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【一旦完結】ジャガーバルト家の義妹  作者: もにーる
第四章 王都編

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14.私のバーバルンちゃん

評価いただきました!ありがとうございます!



 『ウィン商店』へと戻り、店員におかえりなさいと出迎えられ、そのまま2階へ案内されたリュートと美鈴。

 部屋へ入ると、ミュリアルとジンがソファーに座っており、机を挟んで反対側のソファーにウィンが座っていた。机の上には聖なる…まぁパンツだが、パンツが納められたブランド製の小さなトランクケースが置かれている。

 まだカバンの中身を知らない3人は、トランクケースのデザインや出来について話し合っていたようで、注目の的となっている。


(ある意味…羞恥プレイだな…)

「ただいま戻りました」

「おかえりなさいませリュート様。そちらの方が?」

「はい、そのカバンの持ち主で美鈴さんと言います」

「初めまして、美鈴と申します。この度はカバンを見つけていただきありがとうございました」

「初めましてミスズ様、私はこの商店の店主をしておりますウィンと申します」


 挨拶もそこそこに、小さなカバンが本当に美鈴の物であるかという話になり、無事に開けられたら何よりの証拠になるという結論に至った。

 美鈴がカバンを手に取り、「あぁ、私のバーバルンちゃん」と呟きながら感動の再会をして、カバンの状態を確認した。

 何者かがこじ開けようとしたのか若干傷と凹みがあり、少々落ち込む事にはなったが、手元に戻ってきたのでヨシとした。


「開ける事には問題なさそうです」

「おぉ、それはなにより。今までに見た事のない物ですし、ぜひ中も見せていただきたい」


 やはり傷口は小さく済んだようだ。忘れたまま意気揚々とカバンを開けて見せでもしていれば、役への没入度という事情があったとはいえパンツのお披露目をしてしまうところだった。

 ウィンとしてはカバンの中のデザインも見てみたいという発言だったのだが、何が入っているかを見たいと捉えられる言い方になってしまった。興奮していたのかもしれない。…パンツにではなくカバンのデザインに。


 カバンを保護してもらっていた手前、申し出を無碍(むげ)にも出来ない、と考えてしまった美鈴。断ってもいい場面なのだが…真面目か。


「ウィンさん、それじゃカバンに入ってる彼女の私物を見せてくれって言ってるように聞こえますよ?」

「え? …あぁ! いやいや、失礼しましたミスズ様。箱…カバンの中がどのようなデザインなのか気になりまして…」

「いえ、そういう事でしたら見ていただいて構いませんよ。ただ…」

「まずは美鈴さんの物であるという確認として鍵を開けてもらって、開ける事が出来たら1人で中を確かめてもらって、それからデザインを見せてもらうという事でどうでしょう?」


 ジンのフォローで変態おじさんのレッテルを貼られずに済んだウィンであった。ちなみにジンは今、ウィンの隣に移動して座っている。男性陣2人と女性陣…2人&リュート(侑人)という構図になっている。

 事情…パンツが入っている事を知るリュートも助け船を出し、美鈴がカバンのダイヤルを回し始めた。


 3つあるダイヤルには、それぞれ0~9の数字が刻まれている。

 パッと見では3桁の数字を合わせる1,000通りに見えるが、美鈴の手つきはまるで金庫のダイヤルを合わせるように、右に左にとダイヤルを1つずつ回している。そうなると1,000通りどころでは済まない。

 特注の鍵なのかとリュートが聞けば、その通りと返事が返ってきた。どうにも…開ける為のダイヤル回しの作業がワクワクするらしく、そういう仕様にしてもらったらしい。


 ちなみに、トランクに付ける鍵を担当した職人は作成の難易度に泣いたらしい。完成品に大満足した美鈴がプライベートで職人の元を訪れ握手をしながら感動を伝えると、職人は喜びから再び泣いた。2度も職人を泣かせる罪な大女優である。

 …余談だが、その職人は感動を伝えられたその日に美鈴のファンクラブへ加入している。


「開きました。これでいいですか?」

「おぉ!」


 カチャンという音が響いた。ほんの10秒足らずで解錠してしまった美鈴。

 鍵と思われるダイヤルをどれだけ回してみても開かなかった、それを試したウィンには、短時間で解錠してみせた美鈴をカバンの持ち主だと断定するには十分だった。

 美鈴にはカバンを持ってリュートとミュリアルの座るソファーの後ろへ回ってもらった。中身…主にパンツの回収の為である。



「いや~、良い物を見せていただきました。外側はシンプルでありながら、普段は見えない内側に(がら)をあしらう。その柄も芸術的とでもいいましょうか、魅せられました。…個人的にはもっと大きい方が便利かと思いますが」

