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【一旦完結】ジャガーバルト家の義妹  作者: もにーる
第五章 『生誕』編

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28.内気な患者

毎回、見直す度に修正してる気が…。きっとこれが誤字脱字を生む原因…。


 桜華用の短パン、そして2人分の白Tシャツの作成が完了した。やはりパンツを作るという作業は難易度が高いようだ。

 リュートと桜華…少女と女子高生のモノを作るというイメージは、いくらリュートの姿をしていると言えども恥ずかしいらしい。必要性も重要性も理解しているが、中身は独身の…40歳のおっさんなのだから。


『多分、買うって選択肢なら買える。けど、作るって思うと…なんか恥ずかしくない?』


 …おっさんはどんな恥ずかしい下着をイメージしたのだろうか? それはおっさんにしか分からない。恐らくイチゴ柄とか縞…やはり分からない。

 割り切って作ろうとしては下着をイメージして照れてしまう。何度もそれを繰り返した末、『…いずれ作る』と下着問題を先送りにした。当分は短パン生活のようだ。


 ちなみに、Tシャツの生地は薄いので、布を巻くor2枚重ねは必須だ。…お胸の話である。

 2人(と緋雨)しかいないとはいえ、透けて見えるのは…教育に悪いので。



 その後は話し合いが行われ、翌日から行動を開始した。


 第一層に上り、交代で『CC』を使いながら、お互いモンスターと一対一の状況を作るなどサポートし合ってゴブリンを倒した。レベル上げで最低限のステータスを確保する為だ。

 2人ともジョブは剣士で、侑人は緋雨を持ち、桜華ちゃんは聖剣を持っている。…ゴブリン相手に過剰武器ではなかろうか。


 安全マージンを大幅に取った戦闘で、レベル上げの後半の頃にはサポートは必要無くなっていた。強武器を持ってニューゲーム状態なら、最初からサポートも必要無かったかもしれないが。


 それはともかく、侑人と桜華ちゃんは早くもレベル10に到達した。


「お疲れ様~」

「おてかれ…しゃま?」

『やっぱり『翻訳』が無いと難しい?』

『そうですね…、勝手に変換してくれてたから覚える必要も無かったし。でも良い機会だし、覚えたいです!』

『了解。ただ、俺も難しい言い回しとか分からないから、知ってる範囲でだけどね?』

『うん! よろしくお願いします!』


 桜華ちゃんのステータスには『翻訳』スキルが無い。

 女性の姿のまま活動する時に問題があると思った桜華は、侑人にマギ語を教わっていた。ダンジョンから出た後の事を考えての行動だ。

 静かだった緋雨は、力の制御…主に力を使わない事に集中していた。うっかりで侑人の体力を削ってしまわないように。リュートの姿では微々たる消費でも、まだまだ弱い侑人からすれば割と危険なのだ。


『挨拶系は大体済んだから、あとは日常的に使って覚えていこう』

『了解です侑人さん!』

『…それにしても、中身の変化がすごいね? 心情までは見えてないから雰囲気で察してたけど、思ってる以上だった』

『ふふっ、女優さんで参考にした人がいるんです。ドラマを初めて見た時からファンになっちゃって…』

『あ~…ぁ~…、なるほどね。リンリン主演の?』

『ですです! 結構悩んでた時にたまたまドラマを見て、「拝啓、最愛のボクへ」ってドラマなんですけど、こうすればいいんだ!って思えたの! それからは私自身を肯定出来て───』


 リンリン愛が溢れた桜華ちゃんのテンションは高かった。

 侑人は話を聞きながら、


(確かにそんな記憶も見えてた気がする。…美鈴さんもこっちに来てるって伝えたら驚くかな? …いきなりご対面とかどうだろ)


