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神に抗いし者  作者: あbc
第一部 孤独な少年と能力
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10/40

第十話 昼休みの距離

神聖能力学園。


月曜日の朝。


転校生が来た翌日ということもあり、教室はいつもより騒がしかった。


「神村くんって前の学校どこなの?」


「能力無効化ってどんな感じ?」


「好きな食べ物は?」


信徒の周りには、朝から何人もの生徒が集まっている。


しかし信徒は、質問一つ一つに淡々と答えていた。


「前の学校は普通の学校です」


「能力は昨日説明した通りです」


「好きな食べ物は……特にありません」


「えー、ないの?」


光が笑う。


「じゃあ、これから好きなもの見つければいいじゃん」


「……好きなものを?」


「うん」


信徒は少し考えた。


「必要ですか?」


「必要っていうより……」


光は少し笑って、


「その方が楽しいよ」


と答えた。


信徒は黙って光を見る。


「……そうですか」


⸻


一時間目、


数学。


教師が黒板に問題を書いていく。


「では、この問題を神崎」


「はい」


蓮が立ち上がる。


黒板に答えを書く。


「正解だ」


「ありがとうございます」


席に戻る蓮。


マイルが小声で話しかける。


「やっぱり数学得意なんだ」


「普通だ」


「この前、料理の本買ってたのに」


「数学と料理は関係ないだろ」


「確かに」


後ろから信徒が口を挟む。


「数学と料理には関係があります」


二人が振り返る。


「え?」


「分量、時間、温度など、計算は必要です」


蓮が少し考える。


「……確かに」


マイルは笑った。


「信徒って、そういうところ真面目だよね」


「真面目……ですか?」


「うん」


「褒めてるんですか?」


「たぶん」


「たぶん……」


信徒は少し困ったような顔をした。


⸻


昼休み。


いつものように光がやってくる。


「みんな、お昼食べよう!」


「俺はいい」


蓮が答える。


「なんで?」


「人が多い」


「じゃあ屋上!」


「……それならいい」


マイルも弁当を持って立ち上がる。


「信徒も行く?」


信徒は一瞬だけマイルを見る。


近くで観察できるいい機会だ。


「……はい」


そう答えた。


⸻


屋上。


四人で弁当を広げる。


「信徒くん、それだけ?」


光が信徒の弁当を見る。


「はい」


「少なくない?」


「必要な量です」


「じゃあ、これ食べる?」


光が自分のおかずを少し分ける。


「……いいんですか?」


「もちろん」


信徒は少し迷ってから受け取る。


「ありがとうございます」


一口食べる。


「どう?」


「……美味しいです」


光が嬉しそうに笑う。


「でしょ?」


マイルはその様子を見ていた。


昨日まで何も知らない転校生だった信徒が、少しずつこの場所に馴染んでいる。


その光景は、不思議と嫌ではなかった。


⸻


「そういえば」


蓮が口を開く。


「今度、四人で訓練しないか?」


マイルが驚く。


「四人で?」


「そうだ」


「能力の相性を確認しておきたい」


光も頷く。


「いいね」


信徒も、


「私も構いません」


と答える。


四人での訓練。


それは後に、何度も世界を救うことになる四人にとって。


最初の一歩だった。


⸻


放課後、


マイルは一人で訓練場に残っていた。


能力変更の練習。


現在の能力。


身体強化。


そこから、


結界生成へ。


「……っ」


瞬間。


激しい頭痛が走る。


「くっ……」


膝に手をつく。


まだ慣れていない。


能力を変更するたびに、頭の奥を強く締めつけられるような感覚。


マイルは息を整える。


「……まだ、こんなに痛いのか」


その時。


「無理をしていますね」


振り返る。


信徒だった。


「……見てた?」


「はい」


信徒はマイルを見る。


「能力を変更する時に負担があるのですね」


「そうなんだ」


「なぜ隠すんですか?」


マイルは少し黙る。


「……癖かな」


「癖?」


「昔から、一人で何とかすることが多かったから」


信徒は何も言わなかった。


そして、


「そうですか」


とだけ答えた。


信徒はその場を離れる。


だが、


数歩歩いたところで立ち止まる。


振り返る。


マイルはまだ一人で訓練している。


「……」


信徒は神への報告を考える。


メモ帳を開く。


【対象は能力変更時に強い負荷を受ける】


そこまで書いて、


指が止まる。


なぜか、


その先を書きたくなかった。


「……何をしているんだ」


自分でも理解できない。


結局、メモには別の文章を加えた。


【現在、詳細は確認中】


⸻


その夜、


神。


信徒からの報告を振り返る。


「能力変更時の負荷……」


神は画面を見つめる。


「なるほど」


そして、


「まだ成長途中か」


静かに笑う。


「ならば、今は手を出す必要はない」


____


一方、


マイルは自室のベッドに横になっていた。


今日の出来事を思い返す。


光。


蓮。


そして信徒。


「……友達、か」


以前なら、そんなことを考えることもなかった。


能力を隠さなければならない。


神の存在にも注意しなければならない。


誰かと深く関わることは危険。


それでも、


「……悪くないな」


マイルは小さく笑った。


まだ誰も知らない。


この四人が。


やがて世界の命運を背負うことになるなんて。

次回第十一話

 4人で訓練

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