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Chaos〈カオス〉 〜こんなバグった世界だが、俺は意地でも平穏に暮らしたい〜  作者: 身勝手な鶏
2章:井の外の海は広く、個性は遥か地平線まで渋滞する
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入隊編Ⅲ ゴリラ握力系魔法少女とのだ口調系猫耳少女

多分入隊編最終回です

「お前が神速の終幕エンドロールだな?」

ときが俺の方を掴んだまま言った。掴む力がだんだんと強くなっていてかなり痛い。

「知りません人違いだと思います。あと痛いので手離してもらっていいですか?」

神速の終幕エンドロール、とぼけたって無駄だよ。お前が私のかたきだということはもう分かってんの。さぁ、今までの落とし前きちんとつけてもらおうか」

ときは一向に手を離す気配は無い。どうしよう、人の話を聞かない系だ。

「あの、俺たち初対面ですよね。俺の記憶にあなたはいないんですけど」

「そうか、私もお前を見るのは初めてだよ。だけど私はお前に恨みがあんの」

どうしよう、話は聞いてくれたけど全く思い当たらない。

「スミマセン、心当たりがないんですが。俺何かしたんですか?」

「はぁ?お前そんなのも分かんないの?!自分の胸にでも聞いてみな!」

どうしよう、質問に対する一番困る回答だ。

心当たりがないっつってんだよ、自分の心ほじくり返したって分からんわ。

「心に聞いても分からないんですk痛い痛い痛い痛い!!!」

ただ事実を伝えただけなのに肩を掴んでいた力が格段に上がった。ほんとどうしてこう俺の周りは理不尽なんだ。


「…っその手を離せいい加減!大体誰だよお前!今んとこお前の情報名前くらいしかないんだけど?!」

「出た!麻義のとーとつなタメ口!」

真凜が言った。

このアホはいつだって、少しだって空気を読まない。

「ふん、それもそうか。私は…」

「刻ぃ、急にすごい速度で置いていかないで欲しいのだぁ」

ときが自己紹介をし始めた途端、また外から制服を着た少女が入ってきた。また別の隊員だろう…か…?

「…は?」

こんな世界の中でもなお異常な容姿に目を擦ってみるが、見間違いではなかった。


女の年格好は刻と同じくらいだが、その容姿が異常だった。

「あー、最初はそんな反応するわよねー」

呆気にとられている俺に真凜が言った。ちなみに真凜は未だに拘束から出られていない。

……………

「痛い痛い痛い痛い!!!!」

「ちょっと咲楽!人の名乗りをかき消さないでくれる?!」

俺が咲楽と呼ばれた少女を見て呆然としていると、ときが再び肩を掴む手を強めた。怒りの対象はこの少女なのに、飛んだとばっちりだ。

「マジでいい加減離せ!肩もげて死ぬわ!!」

「あ、ごめん」

俺への怒りは多少それたのか、から謝りして意外とすんなり離してくれた。

離されたたタイミングで俺は改めて咲楽と呼ばれた少女を見てみた。

うん、やはり間違いない。

少女の格好は、まだ冬だというのにへそ出しスタイルの制服にショートパンツ、ピンク色でボサついたロングの髪。そして、髪と同じ色の猫のような耳と尻尾が生えていた。


この世界はこんなバグった世界だが、所詮は元の世界と同じ人間の世。元々いなかった亜人なんかはほとんど暮らしていない。だから、こんな格好のやつはコミケとかハロウィンの渋谷とかじゃないとほぼいない。

…はずなのだが…

………?

「…っ痛だだだだだだ?!?!?!?!」

一体どういう握られ方をしたのか、痛みが遅れてやってきた。

その後はまじでしばらく痛みが引かず、長いこと悶絶した。


「私は如月刻(きさらぎとき)、最強の魔法少女を目指す、探索者の分隊(サーチャースクワッド)の戦闘員。よろしくする気はないから」

「私は獅子王咲楽(ししおうさくら)、刻と一緒でここの戦闘員で、半獣人なのだ。よろしくなのだ!」

「遅れましたが、私は()()千歳(ちとせ)と申します。ここでは呪術師の職を担っております」

痛みが引くまで悶えること十数分、一応痛みも落ち着いたので本日2回目の自己紹介イベントに入った。

敵を自称する怪力魔法少女、のだ口調の猫娘、拷問系呪術師か。うん、すでに属性が渋滞してる。

猫半獣人とか魔法少女とか実在したのかとか色々言いたいことがあるんだが。

…は?魔法少女?

