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悪逆王の無茶ぶりがすべて村の発展に変換される件について 〜実は我が村、地下帝国と化して王国経済を乗っ取り中〜  作者: チラミン


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#27 傲慢な使者と、規格外の「防衛システム」

旧アスタロト王国の王都であった場所――現在は巨大テーマパーク『ドリーム・リゾートシティ』へと変貌を遂げたその街の正門に、物々しい一団が到着していた。


黒鋼の装甲で覆われた六脚歩行の魔導馬車。周囲を固めるのは、禍々しい魔力光を放つライフルを構えたイハカ連邦の精鋭護衛兵たちだ。

馬車の中から降り立ったのは、豪華な軍服に身を包み、傲慢さを顔に貼り付けたような初老の男。イハカ連邦軍の上級将校であり、今回の特命使者として派遣されたザルド大佐である。


「……ほう。国が破産したと聞いていたが、ずいぶんと悪趣味なハリボテを作ったものだな」


ザルド大佐は、目の前に広がる光景を鼻で笑った。

灰色の城壁は撤去され、代わりに色鮮やかな光のアーチが街を囲んでいる。遥か上空では巨大な観覧車が回り、街を行き交う市民たちは誰もが笑顔で、片手にクレープやトロピカルジュースを持っている。


だが、軍事力と暴力こそが国家のすべてだと信じて疑わないザルドにとって、それは「弱者の虚勢」にしか見えなかった。


「軍隊の姿が一つも見えん。どこの成金商会がこの土地を買い取ったか知らんが、平和ボケも甚だしい。我らイハカ連邦の最新魔導兵器の前に、こんな遊園地など一時間で火の海になるというのに」


ザルドは薄汚いものを見るような目で街路を一瞥すると、護衛兵を従えて、街の中央にそびえ立つ『ドリームキャッスル(旧王城)』へとズカズカと足を踏み入れた。


* * *


ドリームキャッスルの最上階、かつての王の謁見の間は、今や高級ホテルのVIPラウンジのような洗練された空間に改装されていた。


ふかふかのソファに腰を下ろしているのは、南国風のラッシュガードを着てマンゴーパフェを突っついているアレン。

その隣には、黒いタイトスーツを着こなして端末を操作するクロエと、私服のスポーツウェア姿でプロテインをシェイクしているオリビアが控えている。

そしてアレンの後ろには、エメラルドグリーンのサマードレスを着たセレスティアが、緊張でガタガタと震えながら隠れていた。


「――単刀直入に言おう、下賤な商人ども」


案内されたザルド大佐は、ソファに座ることもなく、アレンたちを見下ろして傲慢に言い放った。


「我らイハカ連邦は、この土地が連邦の保護下(属国)に入ることを要求する。逆らうならば、国境に集結しつつある我が連邦の『機甲師団』が、このふざけた街を蹂躙することになる」


「いきなり物騒だね。挨拶もなし?」

アレンがパフェのスプーンを咥えながら首を傾げる。


「覇者に挨拶など不要だ。そしてもう一つの要求だが――貴様ら、我が国から逃亡した『エルフの資源』を匿っているな? その後ろに隠れている銀髪の女だ。それは連邦の正当な国有財産である。直ちに引き渡せ」


ザルドが鋭い視線をセレスティアに向けた。

かつての恐怖が蘇り、セレスは息を呑んだ。だが、彼女は震える脚に必死で力を込め、アレンの前に歩み出ようとした。


「わ、私は……っ! エルフの新族長として、あなたたちの要求には絶対に屈し――きゃああっ!?」


バサァッ!

気高く宣言しようと一歩踏み出した瞬間、セレスは見事に自分のドレスの裾を踏んづけ、そのまま前方に豪快にスッ転んだ。

絨毯の上を滑り、ザルド大佐の足元で「うぅぅ……お鼻ぶつけました……」と涙目になっている。


「…………」

「…………」


謁見の間に、なんとも言えない気まずい沈黙が流れた。


「……ふん。相変わらず役に立たん欠陥品どもめ。まあいい、さっさとその資源の首輪を持っ――」


「お黙りなさいな、野蛮人」


ザルドの言葉を遮ったのは、絶対零度の冷たさを帯びたクロエの声だった。


彼女は端末をテーブルに置き、眼鏡の奥で鋭い光を放ちながら立ち上がった。

そして、美しい所作で分厚い書類の束をザルドの胸に押し付けた。


「な、なんだこれは?」


「我が『影の天秤』が発行した、正式な雇用契約書、ならびに資産証明書ですわ。よくお聞きなさい。現在、この旧王国領のすべての土地、建物、インフラは、我が商会の『私有財産』として法的に登記されていますの」


クロエはザルドの周囲を歩きながら、理路整然と、かつ容赦なく言葉の刃を突き立てていく。


「国家間の戦争であれば国際法が適用される余地もありますが、貴方がたがこの街に手を出した場合、それは『一民間企業に対する大規模な器物損壊および強盗行為』というただの犯罪になります。我が商会は大陸全土の経済網を掌握しつつありますわ。もしこの街に傷一つでもつけようものなら――イハカ連邦へのあらゆる物資の輸出入を完全にストップさせ、貴国を三日で経済破綻(デフォルト)させて差し上げますわよ?」


「なっ……! たかが一商会が、国家を脅迫する気か!?」

「脅迫ではなく、正当な自衛権の行使(ビジネス)ですわ」


クロエは優雅に微笑み、足元で蹲っているセレスの肩を優しく抱き起こした。


「それに、彼女たちは『資源』などではありません。我が商会と正当な労働契約を結んだ『テーマパークの公式キャスト』ですわ。他社の従業員を無断で連行しようとするのは、明白な誘拐および営業妨害。……連邦の軍人さんは、そんな基本的なコンプライアンスもご存知ないのかしら?」


