第十一話 四人での訓練
放課後、
神聖能力学園・第一訓練場。
「今日は四人で訓練するぞ」
蓮の声が響く。
集まっているのは、
マイル。
光。
蓮。
そして転校してきた信徒。
「訓練内容は簡単だ」
蓮が説明する。
「四人で協力して、制限時間内に指定された標的を破壊する」
「ただし、標的には特殊な防御能力が付与されている」
「一人での攻略は難しい」
マイルが腕を組む。
「連携を見る訓練か」
「そういうことだ」
⸻
訓練開始。
四人の前に巨大な標的が出現する。
硬い装甲。
高い耐久力。
さらに周囲には障害物。
「俺が正面から行く」
蓮が前へ出る。
「重力操作!」
ズンッ。
標的の周囲だけ重力が増加する。
標的の動きが鈍る。
「今!」
光が叫ぶ。
マイルが走る。
身体能力向上。
一気に距離を詰める。
しかし、
「硬い……!」
攻撃が弾かれる。
信徒が冷静に分析する。
「正面からの攻撃では効率が悪いです」
「右側に能力反応があります」
「そこが弱点の可能性があります」
蓮が見る。
「分かった」
重力の向きを変える。
標的の体勢が崩れる。
「マイル!」
「分かった!」
マイルが右側へ回り込む。
しかし、
(このままじゃ足りない)
防御壁生成。
一瞬、切り替える。
「っ……!」
激しい頭痛。
視界が揺れる。
足が止まりかける。
「マイル!」
光が叫ぶ。
「大丈夫!」
マイルは耐える。
防御壁を標的を囲うように生成。
標的の動きを封じる。
「今です!」
信徒が叫ぶ。
蓮が重力を一点へ集中させる。
「これで終わりだ!」
ドンッ!!
標的が大きく揺れる。
「あと少し!」
光が走る。
治癒能力。
「え?」
蓮が驚く。
「治癒能力をどう使うんだ?」
光は笑う。
「こうするの!」
治癒能力をマイルへ使う。
能力変更による負荷で消耗したマイルの身体を回復させる。
「動ける?」
「うん!」
マイルが立ち上がる。
能力変更。
筋力増加。
「っ……!」
再び頭痛。
しかし。
今度は耐えた。
「行く!」
マイルが標的へ突っ込む。
拳が装甲を捉える。
ドォン!!
標的が破壊される。
静寂。
「……成功だ」
「制限時間にも間に合った」
蓮が言う。
光が喜ぶ。
「やった!」
信徒は三人を見る。
「……効率的な連携でした」
「信徒、それ褒めてる?」
マイルが聞く。
「はい」
「ならもっと嬉しそうに言えばいいのに」
「必要がありますか?」
「あると思う」
光が笑う。
「信徒くん、ちょっとずつ普通になってきたね」
「……普通」
信徒はその言葉を少し考える。
「そうでしょうか」
⸻
訓練終了後、
四人で校舎を歩く。
蓮が突然言う。
「次は俺が作戦を考える」
「また訓練するの?」
光が聞く。
「当然だ」
「次はもっと速く倒せる」
マイルが笑う。
「蓮、本当に訓練好きだよね」
「強くなるためだからな」
信徒は三人の後ろを歩いていた。
三人の会話。
笑い声。
何気ないやり取り。
そして、
「信徒も来るだろ?」
蓮が振り返る。
「……何にですか?」
「次の訓練」
「もちろん」
信徒は答えた。
_____
その日の夜、
神殿。
「報告します」
信徒は神に訓練内容を報告していた。
「対象マイルは複数能力を使用」
「能力変更時に強い負荷が発生」
「神崎蓮との連携能力も高い」
神は静かに聞いている。
「他には?」
「……」
信徒は少し考える。
「特にありません」
「そうか」
神はそれ以上追及しなかった。
_____
信徒は、部屋に戻る。
「……」
今日の訓練を思い出す。
マイルが倒れそうになった時。
光が支えた。
蓮がすぐに状況を判断した。
そして自分も、二人に合わせて動いた。
信徒にとっては、
ただの訓練。
ただの任務。
そう思っている。
____
翌朝、
教室に入った信徒は、
「おはよう」
と声をかけられた。
「……おはようございます」
自然に返事をしていた。
まだ本人は気づいていない。
自分が少しずつ、
この場所を「任務先」ではなく、
「自分の居場所」
として感じ始めていることに。
次回第十二話
放課後の約束