「魔法少女って、あのマジカルなんたらとかリリカルなんたらとかなんたらマギカとかのあの?」

「そう!私が目指すのはそんな、しなやかで美しくて最強の魔法少女だよ!」

刻がポーズを決めて言った。

「いや魔法少女って。あんなゴリラみたいな握りょk…」

『ズガッ』

言いかけた時、脳筋少女が俺の頭の横の壁を殴った。壁には盛大にヒビが入り、手は壁に5センチほどめり込んでいる。

「なんか言った?」

目が怖い。なんか覇気が宿っててとても怖い。

「い、いや。なんでもないです」

うん、こいつとはなるべく敵対しないようにしよう。今目の敵にされてるのも早いとこ誤解を解いておこう。

強くそう思った。

「それで、お前はなんて言うのだ?」

咲楽が事務椅子に逆に座って言った。壁破壊には少しも動じていないところをみると、これも日常茶飯事なのだろうか。

「あー、俺は麻義。小鳥遊麻義だ。あなた方と違って大して属性のない一般人だy…」

「そいつの属性は鬼畜ニートよ」

真凛がまたも俺の言葉を遮った。

こいつホントいらんことしか言わねぇ。


「よしちょっと黙ってようかみの虫」

俺は未だ縛られているみの虫の首元に!氷結魔法をかけた。

「ぎゃあぁぁぁぁぁ!!!」

みの虫が本日何回目かの悲鳴をあげた。

…なんか、千歳がこっちを感心するように見てくるんだが。気のせいだよな?



「さてと。じゃあ自己紹介も済んだことだし副長、私こいつの腕試しに行ってくるから。行くよ咲楽」

「は?」

真凛がひとしきり泣いたあと、(とき)が俺を指して言いだした。急に何を言っているんだこいつは。

「それはいいですね。小鳥遊さん、急ですが私は仕事に慣れてもらうためにも早めに行っておいてもらいたいのですが、どうですか?」

えぇ、なんで草薙さんも乗り気なんだ?

あぁそういえば、他の隊員がいたら一緒に討伐業務に行ってもらいたいとか言ってたな。

「いや、さすがに急すぎじゃないですか?それに俺はシフト決めないとですし…」

「お黙り?私はさっさと神速の終幕エンドロールであるお前がどの程度の実力か見たいんだよ。実はザコかったなんていったら仕留めたときに歯ごたえがないからね」

え?俺仕留められる前提なの?

「それにこの仕事は結構特殊なものなので、雰囲気を知ってからシフトを決めた方がいいと思いますよ?」

えぇ、この人さっきから労働への押しが強すぎないか?

今日はシフトだけ決めれば帰れると思ってたのに。帰れる希望が出たあとの追加の仕事が一番精神にダメージが入るのだが。

「いや、そうはいっても気持ちの準備とか物の準備とかありますし」

「あぁ、そういえば今日から討伐業務をしてもらうと通達していませんでしたね。

ならしょうがないので今日のところは…」

草薙さんが残念そうに言った。お、これはまだ希望あるか?

「でも麻義あの便利な球くらいしか必要な道具ないわよね。それもさっき持ってたし。」

真凜が草薙さんの言葉を遮った。

畜生こいつマジで余計なことしか言わねぇ!

「いや、でも…」

「うっさいなあんたはさっきからグダグダと!拒否は認めない、ほら行くよ!」

刻が俺の服の後ろの襟首を掴んで引っ張った。

俺は一応抗おうと足に力を入れているが一切止められる気配がない。

「待て手ぇ離せ苦しい!」

しかし刻は離さない。

あっ、これ、俺詰んだな。

「あ、ちょっと待つのだ刻!」

咲楽が呼び止めるが、刻は止まらない。

「ねぇ、私も行きたい!てか麻義とは私が一番関わってるんだし、私も行った方がいいわよね!」

「あなたは仕事ですよ?」

「ギャアァァァァ!!!」

真凜もついてこようとしたが、また千歳から不快感を与えるスキルを食らってている。

「行ってらっしゃい小鳥遊さん、いえ、小鳥遊隊員、如月隊員、獅子王隊員。検討を祈ります。」

あー、もう何がなんやら。

しかも誰もこいつを止める気配がねぇ。

はぁ、初日からこれかよ。もう帰りたいぃ…


俺は刻に引きずられながら、拠点の庭の青く高い空をただ呆然と見上げた。

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