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悪逆王の無茶ぶりがすべて村の発展に変換される件について 〜実は我が村、地下帝国と化して王国経済を乗っ取り中〜  作者: チラミン


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#29 アトラクション感覚の防衛戦

自慢の重魔導戦車隊が放った砲弾が、目に見えない透明な膜――『バウンスフィールド』によってそのまま跳ね返され、先頭車両が派手に自爆した。

黒煙と炎が立ち上る赤錆の平原で、イハカ連邦軍の三万五千の兵士たちは、開いた口が塞がらないまま固まっていた。


「な……なんだと……!? 我が軍の誇る重魔導砲をそのまま弾き返しただと!?」


指揮車の屋上で、総司令官バグラム中将が血走った目を剥いて絶叫する。


「おのれ……! 砲撃が効かんのならば直接踏み潰すまで! 歩兵大隊、ならびに魔導機甲兵隊、突撃ぃぃぃっ! あんなオモチャのようなコース、数と質量で強行突破せよ!」


「「「オォォォォォッ!!」」」


バグラムの怒号に応え、体長四メートルを超える黒鋼の二足歩行兵器――『魔導機甲兵』五百機が、地響きを立てて前進を開始した。その後ろからは、鋭い刺突槍と魔導銃を構えた数千の歩兵隊が、波のように押し寄せる。


彼らが殺気を剥き出しにして雪崩れ込んだのは、第1エリア――【極悪ローション一本橋&超反発エリア】であった。


――ズザーーーーッ!!


「ぐわぁぁぁぁっ!?」

「す、滑る!? 足元が滑るぞーっ!?」


突撃の勢いそのままにコースへ踏み入った瞬間、機甲兵たちの巨大な鉄の脚が、ヌルヌルにコーティングされた特殊ローションによって一瞬でグリップ力を失った。

一機が体勢を崩して横転すると、後ろから続いていた機甲兵たちがドミノ倒しのように重なり合い、ガシャーン! ドシーン! と激しい金属音を響かせて将棋倒しになっていく。


「バ、バカな! 重量数トンの機甲兵が、ただのぬかるみで倒れるだと!?」

「い、いかん! 止まれ! 前が詰まって――」


混乱する歩兵たちの足元で、突如パステルピンクの床がピカッと光った。


――ポヨォォォォンッ!!


「「「ひぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?」」」


踏むと凄まじい推進力を生み出す『超反発ジャンプマット』である。

整然と隊列を組んでいた歩兵数十人が、まるで人間砲弾のように上空百メートルの高空へポーンと打ち上げられた。


「助けてくれぇぇぇ! 空を飛んでるぅぅぅっ!?」

「隊長! 下! 下に何か回転する丸太が――」


絶叫しながら落下していく歩兵たちの行き着く先には、目にも留まらぬ速さで回転する『トゲ付き(※ふかふか安全ゴム製)巨大丸太』が待ち構えていた。


ドゴォッ! バシィッ! ボヨンッ!


「ごふっ!?」

「あはぁぁぁぁっ!?」


跳ね飛ばされた兵士たちは、まるでピンボールの玉のように丸太にポカポカと弾かれ、そのままコースの脇に設置された巨大な水プールへと、バシャバシャと音を立てて豪快にダイブしていった。


「ぶはっ! け、けほっ! ……あ、あれ? 痛くない……?」

「怪我をしてないぞ!? なんだこの水、冷たくて気持ちいい……!?」


水に落ちた兵士たちがパニックになりながら全身を確認するが、骨折どころかすり傷一つ負っていない。驚異的な威力のトラップに見えて、そのすべてにはアレンのカルマポイントによる「完全衝撃緩和(絶対安全)魔法」が施されていたのだ。


