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Chaos〈カオス〉 〜こんなバグった世界だが、俺は意地でも平穏に暮らしたい〜  作者: 身勝手な鶏
2章:井の外の海は広く、個性は遥か地平線まで渋滞する
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初陣編 Ⅰ ありもしないスポーツマンシップと合法的卑怯

入隊編の数時間後、麻義の初陣です

「さて、じゃあ力試しといこうか!」

山の中の道路みたいな所に着地した途端に刻が目の前を指さした。


俺は突然刻に連行され、ホウキに乗って異界門(ゲート)から出たものの討伐されずに現世に居座っている魔物の討伐に来ていた。


そして今刻が指した先にはなんか赤くてでかいサイみたいな奴がいる。


「えーっと?名称、レッドライノス。崩橙級オレンジランクの魔物で、炭化したものを主食にする。防御力と攻撃力が非常に高く、攻撃がほとんど通らない。表皮体温が非常に高く接近すると火傷で死ぬ恐れがある…と」

俺はあの赤いサイを画像検索して、説明を読み上げた。

最近のGoggleレンズとAIは本当に優秀だと思う。

「で、俺にあいつを倒せと。おい、初戦闘なのにハードル高すぎるだろ。あいつ近づいただけで火傷で死ぬらしいぞ」

「ハッ、あの程度の奴に怖気付くとは! 神速の終幕(エンドロール)が聞いて呆れるわ!」

いや怖気付いてはないんだけど

「まぁ、たとえ勝ち目が無くても戦ってもらうからね。今日はあいつを倒せるまで帰れないと思いな」

何を言っているんだこいつは。勝てねぇ相手を倒すとか、なんだその昭和の運動部みたいなのは。


…それだけで帰れるのか。


縦穴生成ジェネレート・フォール土壌生成ジェネレートソイル

俺はスキルでサイの真下に落とし穴を生成、そして上から土をかけて生き埋めにした。

サイは落ちる瞬間に少し鳴いたものの、抵抗する間もなく落ちた。

「おー、あの赤いサイを瞬殺しちゃったのだ」

咲楽が生き埋めにした地面の上をパンパンと叩く。

「ほら、言われた通り倒したぞ。んじゃあ俺は帰るな」


こうして俺は無事初戦闘を終え、帰路に着いたのだった。




初陣編・完




「ちょっと待ちなさい」

刻が帰ろうとする俺の肩を掴んだ。

「なんだよ、言われた通りちゃんと倒したぞ。もう帰っていい…」

「訳ないでしょう?!何あのふざけた倒し方は!正々堂々戦おうって気は無いの?!」

「無い」

姉の言葉に『ルールが無いなら何をしたっていい。ルールがあるなら裏をかけばいい』というものがある。

スポーツマンシップっつったって俺はスポーツマンじゃない。

故に俺の辞書に正々堂々という文字は無かった。

「即答するな!あれでいいとでも思ってるわけ?!こんなんじゃ全然力試しになんないわ。ほら次の討伐行くよ!」

「はぁ?!」

「異論は認めない。行くよ咲楽!」

「分かったのだ。あ、刻、次は食べられそうな奴がいいのだ」

俺は再び首根っこを捕まれ、刻に連行された。



『キラーバニー 崩橙級オレンジランク

額に1本の角を持つ肉食のウサギ型の魔物。

体力防御力は低いが機動力が非常に高く、攻撃力も高水準。

数十個体の群れで行動し、牧場を食い潰したという被害報告もある。

非常に大食いで悪食。時には群れの仲間を食べることもある。』


連行された先にいた魔物を上空から画像検索したらgoggleレンズになんか怖いことが書いてあった。

なんだろうこの殺意高すぎる小動物は。

「見ろあさぎ、あいつら味方食べてるのだ」

咲楽の視線の先を見ると、キラーバニーの死体に他の奴らがたかっていた。

皆相当空腹なようで、一心不乱に仲間の死体を貪っている。

「うっわ、狂気だな」

目の前のおぞましい光景に思わず鳥肌が立つ。

