第九話 転校生
月曜日。
休日が終わり、神聖能力学園はいつもの賑わいを取り戻していた。
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教室では朝から話し声が飛び交う。
「昨日ゲームセンター行った?」
「行った行った!」
「課題終わった?」
「まだ……。」
マイルも席で英語の小テストの単語帳を開いていた。
「マイル、おはよう!」
光が元気よく教室へ入ってくる。
「おはよう。」
「昨日楽しかったね!」
「うん。」
そこへ蓮も教室へ入ってきた。
「おはよう。」
「おはよう、蓮。」
「数学の課題は終わったか?」
「昨日のうちに。」
「そうか。」
蓮は当然のように自分の席へ座った。
その時だった。
ガラッ――。
先生が教室へ入ってくる。
「席につけ。」
教室が静かになる。
「今日は一人、転校生を紹介する。」
教室中がざわついた。
「転校生?」
「この時期に?」
先生が廊下へ向かって言う。
「入ってきなさい。」
静かに扉が開く。
一人の少年が教室へ入ってきた。
整った制服。
落ち着いた表情。
どこか感情を読み取れない瞳。
少年は黒板に名前を書く。
神村 信徒
「神村信徒です。」
「よろしくお願いします。」
短く頭を下げる。
教室から拍手が起こる。
「イケメンじゃん。」
「なんか大人っぽい……。」
女子たちが小声で話す。
先生は教室を見回した。
「神村の席は……。」
先生の視線が止まる。
「マイルの後ろだ。」
「はい。」
信徒はゆっくり歩き、マイルの後ろの席へ座る。
すれ違う一瞬。
マイルは妙な感覚を覚えた。
(……なんだろう。)
初めて会うはずなのに。
どこか見られているような。
そんな違和感。
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昼休み、
光がさっそく信徒の席へ向かう。
「神村くん!」
「学校案内しようか?」
「ありがとうございます。」
「お願いします。」
「マイルたちも一緒にどう?」
「もちろん。」
こうして四人は校舎を歩くことになった。
光が食堂や図書館を紹介する。
「ここが図書館!」
「能力に関する本もたくさんあるんだよ!」
信徒は静かに本棚を見渡した。
「充実していますね。」
蓮が口を開く。
「お前、能力は?」
信徒は一瞬だけ間を置く。
「能力無効化です。」
その場の空気が変わった。
「能力無効化……?」
光が驚く。
「そんな能力あるんだ……。」
「はい。」
「一定時間、触れた相手の能力を使えなくできます。」
「ただし、その間自分も能力を使えません」
もちろん嘘だった。
本当はもっと細かい条件がある。
しかし監視任務に支障が出ない範囲で説明している。
蓮が少し笑う。
「面白い能力だ。」
「俺とは相性が悪そうだ。」
「そうかもしれません。」
信徒も小さく頷く。
そのやり取りを見ながら、マイルだけは信徒を見ていた。
(……何だろう。)
(この人。)
(何か隠してる。)
⸻
5限目、
能力訓練。
今日は二人一組で能力を確認する授業だった。
先生が名簿を見る。
「神村。」
「はい。」
「転校初日だから、今日はマイルと組め。」
「……はい。」
マイルも立ち上がる。
「よろしく。」
「よろしくお願いします。」
二人は向かい合う。
「では軽く能力を使ってみろ。」
先生の指示。
マイルは身体強化を発動する。
信徒は右手をゆっくり前へ出した。
「失礼します。」
軽く肩へ触れる。
その瞬間、
身体強化が消えた。
「……!」
マイルは驚く。
(能力が……。)
信徒は一歩下がる。
「これが私の能力です。」
先生も満足そうに頷いた。
「十分だ。」
「今日はここまで。」
誰も気付かなかった。
能力が消えた一瞬。
信徒はマイルの表情だけを見ていたことに。
(動揺した。)
(やはり何かある。)
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その夜、
神殿。
信徒は神の前に立っていた。
「報告します。」
「対象への接触に成功。」
「能力無効化も問題なく認識されました。」
神は静かに微笑む。
「よくやった。」
「これで彼をもっと近くから観察できる。」
「はい。」
「引き続き監視を続けます。」
神は最後に一言だけ告げる。
「決して情を移すな。」
「彼は敵だ。」
「……承知しました。」
信徒は迷いなく答える。
しかし、
神殿を出る直前、
脳裏に浮かんだのは。
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昼休み、
光が笑いながら、
「みんなでお昼食べよう!」
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と言った光景だった。
信徒は小さく首を振る。
「……任務だ。」
そう言い聞かせるように、夜の闇へ消えていった。
次回第十話
昼休みの距離




