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Chaos〈カオス〉 〜こんなバグった世界だが、俺は意地でも平穏に暮らしたい〜  作者: 身勝手な鶏
2章:井の外の海は広く、個性は遥か地平線まで渋滞する
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残業編Ⅰ 可及的速やかに帰りたい男と絶対に逃がしたくない女共

編は挟みますが入隊編、初陣編と同じ日です。

「ふぅっ、それじゃあお疲れ様でしたー」

「「「早っ!」」」

隊の拠点にて。

早急に仕事を終えた俺に隊の問題児系女子三人衆が声を揃えて言った。



俺たちは討伐任務を終え、報告書やらなんやらを書くために隊の拠点に帰ってきていた。


で、1時間弱くらい前から仕事に取りかかっていたのだが、その量はまぁ妥当というか、納得はできるがそれなりに多いという感じだった。

まぁこのクソ面倒い仕事があるなら残業になるのも納得できる。


……並の労働者なら、な。


俺は死ぬ気で勉強をしていた暗黒時代に、常人の2,3倍くらいの速度の業務処理能力を獲得していた。

そりゃああんだけ苦労したんだ。そのくらいの力は技能は身につく。

そして、残業を無くし早く帰るという目的がある以上やる気も出る。

やる気があるなら権能の効果で処理能力も上がる。

あとついでに、貴重な常識人の副隊長様は仕事を教えるのが超絶上手かった。


アズ ア リザルト,

俺は仕事初日だが、一緒に行った2人の5倍速で仕事が終わった。



「俺を誰だと思ってる。働かないためには全力だって超えられる」

「ドヤ顔やめろウザい死ね」

未だ報告書を書いている刻がナチュラルに暴言を吐いた。

「偉そうに言ってるけど何も偉くないし凄くもないからね?」

未だ椅子に縛り付けられたまま朝から働いている真凜が言った。

「もう偉くても偉くなくてもいいから。んじゃ俺は帰るぞ。お疲れっした…」

「「「待」」」「て」「つのだ」「ちなさい」

また刻と咲楽が、そして追加で真凜がハモった。

縛られていない2人はいつの間にか目にも止まらぬ速度で椅子から飛び降り、俺の両肩を掴んでいる。


「…離せ。俺の仕事はもう終わった。帰っていいだろ」

「ねぇ、あんた協調性って知ってる?」

こいつ、俺に仕事を手伝えと言いたいのか。

そいつは無理な話だ。

「知らないな。んじゃ帰って辞書でも引いてみるわ」

尚も帰ろうとする俺を掴む力が強まった。

もう今日だけで肩の負荷がやばいんだが。

そろそろ肩脱臼しそう。

「あの、麻義さん。報告書が終わったならシフト決めなどをしなくてはならないのですが…」

副隊長も俺を引き止め出した。

そういえばあったなそんなのも。

「今日は疲れたのでまた別の機会って事で…」

「なるべく今日でお願いします」


…チッ、やはりまだ帰れないか。


俺は2人が俺の肩を掴む手を振り払い、渋々副隊長の元へ向かった。



「では勤務時間の説明なのですが、討伐者という仕事は異界門ゲート対処が基本業務です。なので24時間体制で誰かすぐに出動できるようにしておく必要があるのですが、毎日夜勤というわけにもいかないのでその月のシフトを逐次決める必要があるんですよ。」


なるほど。まぁそりゃあそうだよな。

異界門ゲートは昼といわず夜といわずいつでも出現する。

俺が神速の終幕(エンドロール)として近所で討伐してた時も、出れない時はこんに押し付け……任せていた。


「ということでまずは勤務時間をどのくらいにするかなのですが…」


来た俺の正念場!(二度目)

さっきまで忘れていたが、これが今日の俺のメインイベントだったはずだ。

ここで俺のこれからの自堕落生活の生死が……


「麻義隊員は義姉さんに月160時間労働でと言われていますので、その配分ですね」


……………は?


「…すみません。ちょっと幻聴が聞こえたのでもう一度言ってもらっていいですか?」

大丈夫、今のは幻聴今のは幻聴今のは幻聴今のは


「麻義隊員は義姉さんに月160時間労働でと言われていますので、その配分ですね」


??????????


ツキヒャクロクジュウジカンロウドウ?

ツマリ(つまり)ヒルヤスミ(昼休み)イチジカン(1時間)トシテ(として)クジカラロクジ(9時から6時)クライ(くらい)

ナニヲイッテルノカワカラナイ。

「は?え、な?えっと、もう少し短めを想定してたんですけど。もうちょっと短縮できたりとかって…」

無理無理無理。

ついこの間まで無職だったのに急にほぼ毎日丸一日仕事とか無理だから。


「まぁ、法律と隊の規約上の権利としては一応できますよ」

よしキタ!

ハハハハハ!なんだよ驚かせやがってあのクソ姉貴!

奴がどんなに上から目線でも結局法の前には……


「ただ、あの萌樹隊員がそれを許してくれればですが」


法の…前…に…は…


…………そうだよ。


あのクソ姉貴は法だって超えてくる。

結局、拒否ったら女装露出で街に放り出されるのは変わらねぇじゃねぇか。


「どうしますか?業務時間」

「………………………」

「麻義隊員?大丈夫ですか?」

「…つ、月、百………160…時間で、お願い……しま、す……」


畜生あの脱法女!