しかし、肉体的なダメージがゼロであっても――兵士たちの精神(プライド)は、ズタズタに引き裂かれていた。


* * *


その頃、上空三百メートルのVIP観覧デッキ。


日よけのパラソルの下で、アレンはトロピカルフルーツが載ったパンケーキをフォークでつつきながら、眼下の狂騒曲をのんびりと鑑賞していた。


「うん、ジャンプマットと回転丸太のコンボ、想像以上に綺麗に決まってるね」


「まあ……。あんなに厳めしい顔をした連邦の兵隊さんたちが、まるで豆鉄砲を食らったハトのように空を飛んでいますわ」


隣のチェアで冷えた白ワインのグラスを傾けているクロエが、可憐に微笑む。


「ふむ! 衝撃を無効化しつつ、完璧に敵の戦意と執念を挫く……見事な手腕だ!」

オリビアが感心したように頷き、プロテインをゴクゴクと飲み干した。

「我が近衛騎士団の訓練にも、あの回転丸太を導入したいくらいだな」


「えっ……お、オリビアさん、それは流石に厳しすぎるんじゃ……」

リリアが苦笑しながら、隣に座る美貌のエルフ――セレスティアに視線を向けた。


セレスは、アレンから手渡された『遠距離用精霊アシスト・双眼鏡』を両手で握り締め、目を丸くしてコースを見下ろしていた。


「す、すごいです……! 連邦の恐ろしい機甲兵たちが、まるで赤子のように転がり回っています……! あんなに私たちを苦しめていた悪魔のような兵器が……っ」


過酷な施設で命を脅かされていた過去が、嘘のように思えてくる。

セレスのエメラルドの瞳に、ポロポロと涙が浮かんだ。


「アレン様……本当に、本当にすごいです! 私……私も族長として、何かお手伝いをしたいです! 皆さんの力になりたくて……っ!」


セレスは興奮のあまり、椅子から勢いよく立ち上がった。


――が。


ズザーッ!!


「きゃあぁぁぁっ!?」


期待を裏切らない凄まじい手際で、セレスは自らのサマードレスの裾を思い切り踏んづけた。

そのまま前のめりに倒れ込み、アレンが座るソファのサイドテーブルへ一直線。


ガシャンッ!!


「うあぁぁぁっ!? ご、ごめんなさいアレン様! ジュースが……ジュースがぁぁぁっ!」


倒れ込んだセレスの頭の上に、テーブルから転がり落ちた冷たい完熟マンゴージュースがバシャリと降り注ぎ、彼女の美しい銀髪と顔面をオレンジ色に染め上げた。


「……うぅ……またやっちゃいました……っ」

マンゴーの甘い香りを漂わせ、鼻の頭にジュースの滴をつけたまま涙目になるセレス。


「あはは、セレスお姉ちゃん、本当に毎回転ぶねー!」

リリアが大笑いしながらタオルを手渡す。


「はい、セレスさん。拭いてあげるからじっとしてて」

アレンが呆れつつも優しくタオルで顔を拭いてあげると、セレスは「ふにゃぁ……」と照れ臭そうに身を委ね、耳の先まで真っ赤に染まった。


「あ、ありがとうございます……アレン様……。私、本当にポンコツで……格好悪いところばかりお見せして……っ」


「ううん、セレスさんが元気ならそれでいいよ。応援してくれるだけで、十分手伝いになってるからね」


アレンが微笑むと、セレスの胸がキュンと激しく高鳴った。


(ああ……アレン様は、どこまでお優しいのでしょう……! 私、一生ついていきます……!)


* * *


地上では、連邦軍の地獄が第二段階へと突入していた。


第一エリアをなんとか突破(というより流されて到達)した重魔導戦車隊の生き残りと、全身ローション塗れになった歩兵たち。

彼らの前に立ち塞がったのは、巨大な『大口径ウォーターキャノン砲台群』であった。


「撃てぇぇぇっ! こんなオモチャ、魔導障壁で防いで前進しろぉっ!」


指揮官が叫び、戦車隊が魔導障壁(バリア)を展開する。

しかし、アレンがポイントで購入したウォーターキャノンから放たれたのは、ただの水ではなかった。

超高圧に加圧された、カルマポイント特製の『自動清掃・魔導活性不活化水流』である。


ブシャァァァァァァァッ!!!!!


