第6節 ワルツライト
「なんで俺がニールと組むんだよ!?」
ツーマンセルの組み合わせを決めた時、エッツォがやけに不満を口にした。だからジマかバフと組んで、すぐにどこかへ消えようという算段だったのだろうと用心はしていたのだが、ニールがちょっと目を離した隙にエッツォの姿が見当たらなくなってしまう。ほんのわずかな隙だったのに。
残ったのがニールなので急な襲撃を受けたとしてもさほど不安はないが、これが他のメンバーだったとしたらと考えるとやりきれなさは否めない。
最近特に非協力的エッツォの態度が目につく。
都合が悪くなるとすぐに消えるくせに、稼ぎの取り分を配分するときには都合よくどこかからか現れて、しっかり自分の取り分だけは持っていく。
このままでは他のメンバーの不満も溜まるので、そろそろ何らかの手を考えなくてはいけないのだろう。なぜエッツォはこうも面倒ごとばかり持ち込んでくるのか。
そんな事を考えていたら誰かが声をかけてきた。
「へ~、お前がニールかぁ」
声の主は小柄な少年といった感じで、ニールよりもひとつかふたつ年下のように見える。
少年は背後に背の高い男をひき連れて、さらにその後ろの方には取巻きらしい数人の子供たちがこちらの様子を窺っているのがわかる。
「お前は?」
まさかヤボイが直接出てきたのかと疑いもしたが、そんな男じゃないはずだと思い直して少年に尋ねてみた。信用できない相手なら名乗りもしないだろうと思ったのだが、拍子抜けするほどあっさりと少年は自分の名前を告げた。
「ああ、俺はワルツライト。なあ、お前この男と戦ってみろよ」
そう言いながら少年は、自分の背後に立つ男を指差した。
見るからに背後に立つ男の方が強そうなのに、なぜワルツライトの方が背後の男を使っているのか。この少年の正体がいったい何者なのか気になる。
「(それになんで俺のことを知っているんだ?)」
どうしようか面倒だから逃げるかという事も頭をよぎったが、どうやらこちらの様子を窺っている連中に囲まれているようだ。となれば大人数を相手にしなければならないような可能性がある時には、できるだけアタマをはやく討ち取った方がいい。そうすれば大半の下っ端は戦意喪失して逃げてくれるからだ。
「なら、お前が来いよ」
ワルツライトに向けたその言葉に、少年は意表を突かれたという表情を浮かべて、「ああ、うん。そうだな、そうなるよなと」勝手に納得したような独り言をつぶやき、またも拍子抜けするような答えを返してきた。
「へ?だってオレ、ケンカ弱いんじゃん」
「ちょっ、お前おかしいだろ」
「なんでだ?」
「お前がアタマなんだろ!」
「いんや、オレはこいつらの頭じゃねえよ」
「じゃあアタマでもないお前が、なんでお前より強そうな奴を使ってんだよ!」
「それはだな・・・」
そんなやり取りでニールとワルツライトが言い争っていると、さっきまで彼の背後にいた男と取巻きの子供たちの姿が消えていた。大きな図体して逃げ足だけは速いというのは何とも滑稽だったが、後には気まずい微妙な空気だけだけが取り残された。
「で、どうするんだよ?」
「どうもしないさ」
「なんだそれ」
「この向こうでニールなんか大したことねえから俺がやってやるって、さっきの男が皆の前で言いふらしてたからさ、聞いてて腹が立ったから"じゃあオレが段取りしてやるよ"って連れて来たんだよ」
たしかに言っていることは格好いいが、人にトラブルを持ってきて自分は何のリスクも負わず見ているだけならば、コイツも同罪というか迷惑なだけじゃないかとニールは苛立ちを抑えきれない。
「違うさ、いざとなったらオレもお前に加勢するつもりだったよ」
「適当なこと言うな。お前弱いって言ってたじゃねえか!」
そのとき一瞬ワルツライトの雰囲気が変わる。
「・・・まあ強くはないけど、あんなヤツに負けるほど弱くはねえよ」
その何か底のしれない威圧感にニールは気後れしそうになるが、踏みとどまって冷静に考える。
「後からなら何とでも言えるだろ」
「まあそうなんだけどさ、ちょっとエンプキスとつながりがあるからって、ああいう自分のモノでもない権力を笠に着て威張り散らすヤツが見てて一番腹が立つんだよ」
「何、お前エンプキス知ってるのか?」
「もちろん知ってるよ」
ワルツライトは含んだ笑みを浮かべて、そう答えた。
どうでもいい情報ですが・・・。
ブールノイズの景観は、チェコのプラハをちょっとイメージしています。
あの街はファンタジー好きにはたまらないってくらい良いです。
興味ある方はネットで見てみて下さい。
いろんな想像力を刺激されて幸せな気分になれる・・・かもです。
ではまた。
°Note




