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【一旦完結】ジャガーバルト家の義妹  作者: もにーる
第五章 『生誕』編

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26.3カ月ぶりの再会

ブックマーク・評価をしていただきありがとうございます!


 精神を汚染させてしまう力を緋雨自身が制御出来るようになった事で、緋雨を握っても問題なくなった桜華とも改めて「初めまして」を行えた。

 コミュニケーションが取りやすくなった事で桜華は緋雨の境遇を知り、緋雨も桜華の召喚された事情を知る事となった。桜華ちゃんの存在は混乱させてしまうのでまだ秘密である。


『一番危険なのはやっぱり、空間を裂いた『黒天丸』の力かな』

(そうね。…ただ、一番帰る事が出来そうな刀の能力でもあるわ)

『繋がる場所も時間もランダ…あ~出鱈目なんだっけ?』

(ある程度の刀の力ならなんとなく把握は出来るけど…あれはさっぱり分からないわ!)

『宇宙…っぽい所と繋がるとか、何の準備もしてないと死ぬだけだろうからねぇ。準備のし様も無いけど』

(じゅんび?)

『準備は…準備とは言わないのか…、そうだな…備え…用意? 支度かな?』


 今はリュートと桜華の2人で緋雨を握り、3人で食後のお話し中である。


『どこからどこまで繋がる対象なのか…だね。試すにはリスクが大き過ぎる』

『そうだね、この体が…竜人種がいくら強くてステータスが高くても、呼吸を封じられたりしたら死んじゃうし…多分』

(りすく? すてえたす?)

『あ~リスクっていうのは…危険度?』

『そんな感じだね。日本の外の国で使われてる言葉だよ。ステータスは…ここで言えば何だろ、強さかな?』

(そうなんだ。りゅうとも桜華も物知りなのね)


 日本語での会話ではあったが、緋雨に対して『翻訳』スキルが機能してないのかと桜華に尋ねると、対応しているのはどうやらマギ語だけのようだった。都合よくはいかないらしい。


『ん~…緋雨の居た頃からは考えられないかもしれないけど、私や桜華くんが居た時代は、子どもは学校に行くのが義務だったんだ』

(がっこう?)

『学校は通じないか…う~ん、勉強をする…寺子屋だっけ?』

(寺子屋をがっこうと呼ぶのね! また一つ賢くなったわ! …あ、話の邪魔をしてごめんなさい…)

『全然いいよ、気になった事はどんどん聞いて? ね、桜華くん?』

『もちろん、こっちも興味深い話として聞いてる所あるからね。Win-Winだよ』

(ういん…ういん?)


 何か…何とは言わないが、グネグ…いや、やめておこう。もろち…もちろん緋雨にはWin-Winの意味を伝えた上で、念入りに発音を練習させた。もうういんういんする事は無いだろう。



『すっかり忘れてた』


 そう言ったのはリュートだった。

 マギカネリアに来て3カ月が過ぎ、その生活にすっかり慣れていて触る機会が減っていたスマホ。

 お守りとして持ってはいたが、その程度の扱いでポケットに入っているだけのモノと化していた。が、卵に吸収され、スキルとして復活を果たしたのだ。…ド忘れしていたが。


 ステータスを操作し、スキルの一覧にあった『ZO-11S』の項目を左目の力を使って見ていく。


 ZO-11S(改)

 ZOMYが販売するスマートフォン

 6.5インチ、190g、本体カラーはシルバー

 同型の前機種とカメラの画素数は同じだが───


 今更スペックを教わっても…と思いながら斜め読みにしていくリュート。

 何せ情報量が多いのだ。一応気になる文章は読みはするが、電話のかけ方やメールの送り方といった基本情報なども載っており、一々読んでいられない。

 目次無しの説明書の様なもの、更にそれがスクロール形式で1ページに表示されている。どこまでスクロールすればいいのかと思いはするものの、さすがに全く読まないわけにもいかない。