「ぎゃあああぁぁぁっ!? 目が! 目が洗われるーっ!?」

「な、なんだこの水圧は!? 戦車の装甲が……綺麗になっていく!?」


凄まじい高圧水流が、重魔導戦車の表面にこびりついていた泥や煤、排気汚れをみるみるうちに洗い流していく。

それだけではない。水流に含まれる特殊な魔導不活化成分が、戦車のエンジン(魔導回路)に浸透し、その機能を優しく、かつ完璧に「安全停止」させた。


ピタッ。


「え……? え……!? 戦車が動かん!?」

「エンジンが……停止した!? 故障じゃない、綺麗に磨かれてピカピカになった状態で沈黙したぞ!?」


最新鋭の魔導戦車たちが、まるで洗車場を出たばかりの高級車のようにピカピカに輝いた状態で、沈黙した。


さらに上空からは、パァァァン! パラパラパラ……! と景気の良い音が響き渡った。


アレンの購入した『自動追尾式・お祝い花火ランチャー』が起動したのだ。


空を埋め尽くすのは、色鮮やかな七色の光と、祝福のクラッカー音。

殺伐とした戦場に、まるで祝祭のような華やかな花火が打ち上がり、パニックになる連邦兵たちの頭上に、きらきらと輝く紙ふぶきが舞い散る。


『おめでとうございます! 第二エリア[ぴかぴか洗車&お祝いゾーン]突破です!』


能天気なアナウンスが響き渡る中、兵士たちは完全に戦意を喪失してヘナヘナと地表にへたり込んだ。


「もう嫌だ……帰りたい……」

「なんで俺たち、軍服を綺麗に洗われて花火で祝福されてるんだ……?」

「戦争って……なんだっけ……?」


三万五千の大軍は、誰一人として死者を出すことなく、ただただ圧倒的な「ホワイトすぎるおもてなし(物理)」によって、完全に牙を抜かれてしまったのである。


* **


「ひ、ひぃぃぃぃっ!?」


気づけば、総司令官バグラム中将は一人、コースの最奥部――【ドン・アロハ君の足元】へと打ち上げられていた。


自慢の高級軍服は高圧洗浄機で綺麗サッパリ洗われてビショビショになり、頭には花火の紙ふぶきが乗っている。

彼の目の前には、高さ五十メートルを超える巨大なクマのモニュメント(ドン・アロハ君)が、サングラスの奥から赤い光を放って見下ろしていた。


『ガーデン、タノシカッタカナイ?』


「あ……あぁ……」


バグラム中将は腰を抜かし、股間を濡らしながら(※プールに入ったからだと信じたい)ガタガタと震えた。


三万五千の全軍が、わずか一時間足らずで無力化された。

相手は一滴の血も流さず、一人も命を奪わず、ただ圧倒的な『資金力と技術の暴力』で自分たちを赤子扱いしてみせたのだ。


そこへ、上空からゆっくりと降りてくる光の階段。


ラッシュガードを着た黒髪の青年――アレンが、コーラのカップを手にしてバグラムの前に舞い降りた。

その左右には、優雅なクロエと、力強いオリビアが控えている。


「やあ、総司令官さん。うちのアトラクション、楽しんでもらえた?」


アレンの呑気な問いかけに、バグラムは激しい恐怖で歯をガチガチと鳴らし、額を地面に擦り付けた。


「ひ……アレン様……っ! ご容赦を! どうか命だけはご容赦くださいぃぃっ! 我々は……我々は愚かでした! 貴方がたの力を知らず、不遜な企みを抱いたことを心よりお詫び申し上げますっ!」


かつてイハカ連邦の「鉄の猛将」と恐れられたバグラム中将が、涙と鼻水を流して命乞いをする。


アレンはその姿を見下ろし、呆れたように苦笑した。


「命なんて取らないよ。言ったでしょ、俺たちは安全第一だって。……それより、バグラムさん」


アレンの目が、すっと冷やかなものに変わった。


「君たちの総統さんに、伝えてほしいことがあるんだ」


「は、はいっ! 何なりと! 何なりとお言いつけくださいっ!」


「『これ以上、俺のスローライフを邪魔するなら……今度はこっちから、君たちの国を【買収】しに行くよ』……ってね」


静かな、しかし絶対に逆らえない絶対的な宣告。


イハカ連邦の先鋒大軍勢は、ここに一人の死者も出すことなく完全に崩壊した。

そして物語は、理不尽なブラック軍事国家に対する、アレンたちの新たな攻勢へと動き出そうとしていた。


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