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【一旦完結】ジャガーバルト家の義妹  作者: もにーる
第四章 王都編

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15.ダンジョン

突如始まる戦闘回。


後半に加筆しました。(10/21)


「ミュリアルさんをお借りしますね」


 無事に商談が終わり、『ウィン商店』から出てきたところで美鈴がそう言った。

 パンツが広げられて皆に見られてしまうという不幸な事故はあったが、それについてそこまで怒っている様子ではない。が、やってしまった本人…ミュリアルに、否という選択肢を選ぶ事は出来なかった。


「…分かりました」


 ミュリアルが思わず敬語になるほどである。

 「また夜に」と別れを告げ、美鈴とミュリアルは街の方へと向かっていった。


 残されたジンとリュートは、一緒にお昼ご飯を食べる事にした。場所は昨日行った『ダンク食堂』である。

 昨日とは違い個室は使わず、注文した料理も一般的な量だ。

 ジンは、


(…足りるのかな?)


 と思ったが、口には出さなかった。



 料理を食べ終えると、これからどうするかという話になった。


「ジンさんは何か用事はあるんですか?」

「挨拶回りくらいかな? ウィンさんにはさっき挨拶できたし、あとはお世話になってる宿と厩、ギルドに報告…は手紙でいいかな? それくらいだね。…ぶっちゃけると暇だよ。リュートちゃんはどうするの?」

「私は一度着替えに戻って、上級ダンジョンに行ってきます」

「じょ…、なんでまた上級に? …いや、そうか…そういう事かい?」


 思わず小声になって真剣な顔で聞き返してしまったジン。が、自ら答えに辿り着いた。


「えぇ、美人のスケルトンを探しに」

「ぐっ!? …リュートちゃん?」

「あはは、ごめんなさい。ジンさんの想像通りだと思いますよ」


 和ませようとして怒られた精神年齢アラフォーの少女であった。


「…俺も一緒に行っていいかな? リュートちゃんは強いって銀の盾のみんなが言ってたけど、さすがに心配だし」

「ありがとうございます。もちろんいいですよ。詳しい話は家に向かいながら話しましょうか」


 店を出てジャガーバルト家へ向かいながら、ダンジョンが許容量を持っている事、上級ダンジョンの最大許容量が50,000で、遅くとも2カ月以内に溢れそうだという事を話した。

