第十三話 約束の日
土曜日、
朝。
マイルは鏡の前に立っていた。
「……これでいいよな」
普段より少しだけ髪を整える。
制服ではなく私服。
今日は映画の日。
スマホを見る。
集合時間まで、あと30分。
「早すぎるか……」
マイルは部屋を出た。
____
駅前。
「マイル!」
光が手を振っている。
白いシャツに、薄い色のスカート。
普段の制服とは違う姿に、マイルは少し戸惑う。
「お、おはよう」
「おはよう!」
「……」
「どうしたの?」
「いや、なんでもない」
マイルは少し視線を逸らした。
光は首を傾げる。
そこへ蓮が来る。
「早いな」
「蓮もね」
「遅れるよりいい」
そして、
「お待たせしました」
信徒が現れる。
「信徒くん!」
光が笑う。
「今日は私服なんだね」
「はい」
「なんか新鮮」
信徒は少し困った顔をする。
「そうでしょうか」
「うん!」
4人が揃う。
「じゃあ行こう!」
⸻
映画館。
チケットを買う。
「何を見る?」
光が聞く。
「これがいい!」
選んだのは、人気のアクション映画だった。
「戦闘ものか」
蓮が少し嬉しそうにする。
「面白そうだ」
マイルは苦笑する。
「蓮、映画でも戦い好きなんだね」
「強者同士の戦いには興味がある」
信徒が言う。
「私は映像作品をあまり見ません」
光が驚く。
「えっ、一回も?」
「ほとんどありません」
「じゃあ今日は楽しもう!」
⸻
映画開始。
巨大な怪物。
迫力のある戦闘。
観客から歓声が上がる。
蓮は真剣にスクリーンを見ている。
「……」
マイルは横を見る。
光も映画に夢中。
その横顔を見て。
マイルは少し笑う。
(こういうのもいいな)
その時、
ドンッ!!
映画館に大きな爆発音が響く。
マイルが反射的に身構える。
「……」
しかし、
映画の音だった。
「びっくりした?」
光が小声で笑う。
「ちょっとだけ」
「ふふっ」
マイルは少し恥ずかしくなった。
⸻
映画終了。
「面白かった!」
光が満足そうに言う。
蓮も頷く。
「戦闘シーンは良かった」
「そこ?」
マイルが笑う。
信徒は少し考えていた。
「……」
「信徒くん?」
「はい」
「どうだった?」
「……面白かったです」
「ほんと?」
「はい」
「どこが?」
信徒は黙る。
「……最後の場面です」
主人公が仲間を守るために戦う場面。
信徒はそれを思い出していた。
「仲間を守るために戦う」
「それが……理解できました」
マイルは少し驚いた。
「そっか」
4人は映画館を出る。
その後、
ゲームセンター。
今度はマイルがクレーンゲームに挑戦する。
「もう少し右!」
光が横から指示する。
「ここ?」
「そう!」
ガシャン。
失敗。
「惜しい!」
「もう一回!」
結局、
5回目。
景品が落ちる。
「取れた!」
光が喜ぶ。
「はい」
マイルは景品を光に渡した。
「え?」
「欲しかったんでしょ?」
「……いいの?」
「うん」
光は景品を受け取る。
「ありがとう」
その顔を見て。
マイルは少し照れた。
少し離れた場所。
蓮がその様子を見ている。
「……」
信徒も見ている。
「何を見ている?」
蓮が聞く。
「いえ」
信徒は答える。
「二人が楽しそうだと思っただけです」
蓮は少し笑う。
「そうだな」
⸻
夕方、
帰り道。
駅へ向かう途中。
「今日は楽しかったね」
光が言う。
「うん」
「また行こうよ」
「もちろん」
「次はどこがいい?」
「遊園地とか?」
「いいね!」
蓮も、
「俺も行く」
信徒も、
「私も」
4人で次の予定を話す。
その時、
マイルのスマホが鳴る。
知らない番号。
「……?」
電話に出る。
『もしもし』
返事がない。
ただ、
微かに。
声が聞こえた。
⸻
『……神に抗う者』
⸻
「……!」
マイルの表情が変わる。
『お前は――』
そこで、
通話が切れた。
「マイル?」
光が心配そうに見る。
「どうした?」
蓮も振り返る。
「……なんでもない」
マイルはスマホを握りしめる。
(今の……)
自分の能力を知っている?
ありえない。
能力は絶対に知られてはいけない。
知られれば、
自分は無能力者になる。
なんで?
「神に抗いし者」という名前を知る者なんて――
いるはずがない。
⸻
その頃、
暗い部屋。
一人の男がスマホを置く。
「……やはり」
「間違いない」
男の前には一枚の古い資料。
そこには、
「神に抗いし者」
その名前が記されていた。
男は笑う。
「ようやく見つけた」
⸻
第十四話
十日間の秘密




