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Chaos〈カオス〉 〜こんなバグった世界だが、俺は意地でも平穏に暮らしたい〜  作者: 身勝手な鶏
2章:井の外の海は広く、個性は遥か地平線まで渋滞する
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マスコット編Ⅰ ラノベ厨の願望と怖すぎる超能力者

長かった初日の1週間後です。


「ねぇ、やっぱりマスコットって必要だと思うのよ」

真凜がまたとーとつに訳分からんことをほざいた。



俺が入隊してから1週間が経った。

その間何度か討伐やら異界門ゲート対応にも行って、もういい加減仕事にも慣れてきた。

だからもう大人しく爆速で仕事を片付けて帰る生活をしていたいのだが、毎度このバカは相変わらず俺の平穏をぶち壊しにかかるようなことを言いやがる。


「何馬鹿なこと言って…」

「絶対必要でしょ」

「は?」

普段はこのバカの戯言は皆聞き流すのだが、今回はとても都合の悪いことに刻まで同調しだした。

「また急に何ほざいてんだよ。しかも謎に刻まで賛同してるし。大体なんだマスコットって。うちには猫もいるんだし足りてるだろ」

「え?麻義猫なんて飼ってるのだ?」

咲楽が言った。

最近分かったのだが、こいつはただのバカというよりも天然と言った方だ正しい系のバカだった。

「咲楽、ちょっと鏡見てきてごらん?」

「? 分かったのだ」

そう言って彼女は不思議そうに洗面所へ向かって行った。


「で?マスコットってあいつじゃダメなのか?」

咲楽は身長もそこまで高くないし割と童顔で、客観的に可愛い系の顔ではあると思う。

マスコットって言っても差し支えない気がするが…。

「ねぇ、あんた馬鹿なの?天然系ケモ耳少女はもうそれだけで属性として完璧の枠でしょうが。マスコット枠は別で要る決まってるじゃない」

「今回ばかりは真凜に賛成。咲楽は可愛いから看板娘としてはいいかもしれないけど、マスコットはないでしょ。マスコットってのはもっとこう…」

「肩に乗るサイズくらいのケモノっぽい可愛いやつでしょ?常識よ」

「そうそう、そういうの」

…まぁ、俺だってこれでもアニオタの端くれ。

別枠だろうなってことは分かってたけどさ?


「…100歩譲って要るとして、どこにそんなのがいるってんだよ。いくらモンスターが異界門ゲートで来るっつってもマスコットにできるようなやつはなかなかいないと思うぞ」


マスコットっつったら、

・小動物サイズで可愛らしい。

・それなりに知能が高い。

・人に懐く。

くらいは最低必要条件だろう。

そんな都合のいいやつがどこにいるってんだ。


「あなたほんと考え方がつまんないわね。探す前から諦めてたらみつかるもんも見つからないわよ」

「無いもん探してもそれは無駄足って言うんだぞ」

と、一々否定してたら真凜が心底悔しそうにプルプルしだした。


「なによ、私だって夢見たっていいじゃない!半裸鳥頭の開拓者は喋るうさぎ連れてるし、魔術厨の第七王子は子ヤギみたいな魔人連れてるし、頭のおかしい爆裂娘も悪魔猫連れてるのに、私がマスコット欲しがっちゃダメな訳?!」

「よし分かった。お前ちょっとラノベの読みすぎだ」

たまに思うがこいつは創作と現実の区別がついているのだろうか。


「私的にはさ、魔法少女にはマスコットって必須要素だと思うんだよね。まぁいないのもあるけど、私は断然欲しいから。ていうか、あんたがなんて言おうと私は絶対見つけるからね」