 もちろん許容量という話は初耳だったジンだが、リュートを疑う事はなかった。むしろ、「それであの時上級ダンジョンの前にいたのか」と納得していた。


 ジャガーバルト家に着き、リュートがお出かけコーデから冒険者風装備に着替えに行き、ジンは別室でリュートの着替えを待っていた。

 ジンは朝から既にフル装備、あとはマジックバッグから武器を出して装備する程度だ。


「お待たせしました。さぁ行きましょう!」


 着替え終わったリュートの元気一杯な掛け声。

 街に危機が迫っているはずなのに。不人気なダンジョンへ向かうはずなのに。

 ジンはそう思いながらも、やる気満々なリュートを見て、自然と頬が緩んでいた。



 リュートとジンは共に街へ向かった。

 (うまや)から馬を連れてきて2人乗りになり、王都を出て上級ダンジョンへ。…もちろん今日も多くの人に見られながらの移動だ。


「正直、美鈴さんがミュア師匠を連れて行ってくれたのは助かりました」

「どうしてだい? ミュリアル様も冒険者で強いのに」

「そう見ればそうですけどね。でも…上級ダンジョンでデートなんて嫌じゃないですか?」

「…ははっ! なるほどね、それは確かにリュートちゃんが正しかったよ。紳士だね」

「今は淑女です~」


 お化け屋敷のデートとはわけが違う。ミュリアルが強いとは言っても、一歩間違えば命を落とす戦いの場なのだ。仲良く遊びに来る場所ではない。


 馬を森の入り口にある厩に預け、森の中へ入っていくリュートとジン。昼過ぎなので殆どの冒険者は中級ダンジョン内の探索中だ。

 中級ダンジョン入り口前にはちらほら冒険者がいたが、2人は中級ダンジョンの前を素通りし、上級ダンジョンへ向かった。


 目的地へ辿り着いた2人だが、昨日同様人気が無い…というより誰もいない。寂れたダンジョンである。…そのせいでスタンピードの危機が近いのだが。


「そうだ、ジンさんには見せておきますよ」

「うん? 何をだい?」


 リュートがそう言って眼帯をずらし、左目を見せた。


「…怪我をしてるわけじゃなかったんだね」

「そうですね、目立つので隠していたというのが正しいです。こうなるので」


 『眼』を発動させると、青色だった両目の左目だけが金色に変わった。


「この『眼』が鑑定のような事をしてくれるんです。他にも魔道具の構造や魔術を解析したり、ギャバット君にしたように人の過去を見る事もできます。あと、眼帯をしてても普通に見えますので、死角の心配もありません。逆に真後ろであっても見えますし」

「ははっ…俺がその目の事も心配だってバレてたか」

「普通は目が片方塞がってたら大きなハンデですからね。さて、それではちょっと情報を覗くので、準備運動でもしてて下さい」

「了解したよ。とは言っても、いつでも動けるけどね」


 リュートがダンジョンに向き直り、『眼』で情報を読んでいく。


(1日経って、え~と…昨日は48,800くらいだったっけ。20程度しか増えてないから最低値が補充された…のかな)


 ジャガーバルト領にある初級ダンジョンでは、スタンピード後のクールタイム中という表示がされていた為、とりあえずの危険はないと深くまでは見ていなかった。

 ここで深くまで覗いていく事にして、込める魔力を強めていった。



 ダンジョン


・女神アナスタシアによって作られた、魔素を集める場所として存在する洞窟。


・ダンジョンコアに設定された数値によって蓄積できる魔素量は変わるが、どのダンジョンも魔素を収集するという存在目的は同じ。


・集まった魔素は、ダンジョン内で宝箱やモンスターとして生成される。生成される宝箱やモンスターの種類、抱え込めるモンスターの保有量はダンジョンによって異なる。詳しくはダンジョンコアを参照。


・ダンジョンが1日に取り込む魔素量によって、その日に作成されるモンスターの数は変動する。最低値のモンスター生成量に対して生成に必要な魔素量が下回った場合は弱体化したモンスターが、逆に最大値のモンスター生成量に対して魔素量が上回っていた場合は強化されたモンスター、もしくは上位種や亜種が生成される場合がある。これは宝箱や罠にも適用される。


・ダンジョンには一定量のモンスターが放たれ、下層である魔素の濃い方へ進む程、設置されるモンスターは強くなる。下層に限らず、時には上位種や亜種が設置される事もあるので注意が必要。


・ダンジョンに設置されない残りのモンスターは、最下層の更に下にある異空間にて待機させられる。ダンジョンのモンスターが倒されると、この異空間からモンスターが補充されていく。


・ダンジョンに設定されたモンスターの最大保有量を超えた時、最下層と異空間が直接繋がってしまい、ダンジョン内のモンスターを囲う壁が消失する。異空間との繋がりによって階層毎の魔素濃度も変わってしまい、モンスターが上の階やダンジョン外へと出てくるので、保有量を超えないように定期的な討伐が推奨される。


・もし保有量を超えてモンスターが氾濫した場合は、新たにボスと設定されたモンスターを討伐する事。討伐に成功すると、そのダンジョンで生成されたモンスターは全て消滅し、ダンジョンが一時的に活動休止状態となる。


・休止状態のダンジョンに入る事は可能だが、モンスターは湧かず、宝箱も補充されない。休止状態であればダンジョンの最下層に繋がった異空間に入る事が可能。


・異空間に入るには───



「目が疲れる! 情報量多いわ!」

「うわぁ!?」


 ダンジョンについてよく知る事は出来たが、思わずつっこんでしまったリュート。と、その声に驚いたジンであった。

 リュートがごめんなさいと謝り、新たに知ったダンジョンの情報を簡潔に話していく。

 ダンジョンは女神が作った魔素を集める場所であり、モンスターや宝箱は魔素から生成されている事。上位種や亜種の存在、最下層の下に異空間があって、この上級ダンジョンで言えば40,000匹を超えるモンスターがそこにいる事などが伝えられた。