 と、こっそりイタズラを考えていた。

 成功させる為にはダンジョンからの脱出が絶対条件。脱出出来たとしても不安要素の時代問題もある。果たして無事成功するのか…いつになるのか。


 …おそらく2年後くらいには無事成功するのではないだろうか。


『とりあえず、目標の1つをクリアしたからセーフエリアに帰ろうかな?』

『ですね、次は魔術の習得でしたっけ?』

『だね。戦闘の幅は広げたいし、いい加減そろそろジョブの変更も触っておかないとだし』

『属性魔術の適性は変えられないけど、上級職になれば適性増えますからね~』

『その辺は知らなかったからなぁ。ガンガンジョブ経験値貯めないといけないし、よろしくお願いするよ先生』

『任せてください!』


 侑人と桜華ちゃんは『CC』を使ってリュートと桜華の姿になり、第四層のセーフエリアに向けて出発した。


『マギカネリアに来てから出来た同郷の知人がいるんだ。出られた時には…私の居た時代だったら紹介するよ。きっと仲良くなれると思う』

『俺達以外にも居たんだ…楽しみにしとく。結構召喚とか転移とか、こっちに来てる人いるの?』

『出会ったのはその人だけだね。コーヒー作ってて仲良くなったんだ。ただ…大勢来てる可能性はあると思ってる、数百人単位で』

『す、数百…?』

『可能性だけどね? 他に召喚された人の話は聞いた事ないし。…別の大陸で召喚されたとかはあるかもだけど。…桜華くんがこっちに来たのって、2016年の7月だよね?』

『…そうだけど』

『桜華くんがマギカネリアに勇者として召喚された日、日本で大勢の行方不明者が出たんだ。さっき言った知人もその1人だった。発表されてる行方不明者は確か…400人以上』

『………、なんだ…それ…』

『世間では色々騒がれてたからね。日本各地で400人が消えたわけだし、拉致だ陰謀だ~って。なぜ私が知ってるかといえば、侑人がこっちへ来たのはその5年後、2021年から来たからなんだ』


 大勢の人間を生贄にしたのではないか?と思った桜華がリュートに質問をしたが、以前ミュリアルにされた答えをそのまま伝えた事でホッとしていた。

 死体が残っているわけではなく行方不明である事や、日本各地で事件が発生している事などだ。


 桜華は歩きながら考え込み、リュートも歩きながら…頭の中で情報の整理をしていた。


 リュート自身が言っていたように…数百人の日本人が召喚されている可能性はある。桜華と美鈴の召喚の時期に700年ものズレがあるからだ。

 その700年の間に召喚された者がいてもおかしくない。…むしろ、いる可能性は非常に高いだろう。

 そして、桜華が最初の召喚者とは限らない。美鈴が最後の召喚者とも限らない。…限らないが、考え出せばキリがない。


 リュートの推測は進みはしたが、今ある情報では結論を出すには足りなかった。

 1つ確実性が増したのは、集団行方不明事件の原因は異世界召喚にあるだろう…という、一度は切り捨てた可能性だった。


 情報を得ようと思えば…出来なくは無い。実際に召喚された人物が目の前にいるのだから。

 桜華の記憶を深く読み取れば、召喚に関する手掛かりを見つけられる可能性は…かなり高い。

 …それを行う時があるとすれば、きっと最終手段としてだろう。

 リュートの父として、侑人はモラルを優先しているのだ。…この先も苦労しそうではある。


 推測を終わらせたリュートは、桜華と共に推測した内容を話しながら拠点へ向かった。…美鈴の事を隠しながら。



 微かに美鈴の事を匂わせた後、すぐに大量行方不明事件の話をして気を逸らし、推測の話し合いでも美鈴の事を「知人」として伝えたリュート。

 驚かせるという目的は順調な気はするが、そこまでして驚かせたいのだろうか。



 拠点である第四層のセーフエリアに戻ったリュートは、スマホを取り出してメモの更新を行った。桜華ちゃん用の靴の確保についてだ。桜華の靴ではサイズが合わないのである。


 桜華ちゃんの着る物は出来…一応出来たが、靴は無かったので足に布を巻いただけという応急処置的なものでレベル上げを乗り切った。小石を踏んで痛みを感じた事で、靴の重要性に気付いたらしい。


