初陣編Ⅱ 鷲系の頭と獅子系の身体
初陣編Ⅰの数分後です。
「ふざけんなよお前ら!!畜生、初日からこれかよ!!なんで俺がこんな目にぃぃ!!」
時は数分前…
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グリフォン 災緋級
鷲の頭に獅子の下半身を持つ魔物。全長3~4m。
機動力、攻撃力が非常に高く、他ステータスも高水準。
知力も高く、能力に耐性がある。
風魔法を使う個体も確認されている。
知力が高いためか人的被害の報告はあまり無いが、牧場や動物園で被害が出ることがある。
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俺たちは本日4回目の討伐に、刻が言う強い奴とやらがいるところに来ていた。
そして目の前には、ファンタジーにはおなじみの中ボス格モンスター、グリフォンが飛んでいる。
「なぁ、俺今日仕事1日目なんだけど。あいつ絶対駆け出しが相手するような奴じゃないよな」
「あんたがふざけた倒し方するのが悪いんでしょう。自業自得だよ」
えぇー。倒せと言われたから倒しただけなのに。
「んなこと言ったって、多分俺あいつ倒せねぇよ?」
グリフォン。
そう、あのボスキャラのグリフォンだ。
古今東西のファンタジー系作品においてこいつを雑魚として扱うものはそうそう無いくらいの、堂々の強キャラ枠でもある。
そんなのをゴミみたいな戦闘センスしかない俺がどうして倒せようか。
「やる前から諦めるな!あんた仮にも神速の終幕なんて大層な異名が着いてんだから、あれくらいちゃちゃっと倒してみなさいよ!」
流石はグリフォン。そんな話している隙を見逃すはずもなく、風魔法の攻撃を放ってきた。
魔法は発生が比較的遅いからギリギリ回避こそできたが、目の前の地面が大きくえぐれている。
「危なっ!おい、知るかよ異名とか!そんなのどっかの誰かが勝手につけたもんだろ!はた迷惑な話だよ本当!」
「言い訳ばっかしてないで戦ったらどうよ。私たちは手伝わないからね!」
んな無茶な。
さっきまでは上手い事弱点をつけたからあっさり倒せただけで、俺の本来の戦闘能力なんて雑魚もいいとこだ。
大体、あいつの弱点ってなんだよ!
「なぁ、ホント手伝ってくれませんかね!?俺絶対あいつには勝てねぇから!」
「あんたさっきから慌てすぎじゃない?いくらグリフォンっていっても真凜に聞いた限りの能力じゃ十分やれると思うんだけど」
くっそあいつどんな誇大広告しやがった。
「んじゃ見てろよ!超加速飛石槍!」
俺は飛びながら様子を伺っているグリフォンに最近よく使う攻撃魔法を放った。
しかしそれはこの前のものとは比にならない速さのもので、グリフォンは羽ばたきひとつで飛ばした石槍を落とした。
グリフォンはバカにするようにこちらを見ている。
「ねぇ」
「…はい」
「何?あの吹けば飛ぶような攻撃は。舐めてんの?」
「違うんだよ」
試験の時にはそれなりに活躍してくれたが、俺には気分屋という本来デバフの権能がある。
これはその時の気分によってパフォーマンスが変わるというものなのだが、もう一つ、この権能は俺のイメージにも強く関わってくるという性質がある。
それもそのはず、俺は困難なイベントほど燃えるとかいう青髪泣きぼくろのイケメン勇者みたいな性格はしていないので、勝てなそうな敵には当然やる気が出ない。
つまり、俺は勝てる敵はあっさり勝てるが、格上だと思うの強敵に対して俺は弱体化する。
だから俺は気分の条件が揃っていない限り強敵にはどう足掻いたって勝てないというなんとも残念な性質をしているのだ。
「「…………」」
と、いう話を2人にしたら黙り込んでしまった。
「なんか…絶対主人公になれなそうな性質だね」
やめろ、そんな憐れむような目で見るな。
「まぁ…雑魚狩りとかなら活躍してくれるのではないか?」
頼む、気を遣わないでくれ。悲しくなる。
「…良いだろ別に!好きでこんな権能になった訳じゃねぇんだから!ってことで俺あいつは倒せないから!お願いだから手伝ってくれ!」
「全く、しょうがないな!こんな奴をウチに連れて来た真凜には文句言わなくっちゃね!よし、いくよ咲楽!」
しょうがないなと言いながら、刻はとても楽しそうにグリフォンに向き直った。
「いいのか!よっしゃ、やぁっと戦えるのだ!」
刻に答えた咲楽の声も楽しそうなものだった。
そんなに戦うのが好きなら最初から戦ってくれ。