「それじゃ、あれ倒してね?」

「…やっぱり?」

まぁここに来た時点で予想ついてはいたけれども。

ついてはいたが嫌すぎるんだが。

あれ狩ったら呪われたりしねぇだろうな。

「どうしてもか?」

「当然」

「あいつら鶏肉っぽくて割とうまいのだ」

嘘だろ。

あの狂気ウサギ食うのかよ。

「いやでもあの数だし、ここは協力した方が…」

「つべこべ言ってるとあの群れのど真ん中に突き落とすよ?」

囮像スタチューオブデコイ

俺は刻の言葉を聞いて即座に群れのど真ん中にヘイト寄せの像を出した。

するとウサギ共はそこに一目散に飛びつき、だるまのように像にたかっていた。

即席牢獄クイックプリズン

そしてその周りにウサギ共を囲うように牢獄を生成した。

「ちょっとあんたまた…」

瞬間豪雨スコール

俺は刻の言葉を遮って牢獄の中に大雨を降らした。

「ほいラスト、落雷ライトニングー」

そして仕上げに牢獄内に雷を落とした。

中のウサギ共は大した耐久性も無いので当然まとめて感電死していく。

「おー。また一瞬で終わったのだ」

咲楽は牢獄を解除したところに転がっていたウサギの死体の耳を掴んで持ち上げ、まじまじと見ていた。

正直、白目剥いてる狂気うさぎを涎を垂らしながら美味そうに眺める神経はどうかと思うのだが。


「…よし、んじゃお疲れっしたー」

「待て」

食い気のネコ娘を横目に帰ろうとした俺の肩を刻がまた掴んだ。

「なんだよ、今回はちゃんと自分で攻撃して倒したぞ」

「じゃあ次行こうか、あとはなんの討伐が余ってたかなぁ」

刻がまた俺の話をガン無視し、俺の肩を強めに掴みながら片手でスマホをいじっている。次の獲物でも探しているのだろう。

「なぁ、俺もう帰って良くな…」

「あ、こいついいな。よし、咲楽、移動だよー」

ダメだ。相変わらず全く話を聞いてくれない。

「えー、一匹味見していきたかったのだ」

正気か?生食?この狂気うさぎを、生食?

「次は…えーっとあっちか」

刻は今度は咲楽の言葉を無視し、地図と周囲に交互に目をやっている。

ちなみに俺は肩から首根っこへと掴まれるところを持ち替えられ、再び連行される体勢になっている。

「なぁ、俺もう帰りたいn…」

「一口、とき、一口だけでも…」

「よーし異論ないね?Lets,Go!」

…うん。どうやらこいつは難聴か認知症らしい。


こうして再び、俺は為す術無く刻に連行された。




『モンゴリアンデスワーム(日本種) 崩橙級オレンジランク

主に地中に生息するUMA。全長は数十mとされ、細長くブヨブヨとした体に口のみの顔を有する。

時折地上に出没すると人含め他の生き物を捕食し、丸呑みにする。

皮膚が厚いため防御力が高く、機動力もそれなりに高い』


本日3体目の討伐対象のいるところへと辿り着いた。

goggleレンズにかけてみるとそこには特に違和感のない説明が書かれていた。

書かれていたが…

「でっか。てかキッショ」

アニメとかでは割とメジャーな方の奴なのだが、実際に見てみるとその体は2、3階建ての建物くらいの大きさがあり、結構な威圧感があった。

あと、質感といいヌメついた皮膚といいとても気色悪い。

「よし行け」

刻がとうとう命令形になった。

俺の就職先は軍隊か何かだったのだろうか。

「なぁ、俺たち本当に今日初対面なんだよな?なんで最初っからそんな上からなんだよ」

「そんなの私が上だからに決まってるでしょ?あと何度も言うけどあんたは私の(かたき)で、あんたにかける愛想なんてないんだよ」

いや、そんな当然のことのように言われても。

「麻義ぃ、刻は人の話を全く聞かない上に頑固で、しかも価値観が終わってるから対抗しようとしてもどうにもならないのだ」

「そういうことだよ」

どういうことだよ。

なんで褒めらてないのにこいつはドヤ顔してんだ?