 中には使った事のない機能の説明もあり、『へぇ~』『ほぉ~』と声が漏れる事もあったが。

 そうして詳細の終盤を読む頃には5分以上経っていた。

 その説明は本来存在しない情報だ。


 ───最適化にともない、スマートフォンの稼働に必要な動力を魔力で補う事が可能となっている

 召喚するにはMPを消費する、召喚中に破損しても元の情報への影響は無い

 破損した場合、再度呼び出せば破損前の状態で召喚される

 破損後の再召喚では、情報を更新していない場合、データも最終更新時の状態を維持する事になる───


(うん…意外と情報多いな。つまり充電は魔力がしてくれて、手元に呼び出せて、もし壊れたとしてももう一回呼び出せば元通り…? あれかな、呼び出す端末はオリジナルじゃないから大丈夫…みたいな? 複製品みたいなものって思っておこう。それで…バックアップをとっておかないと、壊れた時に写真とか撮ってた分が消えちゃうって事か)


 自分なりに解釈をして理解を深めていくリュート。他にも顕現させずとも撮影が出来たり、遠隔での操作や空中浮遊、浮いたまま追尾撮影も可能との事だ。

 ふと頭に浮かんでしまう犯罪行為の数々…、使い方に気をつけようと誓ったリュートであった。



 早速手元にスマホを呼び出してみると、その大きさに驚いた。…リュートの手が小さかったという話だが。


 リュートがスマホの説明文を読んでいる間、桜華と緋雨はおしゃべりをしていた。リュートの手にスマホが現れた事でおしゃべりは中断させられた。

 桜華には馴染みのある機械だが、緋雨からすればただの黒い光沢のある板でしかない。だが…、


 シャララン♪

 チリンチリンチリン!


 電源を入れた事で起動音がし、驚いた緋雨は簪をチリンチリン鳴らした。警戒心MAXである。


 情報として載ってはいなかったが、ネットに繋ぐアプリや電話は使えないだろう、とリュートは予測している。…使えた場合は逆に怖い。一体誰と…何と繋がるのだろうか。


 それはともかく、スマホの起動に時間がかかる仕様なのは変わらないらしい。それでも2分も待たずにロック画面が表示され、ロックを解除したページの待ち受けに設定してあった初恋の人とリカとのスリーショットと、3カ月ぶりの再会を果たしたのだった。

 尊いものを見るリュートの表情…、本当にこのおっさ…元おっさんはストーカーでは無かったのだろうか。とても疑問である。


(何!? 妖術!?)


 スマホ画面の写真が見えた緋雨は、鮮明過ぎる絵に驚きを隠せなかった。


『あはは、妖術じゃないよ。スマ…ぁ~、未来の道具で、多くの人が持ってた物だよ。スマホっていうんだ』

(そ、そう…すまほね? 覚えたわ!)

『色んな事がこのスマホで出来るんだけど、今はその力のほとんどが使えない…って感じかな?』

『…説明しろって改めて言われたら、案外難しいね。カラクリなら伝わる?』

(からくり?)

『ん~…、ゼンマイや糸で動く人形や道具って所かな?』

『ダメか…まぁカラクリで説明続けるのはさすがに無理だけど。江戸時代頃なら、もうエレキテルとかなかったっけ?』

『平賀源内って名前は覚えてるけど…さすがにいつだったかは覚えてないね。もし緋雨の居た頃にエレキテルがあったとしても、普及してた物じゃないだろうし…情報の伝達にも時間かかるからね。そもそも江戸時代で括っても200年以上あるはずだし』

『確かに。電話もテレビも無いんだもんね。俺達が緋雨の居た時代を把握してないのもあるし』

『…そもそもさ、スマホをエレキテルで説明するのも無理じゃない?』


 緋雨に世情を聞いても分かるはずも無く、リュートが拾い見た緋雨の記憶からも時代の推測は難しいものだった。細部まで調べようとすれば出来ない事はないが、答えがあるかも分からない上に時間がかかりすぎるのだ。

 「助ける為なら何をしてもいいのか?」という考えが浮かぶ事に加え、…覗き見の罪悪感が大きい。この2つが、過去を見る力を使いたくない主な理由となっている。


 緋雨は徳川家康の名は知っていた。だが、緋雨の居た当時の元号も江戸の将軍の名前も分からず、生類憐みの令や御犬様という言葉も聞いた事が無い様子。五代将軍綱吉はその法令で有名だが、緋雨のいた時代にはまだ綱吉は将軍ではなかったのかもしれない。…単に緋雨が知らないだけの可能性もある。ヒントとするには信憑性に欠ける。