「き、貴様らぁっ!」


論理と経済力による圧倒的な正論の連打に、ザルド大佐の顔が屈辱と怒りで真っ赤に沸騰した。

彼ら軍人にとって、法律や経済の理屈など関係ない。力こそがすべてなのだ。


「御託を並べるな! 経済がどうであれ、我が連邦の魔導兵器の前に貴様らの命など一瞬で消し飛ぶのだぞ! 所詮は金しか持たない商人風情が、本物の『軍事力』を前にして――」


「あー、うるさいな。パフェが不味くなる」


アレンが冷ややかな声で呟き、立ち上がった。

その瞬間、謁見の間の空気が一変した。ただの呑気な青年だと思っていたアレンの全身から、底知れぬ魔力と圧倒的な強者の威圧感が静かに漏れ出したのだ。


「言葉が通じないブラック国家の連中には、力でわからせるしかないか。ちょうどいい、ポイントが余ってたから新しい『防衛システム』を買ってみたんだよね。お披露目といくか」


アレンが空中に展開したシステムウィンドウを操作する。


《『超巨大迎撃ゴーレム(リゾートマスコット仕様)』を購入。消費ポイント:30,000,000 pt》

《『絶対防御・広域無力化フィールド』を同時展開。消費ポイント:5,000,000 pt》


――ズズズズズズズッ!!


突如、城全体が激しく揺れ始めた。

ザルド大佐が慌ててバルコニーに駆け寄ると、信じられない光景が眼下に広がっていた。


テーマパークの中央広場に設置されていた、高さ五十メートルを超える巨大なモニュメント――アロハシャツを着てサングラスをかけた、陽気な『巨大クマの像』。

それが突如としてズズン、と重低音を響かせて動き出したのだ。


「な、なんだあの巨大なふざけた人形は……!?」


ザルドが叫ぶが早いか、巨大クマのマスコット(ドン・アロハ君)のサングラスの奥が、赤い凶悪な光を放った。


『ウェルカーム、トゥ、ドリームリゾートォォォッ!!』


機械的で陽気な音声が響き渡る。

クマのゴーレムは、手に持っていた巨大なヤシの木(チタン合金製)を、城から数キロ離れた岩山に向けて軽くフルスイングした。


――ドゴォォォォォォォォォォォォォンッ!!!!!


天地を揺るがす轟音。

ヤシの木から放たれた極太の破壊光線が、王都の外れにあった岩山を一瞬にして蒸発させ、真っ白なクレーターへと変えてしまった。


「「「…………」」」


護衛兵たちが持っていたライフルを取り落とし、カタカタと膝を震わせた。


イハカ連邦が誇る最新鋭の機甲兵ですら、せいぜい城壁を壊す程度だ。

だが、目の前の『ふざけたクマの人形』は、ただの素振りで地形マップそのものを消し飛ばしたのである。


「あ、あれはただのお出迎え用マスコットだからね」


アレンがバルコニーに歩み寄り、完全に腰を抜かしているザルド大佐を見下ろした。


「俺は平和なスローライフを送りたいだけなんだ。これ以上、俺の従業員(キャスト)に手を出したり、俺の庭を荒らそうとするなら……次はあのクマに、君たちの首都で『パレード』させることになるけど、それでもいい?」


「ひっ……! ば、化け物……! こんな出鱈目な武力が、存在していいはずが……!」


ザルド大佐は顔面を蒼白にし、床を這いつくばるようにしてバルコニーから後退した。


「て、撤退だ! 全軍、急ぎ本国へ帰還する! 奴らは商人ではない、世界の理から外れた悪魔だぁぁぁっ!」


ザルドと護衛兵たちは、階段を転げ落ちるようにして逃げ出し、乗ってきた魔導馬車を全速力で走らせて国境の彼方へと消えていった。


* * *


使者の姿が完全に見えなくなった後、謁見の間には心地よい静寂が戻っていた。


「あんな脅しで、彼らは諦めてくれるでしょうか……?」

セレスが心配そうにアレンを見上げる。


「いや、諦めないだろうね。ああいう組織は、自分たちの力が一番だと狂信してるから、上の連中は報告を聞いても『敵の幻術だ』とか都合よく解釈して、大軍を送り込んでくるよ」


アレンは残っていたパフェを口に放り込みながら、ため息をついた。


「うむ! ならば私の出番だな! 連邦の主力軍など、私が真正面からすべて叩き斬ってくれよう!」

オリビアがかつての騎士としての血を騒がせ、大剣を抜いて闘志を燃やす。


「ダメだよ、オリビアさん。数万の軍隊と真正面からチャンバラなんて、疲れるし汗臭くなるから俺は嫌だ」

「な、なんと……! では、どうやって迎え撃つというのだ?」


アレンは空中に浮かぶシステムウィンドウをスワイプし、ニヤリと悪戯っぽい笑みを浮かべた。


「せっかくテーマパークを作ったんだから、国境沿いにも『新しいアトラクション』を建設してあげようと思ってね」


「アトラクション、ですか?」

クロエが不思議そうに首を傾げる。


「そう。名付けて、『超凶悪・自動迎撃アスレチックコース』。連邦の軍人さんたちには、せいぜい命がけで俺たちのリゾートのレジャーを楽しんでもらわないとね」


剣と魔法で世界を支配しようとする軍事国家に対して、アレンが選んだ対抗策。

それは、カルマポイントの圧倒的な暴力(資金力)を注ぎ込んだ、常識外れの『要塞化トラップ施設』の即席建造であった。


イハカ連邦の数万規模の軍勢が、地獄のアトラクションで一方的に蹂躙される運命の日は、もう目前に迫っていた。


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