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Chaos〈カオス〉 〜こんなバグった世界だが、俺は意地でも平穏に暮らしたい〜  作者: 身勝手な鶏
2章:井の外の海は広く、個性は遥か地平線まで渋滞する
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マスコット編Ⅲ 大喰らいオコジョもどきと不毛な癖に壮絶な異能バトル

マスコット編Ⅱの数分後です。


~A few minutes later ~


「金!金が無い!待てこの金欠で白黒ブンとアリクイはきついって!あ、待て城が!城やばい!お、よっしゃ白ブン逝った!あ、待てちょっ待て城がぁー!」


同じステージに挑むこと3回。ボス1体目は倒したがそのまま城が削られて負けた。


「ッスゥー…」


もう流石に萎えたので、俺は一呼吸おいてそっとゲームを閉じた。


「~~~~!~~~~~!!」


いやしっかし、結構長引いてんなあいつら。

刻は相変わらず当たらない魔法擦ってるからだとして、真凛は何手こずってんだ?


「~~~!~~~~~~!!」


あぁ、取り巻きの中に土属性のやつがいんのか。どおりで沼ってるわけだ。


「~~~~~!~、~~!~~~~!」


あと10分くらいはかかりそうか。それじゃあそれまで暇だな。

うーん、何してよう。


「!!!!~~~~~~~!!~~!~、~~~~!……~~~~~!!!!」


「だぁもううっせえなぁ!」


さっきから用水路に挟まってる何かは、よく聞き取れない籠った声で騒いでいる。

まぁ出られないんだろうし当然か。


「…しゃあない。術式合成、魔術・岩、呪術・過硬化(ハーダー)×加速。発動、超加速打釘(ファスター・パイルバンカー)


俺は用水路の蓋を砕き、挟まってた生き物の尻尾を掴んで引っ張り出した。


「…オコジョ?」


逆さで放心状態になっているそれは、全身真っ白な毛並みに長い尻尾と胴の、いつか動物番組で見たオコジョとそっくりなやつだった。

…しかし、本来真っ黒のはずのその目は青く、頭には小さいが角が生えていた。


「何だモンスターか」


俺は討伐者としての義務を全うすべく、もはや身動きが取れなそうなそれに向けていつもの超加速飛石槍(ファスターランスバレット)を…


「キュゥイ!キュイィ!」


…撃とうとすると、短い前足を懸命に振って「やめてー!」とでもいいたげに訴えかけてきた。


「…まぁいいか。このサイズなら大して脅威にならんだろ」


流石にこれをぷちっとやるのは心苦しいので、俺は尻尾を掴んでいた手を離した。

元々逆さまに掴んでいたのだが、そのオコジョっぽいやつは華麗に身を翻して着地できていた。


「そのまま安置まで逃げろよー」


身動きが取れるようになったオコジョもどきは、そのまま一目散に走り出した。


しかし、そのまま逃げるかと思っていたが、ちょっと離れてから何故か足を止めてこちらを見ている。

…というか、逃げないというより逃げる気力がないといった感じだ。


「ん?何だお前どうした?」


『クゥゥー…』


オコジョもどきの腹から小さく音が鳴った。


あ、そういう事ね。


「ちょっと待て…あ、あった。ほらよ」

俺は、この前狩ったキラーバニーを格納術式アイテムボックスから取り出し、オコジョもどきの前に置いた。

さすがに手持ちのたけのこのアレを与える訳にもいかないし、こんなものでもないよりはマシだろう。


オコジョもどきは恐る恐るだが近づき、それを口にした。

不味くもなかったのかその早さはだんだんと加速し、やがてものすごい速度でがっつくようになってうさぎ肉は一瞬で無くなった。


うさぎ肉の大きさは小型犬くらい。

それに対し、オコジョもどきは一回り小さく、その上身は細い。


どう考えても物理的におかしい気がするんだが。


…それなのに、どうしてこいつは「まだ欲しい」と言いたげな目で見てんだ?