「大きい物もありますよ? と言うより、大きい方が普通でコレが小さいだけですし…。とにかく満足いただけたようで何よりです。私もお気に入りのカバンなので」

「お洒落な一品でしたね。私もあの柄好きですよ」

「(リュートさんもバーバルン持ってるんですか?)」

「(安物の財布ですけどね? 年季も入ってますし)」


 結局ミニトランク型のカバンに入っていた物は全部取り出して、カバンだけを見せた美鈴であった。

 ポーチも財布も、商人であるウィンに見せれば食いつくであろう。素材的にもデザイン的にも。

 ポーチに入っている化粧品に関しても同様であろう。この世界にも化粧品はあるが、その品質には雲泥の差がある。どうにか再現出来ないかとウィンが奮闘する姿を容易に想像できてしまう。

 スマホにいたっては…充電が切れているのでただの光沢のある板と化しているが、その中身はこの世界からすれば未知の技術の結晶だ。仮に分解して調べたとしても再現のしようもないだろうが、恐らく影響は大きいだろう…良くも悪くも。


「無事に本人の元へカバンが返ってなによりですね。さて、ウィンさん」

「なんでしょう?リュート様」

「あのカバン、おいくらで譲っていただけますか?」


 美鈴がハッとした顔をして、リュートとウィンを見た。

 カバンは確かに美鈴の物だが、現在の所有権は商店に…店主であるウィンにある。


「はっはっはっ。いくらも何も、ミスズ様の物だと分かりましたし、そのままお持ち帰りください」

「…よろしかったのですか?」

「強いて言えば、カバンを見せて頂いた事が報酬ですかな? いい刺激を受けました。それに、そのカバンが良い出会いも運んでくれましたからな」

「…ありがとうございます」

「あ、ありがとうございます!」


 頭を下げて感謝を述べたリュートに続くように、美鈴もガバッと頭を下げた。

 これで一件落「あ~っとそうだった」…まだ続いた。


「ウィンさん、魔石の買い取りをお願いしたいのですが、よろしいでしょうか?」

「魔石の? 構いませんが、うちのような商店だと若干値が下がりますよ? 冒険者ギルドで売られないのですか?」

「昨日行ったのですが、何と言うか…用件も聞いてもらえず、名前も伝える前に犯罪者扱いされまして」

「え˝…」


 そんな答えが返ってくるとは予想しておらず、若干表情を引きつらせながら答えるウィン。


「…同じ王都に住む者として、謝罪させていただきます」

「あぁお気になさらず。既に謝罪はいただいてますので。…ジンさんにですが」

「ははっ、それが友達として仲が深まるきっかけになったと思えば、嬉しいやら申し訳ないやらで複雑だけど」

「あの人達のせいであって、ジンさんのせいじゃないんですけどね。あの人達のお陰でジンさんの人柄をより知れましたし、その点だけは感謝してるかな?」

「実際にその場に居たら止められたんだけどね。…いや、もし止めてたらそもそもそんな騒動が起きなかったか」

「でしょうね。そして何も知らないまま王都で冒険者を続けていたかもしれませんね」

「ははっ、そう考えたらゾッとするよ。見せてもらったのは正解だったのかもね」


 百聞は一見に如かず。話を聞いただけでもジンは疑いを持ったかもしれないが、映像として見ればその情報量は桁違いだ。

 会話の間やニュアンス、その時々の表情といったものは、語るだけでは伝わり辛い。


「失礼、見せてもらった…とはどういった事でしょう?」


 ジンの言葉に食いついたウィン、さすが商人…耳聡い。


「…あ~」

「…ウィンさんならいいかな?」

「…ごめんね?リュートちゃん」

「いいんですよ、カバンのお礼的な意味も込めて何か出来ないかなって思ってましたし。ギルドの映像ですけど、ジンさんは席外します?」

「…いや、もう一度ちゃんと見せてほしい。前回はなんと言うか…落ち着いて見れなかったしね」

「あはは、確かにそうだったかもしれませんね。それではウィンさん」

「な、何でしょう?」


 何が起こるのか見当もついていないウィンはビクビクしていた。


「先ほどの質問の答えを、実際にウィンさんにも見てもらおうと思うのですが、5分程お時間よろしいですか?」

「問題ありませんよ、私はどうすればよろしいですかな?」

「そのまま座っていてください。少々魔術を使わせてもらいますね」


 斜め掛けにしているショルダーバッグに手を入れ、あたかもバッグに入っていたかのようにスマホを取り出すリュート。

 「部屋を暗くします」と注意をしながら魔術を使い、昨日のミニシアターを再現する。スマホを操作してギルドでの騒動の動画を選択し、部屋の壁へ映像が映し出されるように調整した。


「「おぉ!」」

「「………」」


 ミュリアルとウィンは初めて見る魔術に驚いていたが、ジンと美鈴は静かだった。


 5分程度の映像。リュートが難癖をつけられ、手紙を燃やされ水浸しになり、ギルドからダイナミック脱出したところで動画は終了した。

 魔術をキャンセルして部屋の中に明るさが戻ったのだが、3人は言葉も発さなかった。その頭の中は三者三様だったが。


「「「………」」」

「いや~、改めて見ても難癖のつけ方が雑ですよねぇ。最後煽った点は私にも非はありますけど」

「俺は改めて見ても申し訳ない気持ちでいっぱいだよ。ギルマスには報告しないのかい?」

「あの人たちから謝罪が欲しいわけでもないですからねぇ。言いふらす気もないですが、目撃者は沢山いましたしね。結果として王都のギルドはジンさんを失う事になりましたし」

