなの?こんな小さくて可愛い子が戦える訳ないじゃない!」


「キュア!」

真凛が言った直後、プルファがとんでもないタイミングでとんでもないことをした。


「「「「「「『「は?」』」」」」」」

それを見た隊員全員が、一斉に声を漏らした。


何があったかと言うと、プルファが鳴くと同時に小さいが火を吐いた。

色は白に近い青。

科学的には最高クラスに高温な色だ。


「…よしプルファ、お前はきっと強くなる。切実にこれからよろしくな!」

俺はプルファを持ち上げて目を見た。

「キュイ!」

そしてそれに応えるように、プルファが鳴いた。


「へぇ、意外と強そうじゃねぇか。もうちょい強くなったら一回戦ってみてぇな!」

「そうだな、私も一度戦ってみたいのだ!こいつうまそうだしな!」

「やっぱりその子私が欲しかったんですけど。強くて可愛いなんてもう最高じゃない!」

「なんで、どうしてあんたが真っ先にパーフェクトマスコットゲットしてんの⁈その子本当は私の子だったはずなんだからね?その子はくれてやるんだから私のマスコット探し手伝いなさいよ⁈」

「また意外と面白そうな子だったんですね。知能も高そうですし、教えたら色々覚えるのでしょうか」

「あの、そろそろ仕事を…」

『有角種、白い体、火を吐く胴長の生き物、この子もしかして…』


騒がしいな相変わらず。

何人か不穏なこと言ってるし。


しっかし、こいつほんとになんなんだろうな。

俺はデスクで座っているプルファに視線を落とした。


プルファは楽しそうに、騒ぐ隊員たちを眺めていた。


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