第7節 ワルツライト2
「何、お前エンプキスを知っているのか?」
「もちろん知っているよ。そしてネーベルリンツのニールが奴らを探しているってことも」
そう答えるワルツライトであったが、ニールはこの少年がいったい何者なのかが引っかかって仕方がない。というのも、もしかしたら彼がエンプキスの手の者で、ニールを誘い出すための罠なのではないかという不安が払拭できないからだ。
「お前、一体何者なんだ?」
「へ?だから言ったじゃん、俺はワルツライト。ただのワルツライトだって」
「だから何故そのただのワルツライトが俺に近づいて来たんだよ?」
「興味があったからさ、どんな奴なんだろうって」
「なんで?」
「・・・英雄ラズローの息子だから」
「な!?」
その言葉にニールは面食らう。その事はジマたちネーベルリンツのメンバーにも知られていないし、教えてもいない。ましてや秘密にしているとすら言ってもいい事実を、何故いま出会ったばかりのコイツが知っているのか。
「なんだ、バレちゃマズかったのか?」
ホントは知ってたけどねと言わんがばかりに、鼻歌混じりにシラを切っている様子でワルツライトは問いかけてくる。これでは少年を問い詰めて正体を探ってやろうとしていたニールの方が、反対に手玉に取られて追い詰められているではないか。こうなると残念ながら交渉力では、ワルツライトの方が上手であると認めざるを得ないのだろう。それが証拠にあれこれと考え事をしているうちに、会話のイニシアチブを次々に持っていかれる。
「それよりも、エンプキスとやりあうんだろ。手伝ってやろうか?」
「なんでお前が?何の得もないのに」
「なんでって、そりゃネーベルリンツのニールと、お近づきになりたいからだよ」
「・・・気持ち悪いヤツだな」
「って、ソッチの気はねえよ!」
慌てふためいて弁明するワルツライトの姿を見るに、どうやら悪い奴ではなさそうだ。しかし本当に信用しても良いものかと考えあぐねていると、通りの向こうから"コッチだ早く来い"という声が聞こえてきた。恐らくさっきシッポを巻いて逃げた背の高い男が、仲間を引き連れて戻ってきたのだろう。
ああいうヤツに限って、仲間が増えると態度もデカくなるんだよとワルツライトが悪態をつく。
「どうする?悠長に構えてる余裕はなさそうだけど」
「もちろん、やってやる」
「いいね!じゃあ付いてきな」
そう言ってワルツライトとニールは裏通りを走り出した。




