残業編Ⅱ ハードモード性能の剣士と強制ボランティア残業
元々残業編Ⅰとまとめて1話にしようとしてたけど長くなったので分割した片割れです。
だから結構短めです。
あと残業編ラストです。
この話を投稿した後にep10に割り込み投稿しました。
「俺は不知火毘彩、見ての通り剣士だ。一応手加減はしたけど、さっきは悪かったな」
俺はもう諦めてさっさとこいつらの仕事も終わらせた方が早いと思い、全速力で他人の残業をしながら毘彩の自己紹介を聞いていた。
「いちばん気になっていた事のご説明どうもありがとう。俺はさっき言った通り今日からこの隊に入ることになった小鳥遊麻義です。一応萌樹の弟です」
「へぇ、お前萌樹さんの弟なのか。どうりで刻と真凜から逃げられた訳だよ。あ、敬語はなんか気持ちわりぃからさっきみたいにタメ口でいいぜ?」
まぁ、もうこの隊の連中に敬語を使う気なんてもんは湧かないのだが、自己紹介だから一応敬語を使った。
しかしその必要はなかったらしい。
「そうか。んじゃあ遠慮なくタメ口使わせてもらうわ。ところで、さっきのあれはなんだ?触れた瞬間俺のスキル消し飛んだんだけど」
俺も術式解除は使えるが、それは知っているか、もしくは解析が済んでいるスキルだけだ。
硬獄縛は俺のオリジナルスキルだから知ってるはずはない。
何よりこいつはスキルを発動したそぶりがなかった。
「あぁそれ?それは現実主義者っていう俺の権能で、触れたスキルを消せるってもんだ」
薄々そんな気はしていたが、毘彩は普通のことのようにぶっ壊れ性能の権能について話した。
は?なんだそのチート。
場合によっちゃあ最強のベクトル操作能力者にも勝てるやつじゃないか。
「あ、今、何そのチートスキルずるい!とか思ったでしょ。でも多分あんたには使いこなせないわよ?」
集中力が切れたようで、事務椅子で回りながら真凜が言った。
「使いこなせない?なんでさ。スキル無効化できるとかこのご時世において最強……待て、まさか…」
何となく気づいた気がする。
最弱の無能力者もそんな感じだった。
しかし、もし本当にそうだとしたらこの世界だとかなりシビアなはずなのだが。
「そう、毘彩はスキルが全く使えないのよ。あ、スキルだけじゃないわよ?例えばほうきとか呪符とかみたいな、スキル系のアイテムも使えないの。場合によっては触った瞬間大破するものとかもあるわ」
「あー、そういやそうだったわ。まぁ俺にはこれだけあればいいからあんま気になんねぇんだけどな」
毘彩は笑いながらさやに入った刀を見せつけてきた。
本人は余裕そうだが、これはただ事ではない。
まず、スキルが効かないということはバフ、回復、スキルの補助、蘇生などが一切効かないということだ。
討伐者にとってはこれだけでも致命的だろう。
しかしそれだけではない。
今この国では魔動家電が山田や小島の売り場の大部分を占めていたり、ガソリン×電気×魔素のハイブリッド車も普通に売っているたりする。
最近できたバスに至っては完全に魔素自動車だ。
もはや現代社会の生活とスキルは切っても切り離せない存在になっている。
それを触っただけで壊すとか、今までどうやって生きてきたのだろうか。
「どう?羨ましいと思う?」
俺は真凜の問いかけに全力で首を振った。
「ダハハハハ!まぁそうだろうな。俺は割と困らねぇけど、他の奴らには無理だろうぜ」
毘彩が笑いながら言った。
ほんとこいつはどうやって生きてきたのだろうか。
「まぁ同じ隊で働く以上、いつか組むこともあるだろうからそん時はよろしくな」
毘彩が立ち上がって俺に手を差し出した。
「……よろしく」
こんな権能があるのに普通に討伐者やってるところとか、今朝見た出勤状況記録表の事とか、こいつもなんかしら異常な奴な気がする。
しかし、いつか組むことがあるということも事実なので俺はその手を握った。
「ねぇ、自己紹介は別にいいんだけどしっかり手も動かしてくれる?」
今まで黙々と報告書を片付けていた刻が言った。
今俺がやっているのはこいつの仕事なのに、なんで相変わらず上から目線なのだろうか。
「…でもそうだな。さっさと終わらせて帰りたいし、しっかりやってやるか」
「んじゃあ俺はトレーニングルームにいるから、なんかあったら来てくれ」
そう言って毘彩は部屋を出ていった。
そして俺は全速力で自分のではない仕事に取り掛かった。
「「終わったー!」」
結局俺が6割くらいやった仕事が終わり、刻&真凜が騒いだ。
「麻義、手伝いありがとうなのだ。今日は討伐したやつも多くて長くなりそうだったからマジで助かったのだ。」
強制的にやらせておいて感謝というのもおかしい気がするが、まぁ気にしないでおこう。
しかし、そうは言っても礼を言ってくるのが咲楽だけというのはどういうことだろうか。
「おい、ズッコケコンビ。人に手伝ってもらったら礼を言うって保育園で習わなかったか?」
「誰がズッコケコンビよ。昨日までニートだった人に言われる筋合いないんですけど。まぁ、仕事手伝ってくれたのは少しは感謝してるわよ?でも、こんなに仕事が溜まったのはあなたのせいでもあるんだし、あなたが手伝うのは当然なんじゃない?」
この畜生はまともに礼も言えねぇのか。
「それもそうね。ありがと、助かった」
一方、刻は意外と素直に礼を言ってきた。
こいつは死んでも俺に感謝とかしないかと思ったのに。
「なんだ、意外と素直だな」
「何、私が素直に感謝したら悪いわけ?」
いや別に悪くはないが、なんかこう、落ち着かない。
と、こんなことしてる場合じゃない。
もう6時だしさっさと帰ろう。
「んじゃ、俺はもう帰るぞ。文句無いな」
「しょうがないわね。そんなに言うなら解放してあげるわよ」
ホントいちいち癪に障るなこいつのセリフ。
しかしまたし返す時間も惜しいので、多少の怒りを感じつつも俺は帰り支度を始めた。
今日はマジで疲れた。
腹も減ったしさっさと飯食ってアニメでも見ながらぐーたらしていたいが、家帰っても飯作る気力無いな。
普段は自炊派の俺だが、さすがに今日はそんな体力残ってない。
コンビニでなんか買って帰ろうかな。
でも腹減ってるしなんか凝ったもんが食べたい。
今の気分は和食かな。
もう今日は外食でいいか。
俺は脳内マップで近所の飯屋を探しながら、拠点から出ようと…
「あ、麻義さん。よければ今からご飯食べに行きませんか?」
出ようとしたらまた引き止められた。
マジでもう今日何度目だよ。
呼び止めたのは副隊長だった。
ちなみに名前は草薙さんだが、俺はさっきから何となく副隊長と読んでいる。
副隊長と一緒かぁ。
ほぼ初対面の人と飯ってのもなんか気が引けるし、正直今日はもうさっさと飯食って帰って休みたいんだよなぁ。
「せっかくですが今日は…」
「あ、もちろん奢りですよ」
「行きます」
俺は副隊長様と一緒に飯に行くことにした。