血気盛んな自称魔法少女はそう言いながら台パンした。

「いやまぁやめろとは言わんし好きにすりゃあいいよ。見つけたやつが感情をエネルギー変換する技術を開発していないといいな」

「いる訳ないでしょそんなの。現実と漫画の区別もつかないの?」

冗談のつもりで言ったのにとてもデジャヴなつっこみを入れられてしまった。

「お前に言われたくねぇわ。あと、そこの真凜バカよりはちゃんと区別できてるから」


「「はぁ?!」」


「ちょっと、その言い方だと私が現実と漫画の区別がつかないみたいなんだけど!」

「お前に言われたくないって何。私は魔法少女が好きなだけであって、別にオタクじゃないから!」


俺は怒りの込められた2人の文句を無視し、副隊長の方にさっきやった討伐の報告書を提出しに行った。

ちなみに今騒いでいる2人も別の討伐に行っていたはずなのだが、まだ報告書は終わっていない。

「はい。不備はありませんね。ではもう仕事もないので、帰宅時刻までは訓練などしていてください」

「分かりました」

はっきりと返事をした後、俺はキモカワにゃんこ育成ゲームを開いた。


「全く、あんた覚えときなさい。もし私がそれはもう可愛らしいマスコットと出会っても、あんたには指一本触れさせないから」

「いいよ別に」

俺は適当に相槌を打ちながら、脳死で超メタルなカバを周回していた。


「って言っても、どこにいるのか分からないんだと探しようもないわよねー…。あ、そうだ。ねぇ弘零ぐれい

真凜が誰もいない方を向いて話しかけた。

てか誰だよグレイって。

「お前どこ向いて話しかけて…」


『…な、なんですか?』


「いる…ん……は?」

真凜の目線の先の、拠点のテーブルの上に置いてあった木彫りの熊が喋った。

その声は多少低めで、おそらく声の主は若い男性だろう。


「この辺にマスコットにできそうなモンスターってなんか…」

「待て。ちょっと待ってくれ」

俺は平然と話を進めようとする真凜の言葉を遮った。

「なによ。こっちは一刻も早くマスコット探しに行きたいんだけど」

真凜は愛用している銃もきっちり装備して、もう5秒で出れる体勢になっている。

「お前は先に今やってる仕事を終わらせろよ。ってそうじゃなくて、なんなんだその熊。AIスピーカー?いやでも声的に人間だよな」

まぁスピーカーなのだろうが、なんだろうこのウケ狙いとしか思えないデザインは。


「あぁ言っていませんでしたっけ。彼は天雨弘零あまうぐれい隊員。テレワークで勤務している、探索者の分隊(サーチャースクワッド)の情報担当です」

副隊長が立ち上がり、木彫りの熊をさして言った。

「あの、言ってて違和感ないですか?」

「あるはずなんですけど、しばらく前に慣れましたね」


やはり、この魔窟にいると常識なんてものはは崩壊していくらしい。


『こっ、こんにちは。天雨弘零です。情報担当です』


良かった。少しコミュ障っぽい感じだが、話を聞く感じは常識人っぽい。

大丈夫、見た目は木彫りの熊だが常識人だ。

文字通り見た目に目をつぶれば、まぁ、大丈夫。


「初めまして、俺は…」

『えっと、小鳥遊麻義さん、21歳男性。20XX年11月23日生まれ。AB型。小鳥遊 大海おおみと小鳥遊 からの息子であり、萌樹さんの弟。某国立大学理学部超常能力学科を飛び級し、大学院中退。124のスキル開発をしていて、受賞作も多数。実家の周辺では神速の終幕(エンドロール)として活動し、SuReでは討伐者階級第二級相当と予測される実力者。戦闘スタイルは所有する数多のスキルを使いこなす千差万別なもので、しかし一貫して迅速に片付けることと合理性に重点を置いた戦法を取る。好きな食べ物はみかん、嫌いな食べ物はいわし。趣味はインドア趣味全般で、苦手なことは運動、コミュニケーション、暗所、陽キャ。…と、こんな感じですよね』



……俺の、この人が常識人かもしれないという希望は一瞬で潰えた。


やばい怖いこの人。なんで知ってんだよそんなこと。

畜生、マジでこの隊には副隊長以外異常者しかいねぇのか。


「あの、こいつ大丈夫なんですか?なんで初対面なのに俺のことこんな知ってるんですか」

俺はこの木彫り熊に聞こえないよう副隊長に耳打ちした。


「彼は超能力・全智書庫(データベース)の超能力者で、この世の大概のことは知っている(・・・・・)んですよ。しかし人とのコミュニケーションがかなり下手な人で、言わなくてもいいことまで言ってしまうんです。でも一応常識はあるので、個人情報を流出させるようなことはないと思いますよ」