「う、失うって…。ジン様は冒険者を辞められるのですか?」


 言葉を無くしていたウィンだったが、聞き捨てならない話を聞いて復活した。


「辞めるわけじゃないですよ? ジャガーバルト領に拠点を移そうと思ってまして」

「大歓迎です」

「その領地のご令嬢もこの通りですし」

「なるほど、寂しくなりますなぁ…」


 ジンの成長を見守り手伝ってきたウィンにとっては、息子が巣立っていく感覚だろうか。歳はほとんど変わらないので親友との別れと言った方が近いかもしれない。


「おっと失礼、貴重な体験をさせていただきありがとうございましたリュート様。そして謝罪を」

「あはは、どういたしまして。ジンさんにもそんな感じで謝られましたよ」

「はっはっはっ、そうでしたか。しかし…この技術は凄いですな。正直…商人としての血が騒ぎます」


 そこもジンと一緒だった。ジンの方がウィンに似ているのかもしれない。


「リュート、ちょっと出掛けてくる」

「多分ダメな気がするのでお断りします、ちなみにどこへ?」

「…冒険者ギルド」

「怒ってくれるのは嬉しいですが、殴り込みなんてしなくていいですから」

「ううん、更地にしてくるだけ」

「もっとダメですよ!?」


 ミュリアルの大暴走はなんとか食い止められた。


「…美鈴さん? 大丈夫です?」

「………あ、ごめんなさい。少しボーっとしてて…」

「いえ、ちょっと気分の悪くなる動画でしたでしょうしね。何か気になる事でもありました?」

「…え~っと…これ、スマホ…の充電出来るかな~…って思って」

「あ~、なるほど…ちょっと考えてみます。私のはちょっと特殊になってるので。…ただ、電源が入ったとしてもネットには繋がらないし、電話も出来ないですけどね」

(確かに無いと思ってた自分のスマホが見つかったんだし、気にはなるよな。…もしくはあんな感じの映像がトラウマを刺激したとか? …考えすぎかな、デリケートな事だとしたら聞けないし)


 美鈴はこっそりとリュートにスマホを見せて提案した。が、侑人が持っていたスマホはリュートに一体化され、その電源は魔力で補われている。

 美鈴のスマホに通常の充電をさせようと思えば電気の力が必要だが、直接精密機器に電撃を浴びせるわけにはいかない。


 リュートからすれば、電気の発生自体は可能だ。…可能だが、電気と言っても魔術で再現するそれは…小さくとも間違いなく雷なのだ。そこから充電に使えるようにするにはどうすればいいかと考えなければならない。

 流す電圧を測定する物も無いので、言ってしまえば目分量の調整になる。とてもぶっつけ本番で試したくはない。

 ジャガーバルトへ共に行くので時間はある、そう思ったリュートは宿題として持ち帰る事にした。


「とまぁ、ちょっと話が脱線しましたけど、こんな経緯があったので冒険者ギルドへ行く気がないんですよね」

「お話は分かりました。もちろん魔石の買い取りはお引き受けしますとも」

「ありがとうございます。私以外の人に冒険者ギルドで売ってもらう事も考えたんですけど、さっきの映像を見た後ではやはり行きたくなさそうでしたからね」

「そうでしょうなぁ、私もギルドとの今後の取引を考えたいと思いましたよ。ギルドマスターは悪い方ではありませんし、そう簡単には中止に出来ませんが」

「真面目な冒険者の方もいますからね」


 一部の冒険者のとばっちりで、冒険者稼業をやりにくくなる者が出てしまうとなれば、リュートの本意ではない。

 商店とギルドの関係はなんとか保たれたのだった。

 …魔石の数を聞いて、ウィンが(むせ)た事を付け加えておく。


 机の上に買い取ってもらった分の金が置かれたのだが、その金額は多少値が下がると言われた割に多かった。ウィンが色を付けてギルドでの買取額と同額にしていたのだ。

 金額に気付いたリュートがいいのか?と確認し、返事をもらうと深々と頭を下げて感謝を告げた。そして『ウィン商店』へ何かしらの恩返しをしようと心に決めた。



「? ミスズ、何か落としてる」


 美鈴が反応するよりも早く、ミュリアルが落とし物を拾い、広げて見せた。…見せてしまった。


 少々扇情的な…、三角の形をした…、スマホを取り出す時に落としてしまった、聖なる布を…。ジンもウィンもばっちり見てしまった。


「…ぁ、ぁぅ…」

「…ご、ごめん…」


 小さな声で恥ずかしがる美鈴に、ミュリアルは謝る事しか出来なかった。


本作ダイジェスト版(一章~二章8話)と、短編を1本投稿しています。


よければ見てやってください。



ダイジェスト版(一章~二章8話)↓


https://ncode.syosetu.com/n6413if/2/



短編『虚弱体質だったけど、いきなり丈夫になったようです』↓


https://ncode.syosetu.com/n6966ig/


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