「わぁ、すごい辛そうだね。アハハハハ。普通の人の労働時間よりも少ないくらいなのに、ほんとニートは大袈裟おおげさなんだから。あ。…ゴホン。麻義、馬鹿なことやってねぇで働け!」

「ハハハハハ!いい気味!神速の終幕(エンドロール)も型なしだわ!」

真凜と刻が笑いながら言った。

よし、あの二人だけは今後絶対に手伝わないようにしよう。




「それじゃあ、とりあえず今月と来月のシフトはこれで確定でいいですか」

「………………………はい…………」


憂さ晴らしに真凜の首元に氷結魔法をかけた後、俺は嫌々ながら自分の今後のシフトを決めた。


朝起きるのは苦手なので5~8時の時間帯はパス。

代わりに夜型なので夜勤はやや多め。


と、いう感じで昼~夜あたりメインでのシフトにした。


「それじゃあ俺はもういいですよね。では改めてお疲れ様でしたー」

俺は本日数回目の別れの挨拶を済ませ、拠点から出ようと…

「おい、なんだよこれ」

扉には明らかに過剰な量の鍵と鎖が付けられ、その上結界、束縛術式、氷結術式、施錠魔法など、ありとあらゆるドアを締め切るスキルが重ねがけされていた。


「すみません、帰りたいのに帰れず苦しむあなたの姿が見たくて」

今まで黙っていた千歳が言った。


今朝から少し思っていたがこの瞬間、俺の千歳に対するキャラ認識はドSで確定した。


マジでこの隊に常人はいねぇのか。


…しかし、何度も言うがこの程度で止まる俺じゃない。


術式解読スキルディクリプション術式解除スキルブレイク

「「「は?」」」

「からの解錠ピッキング、と」

「「「はぁ?!」」」

「へぇ、中々面白いじゃないですか」

俺は帰りたい一心により超強化された能力でドアを締め切るスキルを軒並み解除し、愚姉と父に鍛えられたアナログ(非異能力)解錠能力ピッキングスキルでドアの封印を開けた。

相変わらず驚いている3人はいいとして、千歳がなんか感心してるのが怖いのだが。


しかし、ドアの封印が解けたのには変わりない。


「ちょっ、待ちなさい!」

刻が制止するが当然無視し、俺は再び帰ろうとドアノブに手を…


「チーッス」


…かけようとしたら外から青年が入ってきた。


畜生、どうしてこんなに俺の帰りが妨害されるんだ!


今入ってきた男は二十歳前後くらいの赤髪筋肉質の青年で、隊の制服の上にはスカジャン、耳にはピアスを着けている。

腰に刀を下げているところを見ると剣士だろうか。


個人的に普段絶対関わりたくない人種の格好だ。

今日だけで新キャラ何人出てくるんだよ。


と、色々思うところはある。

だが…そんなことはどうでもいい!

「初めまして俺は今日からこの隊に入る事になった麻義というものです誠に勝手とは存じますが先を急ぐ身故自己紹介はまたの機会にお願いしますではお疲れ様でした!!」

「お?え?何だ?」

俺はすれ違いざまに早口で青年に言い訳をして、全速力で拠点を出た。

「「毘彩ひいろ、そいつを捕まえろ!!」」

真凜、刻が口を揃えて言った。

毘彩と呼ばれた青年は訳も分からなそうにとりあえず俺に手を伸ばしたが、大して早くもなかったので余裕で走りながら回避できた。

「追え!毘彩、高速移動だ!」

「毘彩!なんとしてでもそいつを捕まえなさい!捕り逃したらあんたのあだ名今後1ヶ月ザコノロマにするから!」

2人が滅茶苦茶な勝手を言っているのが聞こえるが、俺は気にも止めずに毘彩と呼ばれた青年の横を走り抜けた。

「スキル・瞬足スプリント!」

ここまで来てまた仕事に逆戻りとかマジごめんなので、スキルも使って呪符転移が使える隙くらいはできそうな所まで逃げようと走った。



…走ってんのにさ?


「悪いね兄ちゃん。お前が誰で何したのかはよく知らんが、1ヶ月クソノロマ呼びはさすがに嫌なんだよ」

毘彩と呼ばれた青年は全力疾走中の俺に並走していた。

瞬足スプリント発動状態の俺の速さは100m10秒強くらいだ。

なのになんでこいつはバフ無しで話しながら追いつけてるんだ?


だが、まだ捕まってはいない!

「悪いな毘彩とやら!お前に恨みはないが俺の帰宅のためだ。悪く思うなよ!硬獄縛アルカトラズバインド!」

俺は足止めの為に毘彩に束縛スキルを放った。

よし、これで動けない間に距離を取…


『パキィィン』


「…は?」

しっかりと発動したはずの束縛スキルは、毘彩の身体に触れた瞬間に砕け、蒸発するように消し飛んだ。

「悪いね兄ちゃん。俺にスキルは効かないんだ」

「いでっ!」

と言いながら毘彩は加速し、一瞬で俺に足をかけて倒し、俺の関節を決めて完全に拘束した。

「よくやったわ毘彩!」

「ハハハ!私たちの手から逃れられるとは思うなよ!」

何もしていないはずの2人が、押し倒されている俺を見てドヤ顔した。


畜生、どうしてこう全てにかけて上手くいかないんだ!


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