「…確かにダンジョンで宝箱が復活するのは謎だったし、レアモンスターの存在も知られている。そんな仕組みがあったとは…、学者が喜びそうな話だね?」

「確かに。ただ…他にその情報を確認できる人がいないから、話したとしても信憑性は薄いでしょうね。確かめたいからスタンピードを起こしてくれとか言われても嫌ですし」

「ははっ…ダンジョン学者なら言いそうだ…。しかし、ダンジョンのモンスターが魔素の塊とはねぇ」

「魔石を残して消えるのも、女神アナスタシアがそう作ったんでしょうかね」

(それにダンジョンコアもあるらしいし、そっちの情報も気になるな)


 ずらしていた眼帯を戻し、ダンジョンへ入る準備をするリュート。


「ちなみに、ここのボスってどんなやつなんです?」

「…知らずに行こうとしてたのかい? スケルトンキングらしいよ。まぁ、俺は実際に見た事はないけどね。下に行くほどモンスターが強くなるのもあるけど、道中時間かかるし骨ばっかりだし…」

「うわ~、ずっと骨ですか…」

「かなり昔に、骨以外のドロップ狙いで大規模な攻略があったとかなんとか。ギルドにそんな事が書いてある資料があったよ、結局骨以外出なかったらしいけど」

「なるほど…。あ~、でもほら、亜種がいる可能性もあるらしいですから」

「スケルトンの亜種って言ってもなぁ…」

「ほら、いるかもしれませんよ? 美人なスケルトン」

「ぐっ、ははっ! それじゃ探しに行こうか、その美人なスケルトンを」

「えぇ、行きましょう!」


 リュートとジンは、和やかムードなまま上級ダンジョンへ入っていった。



 side:ジン


 俺は、強さというものが…自分の中にあった強さの基準というものが分からなくなった。


「これくらいでいいかな? ふっ!」


 目の前の少女…リュートちゃんが強い。そう銀の盾に聞いてはいたけど、どこか信じ切っていなかったのかもしれない。


「ふっ!」


 俺でもスケルトン3匹くらいなら同時に相手に出来る。しかしそれは、正面から相対していたら、だ。囲まれたまま対処なんてしない。必ず敵が視界に入る位置に移動して戦う。


「っと、ふっ!」


 目の色が変わるという秘密を打ち明けられた時、真後ろでも見えると言っていたのは事実のようだ。リュートちゃんは後方からの攻撃を見もせず…余裕をもって躱して仕留めている。見ているこっちがヒヤヒヤするけど。


「そこを曲がったら2匹ですね」


 後ろどころか曲がった道の先まで見えるらしい。確かにあの金の目の力は凄いかもしれない。が、凄いのは目だけじゃない。


「…っ!」


 リュートちゃんが魔術のストーンバレットを放ち、道に沿って魔術が曲がっていった。2匹いると言っていたスケルトンに当たったようで、カタカタという音が聞こえた後、魔石が落ちる音がした。

 スケルトンは基本的に魔術耐性が高く、火や水や風の魔術は効果が無いと言ってもいい。質量を持った土系の魔術は確かに有効だけど、その威力も…多分おかしい。


 最初は刀と呼ばれる剣を取り出したから剣士系のジョブかと思ったけど、昨日の事を思い出せば魔術も使っていたはずだ。今も一般的に魔術師が使うストーンバレットを打っていたし…ジョブの推測が全く出来ない。


 可能性としては…魔剣士。…無いか。ハズレジョブだしな。


 剣を使う魔術師というスタイルで戦う者もいるだろう、敵に近付かれた時の近接武器として…無い話ではない。けどリュートちゃんを見ていれば、そんなスタイルではない事はすぐに分かる。


