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神に抗いし者  作者: あbc
第一部 孤独な少年と能力
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8/40

第八話 何気ない1日

入学から一か月。


神聖能力学園にも、すっかり春の空気が流れていた。


能力訓練、授業、課題。


忙しい毎日だったが、この日は久しぶりの休日だった。


⸻


朝、


寮の自室。


マイルは机に向かって数学の問題集を解いていた。


「……あと一問。」


シャーペンを走らせる。


能力は使わない。


計算能力向上を使えば数秒で終わる問題だ。


それでも使わない。


「勉強くらい、自分でやらないとな。」


そう呟いて、最後の答えを書き終えた。


スマホが震える。


光からだった。


『今日は暇?』


マイルは少し考えて返信する。


『暇だけどどうした?』


すぐに返事が来る。


『蓮くんと一緒に駅前へ遊びに行くんだけど、マイルも来ない?』


マイルは思わず笑う。


『行くよ。』


⸻


昼、


駅前。


「遅い。」


腕を組んで待っていたのは蓮だった。


「まだ集合時間の二分前だけど。」


「二分前に着くのは遅い。」


「それは初めて聞いたよ。」


そのやり取りを見て、光が笑い出す。


「ふふっ、本当に二人って面白いね。」


最初に向かったのは大型書店。


「意外だね。」


マイルが言う。


「蓮ってこういう所来るんだ。」


「能力理論の本を探している。」


「やっぱり。」


「あと料理本。」


「……え?」


マイルと光が同時に振り向く。


蓮は少しだけ気まずそうに咳払いをした。


「一人暮らしだからな。」


「最近、焦がすことが多い。」


光は吹き出した。


「蓮くんでも失敗するんだ。」


「笑うな。」


その後、ゲームセンターへ。


「勝負しよう。」


蓮がバスケットゲームを指差す。


「負けた人がジュースおごりね!」


光も乗り気だ。


マイルは苦笑した。


「結局そうなるんだ。」


結果。


一位 光


二位 マイル


三位 蓮


「……。」


蓮は黙って財布を取り出した。


「約束だ。」


「意外と律儀だね。」


「約束は守る。」


ゲームセンターを出た三人は、公園でジュースを飲みながら休憩していた。


夕日が街をオレンジ色に染める。


「こういう時間も悪くないな。」


珍しく蓮が呟く。


マイルは少し驚いた。


「そう思うんだ。」


「訓練も大事だ。」


「だが、休むことも強くなるためには必要らしい。」


「誰情報?」


「ネット。」


光はまた笑った。


「蓮くんって、思ったより普通だね。」


「どういう意味だ。」


「もっと『修行!』って人かと思ってた。」


「……否定はできない。」


三人は笑った。


帰り道、


光とマイルは少しだけ歩く速度が遅くなった。


蓮は少し前を歩いている。


「今日、楽しかった?」


光が聞く。


「うん。」


「こんな休日、久しぶりだった。」


「マイルってさ、」


「何でも一人で抱え込むよね。」


マイルは少し黙る。


「……そうかな。」


「うん。」


「でも、」


光は優しく笑った。


「一人で抱え込まなくてもいいんだよ。」


「友達なんだから。」


その言葉が胸に残る。


守るだけじゃない。


頼ることも、きっと大切なんだ。


マイルはそう思い始めていた。


⸻


一方、その頃。


薄暗い部屋。


一人の少年が画面を見つめていた。


銀色の髪。


無表情な瞳。


画面には、今日一日のマイルたちの映像が映っている。


「対象マイル。」


「本日の行動。」


「能力使用なし。」


少年は淡々とマイルの行動をメモる。


そこへ、低い声が響く。


「どうだった。」


神だった。


「友人と休日を過ごしていました。」


「……そうか。」


神は興味なさそうである。


「理解できんな。」


「遊ぶことに何の意味がある。」


少年は少しだけ考える。


しかし答えは出ない。


「……私にも分かりません。」


「ならば、そのまま監視を続けろ。」


「はい。」


通信が切れる。


少年はもう一度画面を見る。


そこには、笑い合う三人の姿。


その表情を見つめたまま、小さく呟いた。


「……楽しそうだ。」


それが、後にマイルたちの前へ現れる転校生――


神村信徒との、まだ誰も知らない最初の接点だった。

次回第九話

 転校生

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