 『CC』によって入れ替わった体は、完全にもう一人の人間として存在している。視点の高さや手足の長さの違いに苦労はするが、五感にタイムラグはない。

 戦闘では緊張し、動けば汗をかき、走れば息は切れ、剣を振った事で手のひらにはマメも出来ている。

 アバターではなく生身の人間として、不便や苦労の一つ一つが生きている事を十二分に実感させてくれたのだった。


 …と格好つけて言いはしたが、裸足で行動すれば痛いというだけの話である。

 毎回桜華ちゃんの足に布を巻いて行動するわけにはいかないのだ。布の在庫もそれ程あるわけでもない。


 ちなみに、侑人は靴を履いている。『CC』で蘇った…生前から履いていたものだ。

 そして、リュートは足の裏まで強かった。最強種の系列は伊達ではない。


『靴はまぁ…素材集めてからだね。宝箱からブーツが出るのを待つより作る方が早いと思うし』


 宝箱産のブーツは一種の魔道具。多少のサイズ調節機能がついている。

 いつゲット出来るかは…宝箱次第だ。


『ごめんリュート、任せちゃって』

『それは全然いいよ。ただ、ゴムっぽいの作れるかどうか』

(ごむ?)

『ゴムは………なんだろ? …そもそもゴムって何から出来てたっけ?』

『ゴムは…樹液だったはず。ゴムの木っていうのがある…んだったかな? 履物なんかに使われてて、長く歩いても足が痛くなり難くなる…痛みを和らげてくれるんだよ』

(そうなのね! じゅえきは?)

『樹液は、木の…汁?』

『汁って…まぁそうだけど。このダンジョンにあればいいね』


 一先ず桜華ちゃんと侑人のレベル上げはひと段落付いている。履物の作成は「近々作る」程度の優先度で落ち着いた。



 木の汁の話が終わり、いよいよジョブ変更のお時間となった。


 リュートが『眼』を発動させて、ステータスのジョブの隣にある逆三角マークを押す。すると別ページが開いてジョブの一覧が表示された。

 剣士や拳闘士といった初期職、上級商人や上級調教師といった上級職、まだ表示されていない「???」という項目、それらがズラっと並んでいる。ジョブツリーと呼ばれるものだ。


 「???」項目のジョブは、条件を満たすとそのジョブ名が表示される。大抵の条件は初期職や一つ前の職のカンストである。中にはジョブを複数カンストすることで表示される複合上級職もある。

 「剣士-上級剣士ー???-???」といった表示ならば、上級剣士をカンストさせると剣豪のジョブが表示される事となる。剣豪の上は剣聖だ。


 生まれた時に獲得するジョブはランダムで、最初から最上級職の者も居れば初期職の者も居て、確率的には初期職が8割と一番高い。そしてランダムの仕組みは解明されていない。


 桜華の居た時代…700年前であれば、ジョブの変更は一般的なものだった。初期職は軒並みカンストさせるのが常識だった。

 桜華も戦闘系の初期職や一部の上級職はカンストさせている。リュートのように『眼』を使わずとも、それぞれ個人でジョブの変更が出来ていたからだ。その時代はランダムでジョブを授かろうが、後々変更出来ていたので問題も優遇も無かった。


 何時からそれが出来なくなったのか。ミュリアルの授業でも一切話題に上がらなかったジョブの変更という仕様。授業の余談として「昔は変更出来ていたらしい」と伝えられてもおかしくない内容ではあるのだが、あえて伝えなかったのだろうか…それとも知らなかったのだろうか。

 少なくともミュリアルの祖母であるミルファリアは、桜華の居た時代から700年後も健在、その頃の事を知っているはずだ。ミュリアルに知らされていないと思うには不自然だろう。


 どれだけ考えようとも推測にしかならない。ヒントの少な過ぎる難題を解けなかったリュートだが、今は変更が可能となったので「まぁいいか」と諦めた。…割り切りのいい少女である。


 ちなみにリュートのジョブである竜帝は、ジョブツリー画面に「竜兵ー???ー竜帝ー???ー???」と表示されている。割と当たりを引いていた。


 更にちなみに、『眼』という呼び方は昨日決まったばかりだ。毎回左目の力と言うのもどうかと思ったらしい。

 『魔眼』や『神眼』という中二病的な呼び方も嫌いではないリュートだが、周りに説明をする時にわざわざ『神眼を使って見てみる』などと言いたくはないという…内気な患者であった。

 結局『眼』とだけ呼ぶようになったのである。


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