 織田信長の名を出してみたりもしたが、少なくとも緋雨は知らなかった。


 緋雨から得られたのはちぐはぐな情報。家康を知っていて綱吉を知らない、信長も知らない。これも情報伝達手段が無かったせいだろうと結論付けた。


 手掛かりは復讐相手が徳川という事のみ。

 260年続いた江戸時代のいつか…恐らく初期であろう、という程度である。



 話が脱線しては修正してを繰り返し、リュートがメモ帳代わりにスマホのメール下書きを活用して、今後の予定を箇条書きにして保存した。箇条書きの1つ目は直近で必要性を強く感じた下に穿く物の確保だった。「パンツ」と書くのはどうかと思うが…。

 その後、桜華に初恋の人である綾音とその娘のリカが写った画像を見せたり、緋雨を握るリュートと桜華という姿を自撮りしたりと、スマホが大活躍だ。

 スマホに写ったその姿を見た緋雨が、


(だ、大丈夫よね? 魂が抜かれたんじゃないわよね?)


 と感想を漏らした。緋雨の言葉に思わず笑ってしまったリュートと桜華だったが、緋雨を安心させる為に何度も撮影してみせた。


 安心した緋雨は、この時初めて刀となった自分自身をちゃんと見る事となった。


(………父上が打ってくれた刀。この簪は母上から頂いたの)

『うん、簪を挿した姿は私が覚えてるよ。緋雨によく似合ってた』

(そ、そんな事突然言われると…恥ずかしい…)


 緋雨は恥ずかしさからか、それともリュートが覚えていてくれる嬉しさからか、チリンと簪を鳴らした。



 side:緋雨


(ありがと桜華)

(別にいいよ。さっき話がしたいって言ってたけど、何だい?)

(その…りゅうとの事で聞きたい事があって)

(…リュートには聞けない事か。俺が答えられる事ならいいよ、…あまり踏み込んだ話じゃなければ)

(ありがと! …あたしね? 一度…りゅうとを怒らせてしまったの)

(そうな…あ~、リュートの力が漏れてた時あったね。あれは緋雨が怒らせてしまったのか)

(うん…、ちゃんと謝ったんだけどね? 死んだこともないくせにとか、何の苦労も知らなさそうな手だとか言って…手を傷付けてやるって…)

(なるほどね。リュートが…侑人さんが怒るのも仕方ないかな?)

(その後りゅうと…侑人も死んだ事があるんだって聞いて、あたしと似た経験をしてるって聞いて、和解したの)

(そっか)

(それで、もし知ってたらだけど、その時の事を…桜華に教えて欲しいって思って)

(………そうだね、リュートに聞くって事は、思い出させてしまうって思ったんだね?)

(うん…侑人はりゅうとの事を大事に想ってるみたいだったから…)

(ん~そうだなぁ。…ちょっと複雑な話だけど、我が子を守り抜いた侑人さんが死んでリュートとして戻ってきた時は、全然動かなくて…心が弱りきってた。今のリュートからはそう思えないだろうけどね?)

(そうね…。話をしてくれてた時も、初めて顔を見た時も、全然…)

(うん。元気が無かった時は、リュートの…我が子の命を奪ったって思ってたみたいなんだ。その後、リュートに助けられたんだって知る事が出来たみたいで、大声で泣いてたよ)

(………)

(俺を心配させない為にだろうけど、空元気…元気なように見せかけててね。暗い気持ちを晴らさせる為に、俺がモン…敵と戦う事を提案したんだ。そこで、泣きながら…お前達が居なければ! 俺が強ければ!って叫びながら、侑人さんを死に追いやった敵達と戦ったんだ。侑人さん自身、自分があんなに怒るなんて思ってなかったらしいけどね。その後もまぁ…大変だったけど、その大変だったお陰で緋雨を見つける事が出来た。って所かな?)

(…りゅうともあたしと同じ…だね。あたし、りゅうとに見つけて貰えて良かった!)

(ふふっ、そうだね。驚かされる事が沢山あるけど、俺も侑人さんとリュートに会えて良かったって思ってるよ)

(そうね! 話を聞かせてくれてありがと桜華!)

(どういたしまして)


 りゅうとに会えて良かった。あたしは改めてそう思えた。


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