第十二話 放課後の約束
朝、
神聖能力学園。
一時間目の鐘が鳴る。
「今日は小テストをするぞ」
教師の一言。
「え……」
教室中から声が上がった。
マイルも固まる。
「小テスト?」
「昨日言っただろう」
「……聞いてなかった」
蓮が隣から言う。
「お前、昨日の夜何してた?」
「能力の練習」
「勉強は?」
「……してない」
蓮は呆れた顔をした。
「能力者以前の問題だな」
問題用紙が配られる。
マイルは問題を見る。
数学。
英語。
物理。
(これは……まずい)
計算能力向上を使えば、かなり楽になる。
でも。
学校の勉強まで能力に頼るのは嫌だった。
マイルは自分の力で問題を解き始める。
一方、
蓮は次々と問題を解いていく。
光も真剣に問題を解いている。
そして信徒。
「……」
異常に速い。
マイルが横目で見る。
(速っ……)
終了。
教師が答案を回収する。
「では次の授業に移る」
マイルは机に突っ伏した。
「終わった……」
光が笑う。
「そんなに難しかった?」
「昨日勉強してなかったから……」
蓮が言う。
「放課後、図書館に行くか?」
「え?」
「勉強を教えてやる」
マイルは少し驚いた。
「いいの?」
「次の小テストで赤点を取られると面倒だからな」
「それ、俺のため?」
「クラスメイトとして当然だ」
光も手を挙げる。
「じゃあ私も行く!」
「光も?」
「私も勉強したいし」
信徒は少し離れたところでその会話を聞いていた。
「信徒くんも来る?」
光が聞く。
「……私も?」
「うん」
信徒は少し考える。
本来なら断ってもいい。
しかし。
「分かりました」
⸻
放課後、
図書館。
四人が机を囲む。
蓮が問題を解説する。
「ここは公式を使う」
「なるほど」
マイルがノートに書く。
光は隣で英語を勉強している。
信徒は静かに本を読んでいる。
しばらくして、
マイルが信徒を見る。
「信徒って勉強できる?」
「普通です」
「じゃあこの問題分かる?」
問題を見せる。
信徒は数秒考える。
「はい」
「どうやるの?」
「まずここを――」
説明が始まる。
マイルは聞きながら思った。
「……教えるの上手いね」
「そうですか?」
「うん」
「ありがとうございます」
光が笑う。
「信徒くん、褒められるとちゃんと嬉しそうだね」
「……そうですか?」
「うん」
信徒は少しだけ目を逸らした。
⸻
夕方、
勉強を終えた四人は図書館を出る。
「今日はありがとう」
マイルが言う。
「どういたしまして」
蓮が答える。
その時、
光が言った。
「ねえ、今度みんなで映画行かない?」
「映画?」
マイルが聞く。
「うん。今話題のやつ!」
蓮は少し考える。
「まあ、いいだろう」
信徒も、
「私も参加します」
と答える。
「じゃあ決まり!」
光が嬉しそうに笑う。
マイルも笑った。
「楽しみだね」
みんなと別れて帰り道。
マイルは一人になった。
(……楽しいな)
友達と勉強して。
話して。
遊ぶ約束をして。
普通の高校生みたいだ。
でも、
その瞬間、
「……っ」
突然。
頭の奥に痛みが走る。
「う……」
壁に手をつく。
能力が勝手に変わったわけではない。
「神に抗いし者」を使っていないのに。
なぜか頭痛がした。
(何だ……?)
数秒後、
痛みは消える。
「……なんだったんだろう」
_____
その頃、
遠く離れた場所。
神が一人の男と話していた。
「準備はできたか」
「はい」
「学園に入る必要はない」
「まだ早い」
神は窓の外を見る。
「マイルがもっと成長するまで待て」
「彼には、まだ守るものが少なすぎる」
⸻
一方、
信徒は帰宅していた。
机に座り、今日あったことをメモしている。
【対象:マイル】
【本日の行動】
・授業
・学習
・友人との交流
そこで手が止まる。
「映画……」
今日、光が言っていた言葉を思い出す。
「……」
信徒はしばらく考える。
そしてメモに、
【特に異常なし】
と書き加えた。
⸻
翌朝、
教室。
「おはよう!」
光が入ってくる。
「おはよう」
マイルも答える。
蓮も席につく。
そして少し遅れて信徒が入ってくる。
「おはようございます」
四人が自然に挨拶を交わす。
誰も気づいていない。
この何気ない朝が、
後にマイルが命を懸けて守ろうとする、
かけがえのない日常の始まりだったことを。
次回第十三話
約束の日




