第4節 タンブラー
ーとある深夜ー
早目に客を締め出して、ガランと人気のないオーズキッチンの店内。
そんな静かな店内で、むさ苦しい中年男二人が小さなテーブルを囲む。
男たちは僅かな料理をつまみにグラスを傾けていた。
「ちょっと待ってな!今すぐに、もうちっとマトモなつまみを持っていくから」
厨房からジュウジュウと香ばしい匂いと音をさせながら女が語りかける。
「そんな気を遣わないでくれ、ジュネ」
「バカだね、そんな人に遣えるほど繊細な気なんか持ちあわせてないよ!」
「・・・確かに」
「オイそこ!納得してんじゃねえ!」
女の亭主はこの後の仕返しを想像して、思わず苦笑いを浮かべる。
「それで・・・、この五年もの間どこで何をしていたんだ?」
「まあいろいろとな、あちこちを放浪していたのさ」
「あちこちねぇ」
オーズはモヤモヤした思いを一掃するかのように、グラスの中身をぐいっと喉に流し込む。
そしてピアズはオーズの空になったグラスに酒を注ぎ、何かを考え込むような仕草を見せた。
「ラズローと何か関係あるのか?」
「・・・」
ピアズは友人の問いかけに答えられない。
そのとき厨房から、熱い鉄板に乗った料理を抱えてジュネがやって来た。
「ホラよ、お待たせ」
ジュネはドンと雑に鉄板をテーブルの上に置くと、オーズの隣に腰掛けてから彼の酒が入ったグラスを横取りして一気に飲み干す。そのグラスに酒をつぎ足しながら、ピアズがしみじみと漏らす。
「本当に夫婦になったんだな、何だか不思議な感じだよ」
「そりゃそうだ、コッチだって今だに不思議なんだから」
そう言ってガハハと笑うジュネに、ピアズは本当によかったなと心の底から思った。
「こんなものは勢いだよ!あれこれ細かいこと考えてたら出来やしねえし」
「そうか。まあ、意外とそういうもんなんだろうな」
何か思うところがある様子のピアズはグラスの酒を少しだけ口にする。
「エドはよぅ、昔から細けえこと考えすぎなんだよ!こんなもんガッと行って、ズカッとやって、バーンだよ・・・って、抽象的過ぎるか?」
「いや抽象的なままでいい。細かいことまで要求したら、ジュネは聞かなくていい事、聞きたくない事まで言い出しかねないからな」
「ガハハハッ、当たり前だろ!耳を塞ぎたくなるまで教えてやるよ」
「いや遠慮する」
「それよりも、どうだったんだ?」
「ん?」
ひとしきり笑った後で真顔になったジュネが突然尋ねてきたことの中身を、ピアズはあらかた推測出来てはいたが、それが的を得ていたならあまり気の進む内容ではなかったので、わざとシラを切るようような態度を見せた。
「リヴィエラだよ、行ってきたんだろ?」
やはりなと思いながら、ピアズは付き合いが長いと余計なところまで意思の疎通ができるから考え物だという言葉を飲み込んで、代わりに別の言葉を返した。
「あまり良くはない感じはしたが・・・」
「そうか。エドがそう感じるなら、やっぱそうなんだろうな・・・」
「俺らも店があるってのもあるんだが、アイツのあんな姿見てらんなくてよ」
「そうだな」
場が暗い雰囲気になるのを察して、ピアズは話題を変える。
「ところで、ラズローの子はこの辺にいるのか?オーズ」
「ニールか?ああ、ストリートチルドレンの子供たちとつるんで、この辺りをウロついちゃいるな」
「あまりいい噂は聞こえてこないけど」
オーズの言葉を補足するように、すかさずジュネがつなぐ。
「何をやらかしたんだ?」
「盗みにケンカ、エスペランザの兵にまでちょっかいを出してるっていうんだから、全くいい度胸だよ。いったい誰に似たんだか」
「そういう意味じゃ、ラズローに似てんじゃねえのか?」
「だけど、あんな薄氷の上を踏むような生き方してたんじゃ、命がいくつあっても足りないよ!」
「まあちょっとばかし危うくはあるけどな。で、リブに何か言われたのか?」
オーズ夫妻の話を黙って聞いていたピアズだったが、突然の問いかけに戸惑いつつ答える。
「ああ、まあ・・・。なあ今度、それとなしにその子に会わせてくれないか?」
「別に構わんが?」
信用のおける友人の頼みでもあるし、この男なら悪いようにはしないだろうとオーズは快く了解した。
う~ん・・・。
ネタ帳ではこのタイトルもっと面白い筈なのに、書いた感じ思ったよりパッとしてない。
ちょっと色々考えています。
°Note




