第八話 何気ない1日
入学から一か月。
神聖能力学園にも、すっかり春の空気が流れていた。
能力訓練、授業、課題。
忙しい毎日だったが、この日は久しぶりの休日だった。
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朝、
寮の自室。
マイルは机に向かって数学の問題集を解いていた。
「……あと一問。」
シャーペンを走らせる。
能力は使わない。
計算能力向上を使えば数秒で終わる問題だ。
それでも使わない。
「勉強くらい、自分でやらないとな。」
そう呟いて、最後の答えを書き終えた。
スマホが震える。
光からだった。
『今日は暇?』
マイルは少し考えて返信する。
『暇だけどどうした?』
すぐに返事が来る。
『蓮くんと一緒に駅前へ遊びに行くんだけど、マイルも来ない?』
マイルは思わず笑う。
『行くよ。』
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昼、
駅前。
「遅い。」
腕を組んで待っていたのは蓮だった。
「まだ集合時間の二分前だけど。」
「二分前に着くのは遅い。」
「それは初めて聞いたよ。」
そのやり取りを見て、光が笑い出す。
「ふふっ、本当に二人って面白いね。」
最初に向かったのは大型書店。
「意外だね。」
マイルが言う。
「蓮ってこういう所来るんだ。」
「能力理論の本を探している。」
「やっぱり。」
「あと料理本。」
「……え?」
マイルと光が同時に振り向く。
蓮は少しだけ気まずそうに咳払いをした。
「一人暮らしだからな。」
「最近、焦がすことが多い。」
光は吹き出した。
「蓮くんでも失敗するんだ。」
「笑うな。」
その後、ゲームセンターへ。
「勝負しよう。」
蓮がバスケットゲームを指差す。
「負けた人がジュースおごりね!」
光も乗り気だ。
マイルは苦笑した。
「結局そうなるんだ。」
結果。
一位 光
二位 マイル
三位 蓮
「……。」
蓮は黙って財布を取り出した。
「約束だ。」
「意外と律儀だね。」
「約束は守る。」
ゲームセンターを出た三人は、公園でジュースを飲みながら休憩していた。
夕日が街をオレンジ色に染める。
「こういう時間も悪くないな。」
珍しく蓮が呟く。
マイルは少し驚いた。
「そう思うんだ。」
「訓練も大事だ。」
「だが、休むことも強くなるためには必要らしい。」
「誰情報?」
「ネット。」
光はまた笑った。
「蓮くんって、思ったより普通だね。」
「どういう意味だ。」
「もっと『修行!』って人かと思ってた。」
「……否定はできない。」
三人は笑った。
帰り道、
光とマイルは少しだけ歩く速度が遅くなった。
蓮は少し前を歩いている。
「今日、楽しかった?」
光が聞く。
「うん。」
「こんな休日、久しぶりだった。」
「マイルってさ、」
「何でも一人で抱え込むよね。」
マイルは少し黙る。
「……そうかな。」
「うん。」
「でも、」
光は優しく笑った。
「一人で抱え込まなくてもいいんだよ。」
「友達なんだから。」
その言葉が胸に残る。
守るだけじゃない。
頼ることも、きっと大切なんだ。
マイルはそう思い始めていた。
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一方、その頃。
薄暗い部屋。
一人の少年が画面を見つめていた。
銀色の髪。
無表情な瞳。
画面には、今日一日のマイルたちの映像が映っている。
「対象マイル。」
「本日の行動。」
「能力使用なし。」
少年は淡々とマイルの行動をメモる。
そこへ、低い声が響く。
「どうだった。」
神だった。
「友人と休日を過ごしていました。」
「……そうか。」
神は興味なさそうである。
「理解できんな。」
「遊ぶことに何の意味がある。」
少年は少しだけ考える。
しかし答えは出ない。
「……私にも分かりません。」
「ならば、そのまま監視を続けろ。」
「はい。」
通信が切れる。
少年はもう一度画面を見る。
そこには、笑い合う三人の姿。
その表情を見つめたまま、小さく呟いた。
「……楽しそうだ。」
それが、後にマイルたちの前へ現れる転校生――
神村信徒との、まだ誰も知らない最初の接点だった。
次回第九話
転校生