「…まぁいいよ、好きなだけ食えー」


追加でうさぎ肉を出してやると、オコジョもどきはその山積みの肉に埋まるようにがっついていった。

ほんと食ったものどこに入ってんだろ。



「終わった終わったあ。あれ?どうしたのその肉の山」

「あーあ、思いの他手こずっちゃったなぁ。あの蛇すばしっこくて全然攻撃当たんなかったんだよね」

真凛と刻がようやく帰ってきて言った。

俺がいうのも何だが、このうさぎの屍の山を肉と認識するのはいかがなものか。


「さっきなんかオコジョみたいなやつ見つけてさ、腹すかせてそうだったからあげたんだよ」

「へぇ、あなたにもそんな人の情残ってたのね。ところでさ、それ私が刻から貰って共有格納術式(アイテムボックス)に入れてたキラーバニーの肉じゃない?」

確かに、よく俺そんな情あったな。


「あー確かにそれ私があげたやつじゃん。まぁ私は別にいらないからどっちでもいいけど」

「やっぱり。ねぇ、こっち向いて?ほら私の目を見て言ってみなさいよ。その肉はどっから持ってきた?」

「うっさいな。元々俺が狩ったやつなんだからいいだろ別に」

「良くないわよ!私が貰ったんだからそれは私のものなんですけど⁈あなた私が餓死したらどうしてくれんのよ!」

「葬式には行ってやるよ。線香半分に折ったやつ一本立ててやる」

「そんなとこまで省エネにしなくていいわよ!」


「…で?そのオコジョみたいなやつってのはどこにいんの?」

ギャイギャイ騒いでた真凜を静止して、刻が割って入った。


「ん?それならそこに…」

俺が肉の山を指さすと、それを察知したのかオコジョもどきが顔を出した。


「「……」」


それを見た2人は、何故か金縛りにあったように動かなくなって黙り込んだ。


「ん?なんだお前らどうした?」


「「……可愛いぃー!!」」

2人が急に大声で叫んだ。


「うわびっくりした!急に騒ぐなよ!」

「そりゃあ騒ぎもするわよ!あなたマスコットには興味無いみたいなこと言っといて何ちゃっかりゲットしちゃってんの?!てかあなた要らないわよね?!要らないならちょうだい!」

「いいじゃん。小さくて可愛くて、私のマスコットにピッタリじゃない?ほらおいで毛玉ちゃん。私の使い魔にしてあげる」


「「………」」


「ちょっと、この子は私が欲しいんですけど。ていうか、元々私が言い出したんだし、私が優先されるべきよね」

「自分の世話もろくにできない人が何言ってんの。こういう子は魔法少女には必須なの。分かったら後輩に譲ってくれませんかね先輩」


「「………」」


「サンダーストライク!」

強制落撃(フォースドメテオ)!」


対立した2人が少年漫画級の異能バトルを始めた。

うわぁ、相変わらず勝手だなこいつら。


「キュウイ!」

壮絶な異能バトルを呆然と眺めていると、肉の山を食い尽くしたオコジョもどきがこっちに寄ってきた。

しかしもどきはもう空腹という様子でもなく、普通に満足してる様子だ。


「お前も災難だな。多分あいつら絶対お前逃がさねぇよ?」

「…キュイ…」

分かってるのかどうかは知らんが、もどきも元気なさげに異能バトルを見ながら応えた。



~A few minutes later ~



「勝ったぁ!」


更に10分ほど経っただろうか。

真凜はまた地面に埋めらたまま気絶し、異能バトルは刻が勝利を収めていた。


何があったかというと……まぁ、途中までは接戦だった。


しかし、痺れを切らした刻は空中に飛んで不触操作テレキネシスで一方的にリンチにしだした。

電撃は瓦礫がれきで防ぎ、真凜が磁力で上に行こうとしても上から落石を落とされ、磁力での鉄の操作は相殺され、極電磁大砲フレミングカノンは威力が高すぎて対人には使えず、

結果、ガン振り相性の真凜はズタボロに負けていた。


あいつほんとに魔法少女なのか?