「はい?」

なんだそのチートっていうか恐ろしすぎる超能力は。

場合によっちゃあ最強の能力じゃねぇか。


『…あっ能力の件なら大丈夫です。ちゃんと…プライバシーは守ります、から…』


本当に大丈夫なんだろうか。

真凛が悪いこと考えてそうな笑みを浮かべてるからすでにアウトな気がするんだけどなぁ。


とりあえず、こいつは刻以上に絶対に怒らせないようにしよう。



「ねぇ、自己紹介はそのくらいでいい?いい加減本題に入りたいんですけど」

珍しく空気を読んでいた真凜だったが、いい加減痺れを切らして話に割り込んできた。

「それに、弘零はあんたのことなんか全部知ってんだし自己紹介も要らないんじゃないの?」

いや俺はこいつのこと知らないんですけど。


「…まぁいいよもう。そんでなんだ、マスコットに良さそうなモンスター?だっけ」

「そうそう。ねぇ弘零、なんか知らない?そういうやつ」

いやいくらこの世の全てを知っているっていってもいねぇもんは知らな…


『知ってますよ』


はい知ってました。


「え、いる?いるの?そうねぇ、いややっぱりいると思ってたのよ。さすが私、完璧な予測ね」

開幕からアホなことしか抜かしてなかったアホがなんかほざいてる。

「それで?それはどこにいんの?」

何気に冷静な刻が尋ねた。


「…はいっ、あっ、えっと、こんな感じですね」

そう言うと熊の目が光出し、プロジェクターのように空中に映像が投影された。


ーマスコット適正の高い異界種と所在一覧ー

・カーバンクル  ⋯パラグアイ

・ピクシー    ⋯深い森林

・マンドレイク  …豊かな土壌の郊外

・スライム    …ペットショップ

・アッシュキャット…砂丘

・九尾      …中国

・鎌鼬      …長野など

・小玉鼠     …秋田県

・ツチノコ    …岐阜県など

・ジャッカロープ …アメリカ

        :

        :

        :


投影されたそこには、ほとんどが馴染みのあるモンスターが記されていた。

でも、スライムはいいとしても、他の入手難易度高すぎねぇか?


「「…」」


それを見た2人もとても近所で片手間に入手できないそれらに絶句している。

「ねぇ、もっと近所にいない?」

「あっ、目撃情報は無くもないのですが、ウルトラレアですし、出会って、なおかつ仲間にするのはかなり難しい…と、思います」


「「えぇ〜っ」」

「ちょっと、もっと頑張んなさいよ!大丈夫、あんたはやればできる子なんだからまだ探せるでしょう?!」

「あんた見落としてないでしょうね!もしそこら辺にマスコット連れてるやつ見かけたらあんた許さないからね!」

「ヒッ、いや、そんなこと言われても…」

2人の理不尽な追及に対して、弘零が怯えている。

なんか可哀想になってきたな。


『ビーッ、ビーッ、ビーッ!!』


と、意味もなく木彫りの熊の首を絞めている真凜と刻を眺めていると、拠点にけたたましい音が響いた。

有害なモンスターか何かが出たサイレンだ。


異界門ゲートです。場所はここから南南東に2キロ。出現した異界種はアジア系の異次元と繋がるものと推測されます。平均危険度は崩橙級オレンジランクです。』

弘零が急にハキハキと喋りだした。

異界種とは、異界門ゲートから現れるモンスターの総称だ。


「麻義隊員、真凜隊員、刻隊員。話はそこら辺で一旦中断して、至急現場に急行してください!」

「…えぇ、俺要りますか?別にここに残っててもいいんじゃ…」

「分かりました!さて、マスコットに良い奴いるかな!」

「来たわね異界門ゲート。さて、腹が減るぜ!」


真凜は即座に話を中断し、意気揚々と俺が導入した転移の呪符を使って異界門ゲート付近に飛んだ。


そして俺も、刻に引きづられながら異界門ゲートの元へと飛んだ。


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