「あーもう…さっさと殺りゃあいいんだろ?んじゃ、束ば(バインd)…」

「次卑怯な手で討伐したらあんた3日は寝かせてやるから」

「………」

あいつを縛り上げて干からびるまで放置しようとしていた俺に刻が言った。

それで別に卑怯だとは思っていないが、俺はなんとなく詠唱を中断した。

「んじゃあ毒魔法とかは?」

「あ、あいつは蒲焼きにすると美味いから別のにしてほしいのだ。」

…嘘だろ?狂気ウサギのみならず、あのきっしょいミミズも守備範囲なの?

…流石に嘘だろ?


咲楽の方を見ると、あのミミズを涎を垂らしながら見ていた。

うん。まじかこいつ。

「なぁ、我慢できないか?今度すき屋のうな牛でも食えばいいじゃん」

「何を言うのだ。うなぎとこのミミズが同じ味なわけがなかろう?それに、多少食べられるやつを獲っとかないと真凛が月末に三食雑草生活になるのだ」

…どんだけ金遣い荒かったら普通に働いてんのに雑草生活するハメになるんだよ。

畜生、あのクズはこの場にいなくても俺の邪魔をするのか。

「…ねぇ、そんなとこで突っ立ってると…」

『バクッ』

「食べられるよ?」

咲楽と話していたら上からミミズが襲いかかってきていたのに気付かず、俺はあっけなく食われた。

もっと早く言って欲しかったとミミズの口の中で強く思う。

「(あさぎ⁈大丈夫か⁈)」

うっすらと咲楽の声が聞こえる。

まぁ、もともと魔力鎧(マジックアーマー)という常時防御のスキルを使っていたのでさほど被害はなかった。

…あのキショミミズの口の中にいるという事実からの精神的被害と、口内の臭さと、逆さになっててめっちゃ頭に血が上るということを除けば…だが。

なんか吐き気がしてきた。さっさと出よ。



「ただいま」

「へ?あんたあのミミズの中にいたんじゃ…」

刻が驚いたように目を見張った。


さっき俺は、毎度お馴染み多目的機球(マルチオーブ)での呪符転移(ポイント・テレポーテーション)で難なく脱出していた。


「あん中超絶臭いんだよ。何分もいたら嗅覚死ぬから」

「それですんなり出れるのはおかしいと思うのだ」

失敬な。どいつもこいつも人を異常者呼ばわりしやがって。

「…まぁ、所詮出れただけでしょ。倒してもいないんだから終わった気になるのは早いと思うんだけど」

「あぁ、それならもう終わるよ」

「「は?」」

俺はミミズの方に向き直った。それを見て二人もミミズを見る。

「はい、ボーンッ」

それから程なくしてミミズの中に置いてきた手榴弾が爆破。ミミズは口から煙を吐いて生き絶えた。

「「えぇ…」」

急に倒れたミミズを二人が呆然と見ている。

「んで?あれ食うのか?」

未だ何も言わない二人に尋ねた。

「…まぁ食べるが、さっき私を異常者でもみるような目で見といてあいつに食われても平然として爆弾置いてくる神経もどうかと思うのだ」

こいつ、さっきから結構ずけずけとものを言うな。

「だからさぁ、俺は至って常人だよ。よし、じゃあ俺は今度こそ帰るから、こいつ運ぶなら…まぁ頑張れ」

「あんたも学習しないね?」

また刻に帰ろうとした俺の首を掴まれた。俺の肩から首を手すりとでも思ってんのだろうか。

「いや、俺は今度こそ帰るぞ。今回は攻撃もされたんだ。しっかり戦ったと言って差し支えないだろ」

「差し支えるに決まってんでしょうが。あんた馬鹿?腹ん中に爆弾置いてきただけでなんで戦ったことになると思ってんの?」

…まぁ、はい。そうですね。

「…ってことは…」

「あんたはまだ帰らせないから。もう次は手加減なしで強い奴当ててやるから覚悟しな?」

えぇーー……

「返事は?」

「サー、ノー、サー」

「よろしい。じゃ、行こうか」

何がよろしいのか、刻がまた俺を引っ張った。

…こいつはまじで、一回耳鼻科に行ったほうがいいんじゃないだろうか。

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