「さあぁ毛玉ちゃん?私の勝ちだぁ。大人しくこちらに来なさぁい?」

刻が目を猟奇的に光らせながらにじり寄っている。


こいつ絶対魔法少女じゃねぇだろ。


そのとんでもない覇気をまとった刻を見たもどきは慌てて俺の後ろに隠れた。


「麻義、今すぐそこをどけ。さもなくば、あんたも真凜の横に埋めることになる」

…もどきよ。

その隠れたい気持ち、俺にもよく分かるわ。


「そろそろやめてやれよ刻。このもどき、お前見てめっちゃ怯えてるぞ」

流石に可哀想になってきたので、一応俺はこの狂犬魔法少女からもどきを庇った。


「…そう、私の邪魔をするというのか。ならあんたも真凜と同じにして…」

「ほらこれやるよ」

俺は刻の言葉を遮ってとあるものを渡した。

「ん?なにこれ」

そして、刻がそれを受け取ると同時に…

呪符転移ポイント・テレポーテーション

「へ?!」

俺は渡した呪符に詠唱をして、刻を拠点に飛ばした。


流石にこいつと真正面から戦り合うのは分が悪い。

俺はそんな面倒なことはごめんだ。

悪いが、先にお引き取り願おう。


俺はさっきまで刻がいた虚空に向かって敬礼した。


「ほら帰るぞもぐらポケ」

俺は起きはしたが埋まったまま呆然としている真凜を引きずり出した。

「ちょっと、誰がもぐらポケよ。そいつタイプじめんだから私と真反対なんですけど」

あ、論点そこなんだ。


「まったく…あれ?そういえば刻はどこ行ったの?」

思い出したように真凜が辺りを見渡した。

「あいつなら先に拠点に帰ってもらったよ。後片付けは事後処理部隊に任せるとして、俺たちもさっさと帰るぞ」


さっきまで異界門ゲートがあった周りでは、既に事後処理部隊がせっせと後始末をしていた。


SuReには鬼を殺す隊の後藤が所属してる部隊のような、事後処理部隊が存在する。

まぁそれ以外大して言うことないが。


「へぇ、よくあなた刻を撃退できたわね。じゃあその頭の上の子をちょうだい?」

平然と話していたが、今俺の頭にはもどきが乗っていた。

どうも餌付けしたことで懐かれたらしい。


で、今真凜は目をキラキラさせながら俺の頭の上に手を伸ばしている。


…ちょうだいと言われてもなぁ。

俺が言えたことでもないが、自分の食い扶持も賄えないやつに到底ペットを飼えるとは思えない。

刻も刻ですんごいスパルタな飼い方しそうな気がする。

それに、なんか俺も愛着湧いてきたんだよな。


「…よし、こいつは俺が飼うことにする」

「はぁ?!」

「キュイ!」


こいつなんか俺に懐いてるし、刻か真凜にまかせるのは不安すぎる。

それに、ここに放置しても長生きできないだろうし、そうなると餌付けした手前寝覚めが悪い。

世話は面倒いが、知能も高そうだし割と楽な部類だろう。

あと、動物は別に嫌いじゃないから世話もまぁそこまで苦にならない気がする。


「ねぇどうして?!いいじゃない!あなたそんなに欲しくないんでしょ?!じゃあ私にちょうだいよ!」

「お前動物飼いたいんだったらまず自分の世話ができるようになってから言え!あと縋り付くな離れろ!」

「できるもん!私だって本気出せばできるもの!やればできる子なの!」

「どの口が言ってんだこの永久金欠!おまえがなんと言おうとお前に任せんのは不安すぎんだよ!」

「なんでよおぉぉぉ!!!!」


こうして、俺はこのもどきを飼うことになった。


そして真凜から文句を言われ続けながら、俺たちは帰路に着いたのだった。

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