「よし、次に行きましょう!」


 ここは上級ダンジョンで、今は既に第八層。ここらになると俺でも…スキルの一撃なら倒せるってくらいの強さだ。通常のスケルトンだけでなく、アーチャーやメイジ、ウォーリアなどモンスターの種類も増えている。

 時間はまだダンジョンに入って1時間も経っていないけど、リュートちゃんはぶっ続けで戦っている。見えるから罠に注意する必要もないらしい。なので…ダンジョン内の移動は駆け足だ。


 明らかに異常…。こんな早いペースで進んだ事なんて今までにない。それにあの元気さは一体どこからくるのか…。


「どのスケルトンも見事に骨ばっかりですねぇ」

「言った通りだったでしょ?」

「まぁそうですけど…、アイテム名『骨』、説明も骨とだけ。何の役にも立たない…見たく無いものを見た気がしますよ」

「ははっ…それでも持って帰るんだ?」

「用途があればいいかな~と。ここで実験もしていられないですし、持って帰ってから考えます!」


 400~500本は拾っているんじゃないかな? 同時に拾っている魔石の数を考えても、明らかに俺のマジックバッグに入る量を超えている。

 右手には短めの刀と呼ばれる武器を持っていて、その刀の持ち手と刃の境目の部分には綺麗な飾りが付いている。武器よりも芸術品に見えるくらいだ。

 刀で戦うだけじゃなく魔術も使い、特殊な目を持っていて、高性能なマジックバッグまである…本当に驚かされるばかりだ。


 更に戦い続けて20分、何もしないまま付いて行くのは男としても友達としても嫌だったので、俺も参加させてもらった。さすがに息があがってしまったけど…。


「ははっ、こんなペースで、戦い続けるなんて、★4ランクの頃、以来かな」

「お陰で中ボスの部屋まで来るのが早まりました、ありがとうございます」

「レベルも上がったしね。ふぅ~、ジョブはまだカンストしてないけど」

「おぉ、おめでとうございます。そういえばジンさんのジョブって何か聞いても?」

「俺のジョブは剣豪だよ、その辺もその目の力で見えるんじゃないのかい?」

「断りも無く見たりはしないですよ。それじゃ改めてちょっとだけ見せてもらってもいいですか?」

「いいよ」


 見られると思うと緊張する…けど、嫌悪感みたいなものは特にないな。


「…おぉ~」

「ん? 何か驚くようなことでもあったかい?」

「もうすぐジョブもカンストしそうですよ、ジンさん」

「………え?」


 ジョブのカンストがもうすぐ…?


「…そんな事まで分かるのかい?」

「えぇ。あっそうだ、次の中ボスはジンさんが戦います? フォローしますので」

「………え?」


 上級ダンジョンの中ボスを1人で…?


「無理そうなら私がやりますし、どうします?」

「…いや、やらせてくれるかい? リュートちゃんばっかりに戦わせるのはなんと言うか…ね」

「あはは、こう見えても精神年齢はジンさんより上ですけどね」


 …そう言えばそうだった。


「それじゃまずは、肩慣らしをしましょう。ぶっつけ本番は危険ですからね、『オールアップ』」

「ん? …おぉ?」


 体が軽い…力が漲る…?


「リュートちゃん、これは一体…」

「補助魔法、バフといいます。簡単に言えばステータスが上昇する魔術です」

「バフ…」

「攻撃力や防御力、足の速さに反応速度も上がってますから、中ボスの前に慣れておきましょう。…なんで今まで補助魔法が無かったんでしょうね?」


 俺からしたら、何故無かったのかという事よりも、何故リュートちゃんがこんな魔術を使えるのかが気になるけどね…。生物への付与魔術…いや、エンチャントってところかな? …ははっ、俺はあと何回君に驚かされるんだろうね?


 それじゃ、この力に慣れる為にモンスターを探すとしよう。


本作ダイジェスト版(一章~二章8話)と、短編を1本投稿しています。


よければ見てやってください。



ダイジェスト版(一章~二章8話)↓


https://ncode.syosetu.com/n6413if/2/


短編『虚弱体質だったけど、いきなり丈夫になったようです』↓


https://ncode.syosetu.com/n6966ig/

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