「じゃあ麻義、見てなさい!これが隊の先輩の実力だ!フォルムチェンジ!」
刻がどこからかいかにも魔法少女らしい、ピンク色のベースに羽のような装飾の付いているステッキを取り出した。
そしてそこからお決まりの変身が始まり、ポージングとともに服装が変わっていく。
…それはもうゆっくりと。
「お前ふざけんな!敵の目の前で悠長に変身するのを待ってくれんのはアニメだけなんだよ!」
グリフォンは一切の遠慮もなく襲いかかってきた。
しかもなぜか悠長に変身してる隙だらけの方ではなく、こちらの方に。
流石はグリフォン。遠慮はなくても空気は読んでくれるらしい。
「いや読まなくていいから空気!クッソ!咲楽、戦うから手伝ってくれ!」
「任されたのだ!」
咲楽もどこからか出したクローのような武器を装備し、グリフォンに切りかかった。
しかしグリフォンはそれを素早く察知し、体を翻して回避する。
「チィッ、やっぱり素早いのだ」
咲楽は着地して即座にグリフォンを見上げた。
「空に逃げたか。しっかし、あの素早さだと空中戦は難しいな。咲楽、遠距離攻撃ってできるか?!」
「あの程度の高さなら届くのだっ!」
そう言って咲楽はグリフォン目掛けて高く跳び上がり、また直線的に切りかかった。
しかし空中でも機敏に動けるグリフォンは余裕で咲楽を回避した。
しかし咲楽は飛べないようで、空中で自由に動くことができずグリフォンに前足で叩き落とされた。
「まさか…空中であんなに素早く動けるとは予想外だったのだ」
いやバカなのか?こいつ、大バカなのか?
なんで飛んでるやつが空中で素早く動けないと思ってんだ?
「おい、だから遠距離から…」
「それならもっと素早く動けば良いだけなのだ!おりゃー!!」
咲楽が再びグリフォンに突っ込んだ。しかし当然、結果は少しも変わらない。
「くっ、なかなかの強敵なのだ」
いやバカなのか?いやいや。え?マジのバカなのか?
「刻、変身ってまだ終わらねぇのか⁈このバカ使えねぇんだけど!」
「な、なんもやってないのに使えないとか言うななのだ!」
畜生ぐうの音もでねぇ。
「変身なら今終わった!」
刻の方を見ると、服装がピンクっぽい派手な服装に変わっている。
「逆らう奴は滅多刺し、アイビスピンク!さぁ、ここからは私の時間だ!」
刻がポーズをキメて名乗りをあげた。
結構痛い名乗りなはずなのだが、内容が物騒すぎて意外とそうでもない気がする。
「…って名乗ってる場合じゃねぇんだよ!変身終わったならさっさと参戦してくれ!また風魔法くるぞ!」
グリフォンは再び、さっき風魔法を放った時と同じ前振りをしている。
「まぁ待ちなよ。全く、風情がわからないんだから。じゃあ、この害鳥!とっとと逝きなさい!流星射弾!」
刻が光る玉のような攻撃を正面のグリフォンめがけて放った。
そして、それは刻の真横にいた俺の前髪をかすめ、その先の木に着弾した。
「なぁ、当たってねぇどころじゃねぇんだけど」
「やっぱり腐っても禍赤級、一筋縄じゃあ行かないか…」
「おい、刻?」
「麻義、刻は魔法は使えるが狙いをつけるセンスが絶望的で、遠距離が絶対に当たらないいのだ」
…今なんつった?
「絶対は言い過ぎなんだけど。100回に1回はちゃんと当たるから!」
「すみません、ちょっと何言ってるのか分かりません」
攻撃ヒット率1%?
え、実用性皆無すぎない?
「ギュイャァァァァァ!」
刻の能力に思考停止しているとグリフォンが鳴き、風魔法を放ってきた。
「っ過硬障壁!」
しかし俺はすんでのところで反応し、風魔法を防ぐことができた。
さて、ここで考えてみよう。
現在の戦力は、
・遠距離攻撃が使えない上に学習能力がないバカ
・魔法攻撃が99%使えない魔法少女
・格上には絶対に勝てない俺
の3人
……………………。
グリフォンが再び突っ込んできた。
「おい逃げるぞ!くっそ、この戦力でどう勝てってんだ!」
「はぁ⁈そんなことするわけないでしょ⁈敵を背にして逃げるなんてあってはならないでしょ!あ、待てコラ逃げるな!」
「あ、待つのだ2人とも!次は、次いけば多分攻撃できる気がするのだ!」
この2人はどうしてこの状況で危機感すら抱いてないんだ!
てか咲楽はなんかパチンカスみたいなこと言ってるし!
と、言うことで至る現在。
「ふざけんなよお前ら!!畜生、初日からこれかよ!!なんで俺がこんな目にぃぃ!!」
俺は逃げながら虚空に不満をぶちまけた。




